第181話、カイン奪還作戦。


俺はカインの元に歩いて近づく。そんな俺の前にアルトが立ちはだかった。俺はアルトの横を通り抜ける時にボソッと頼み事をした。

俺の話を聞いたアルトはホッとした顔をして皆が居る所まで下がり防御結界を張った。


「逃がさなくていいのかな?君の仲間も死んじゃうかもよ~?」


「俺の仲間がそんなに柔なわけないだろう。無駄なお喋りは要らねーよ。行くぞ。」


俺は聖剣アスタリスクを構えて、カインに向かって行く。

「『一閃乱舞』。」

足に魔力を込めた連続一閃の太刀。レベルも上がっている為、常人にはほぼ見えない剣技に仕上がっていた。

しかし、カインは涼しい顔で全ての剣筋をいなしていた。


「また、懐かしい技を使うんだね~。俺にこんなちんけな技が効くと思ってるの?思っていたら滑稽だね。」


俺はカインの言葉を無視して剣を振るう。

そして、攻撃のギアを段々と上げていく。


「剣聖、第三の剣技...。『桜吹雪』。」


「所詮は君のスキルで得た技は紛い物に過ぎないんだよ!!本物・・を見せてやる。『桜吹雪』。」


お互い同じ構えをし鏡写しのような斬り合いが始まった。

剣と剣がぶつかり合い凄まじい衝撃が走る。


「どうだ?本物・・の『桜吹雪』の威力は。お前のスキル『ミヨウミマネ』とは違って俺のスキルは『完全再現パーフェクトコピー』だからな。」


俺はカインの言葉に鼻で笑う。


「コピーしてる時点で本物じゃねーけどな。それにお前の『桜吹雪』は師匠の技をコピーしたものだろ?」


「確かに。君のそれ桜吹雪は未完成だから、完成された剣聖デュークからコピーするのは当然だろ。」


「やっぱりな...。お前は俺のスキルを全く分かっていない。俺の『ミヨウミマネ』した技の全てが未だ発展途上だってことにな!」


「何を言って...。」


「ギアを上げるぜ。『桜吹雪・刹那』。」


「な!?」


カインが驚いた瞬間、全身に血しぶきが舞った。俺の剣技に全く反応出来なかったのだ。急所はわざと全て外した。大切な人の大事な弟の身体だから。


「これがお前が猿真似と馬鹿にした『ミヨウミマネ』の力だ...。」


「こんな事が...、こんな事があってたまるかぁぁぁ!!!」


カインが震えながら悔しそうに吠える。


「お前の敗因はその身体だな。カインはまだ幼い、お前の力にカインの身体が追い付いてないんだよ。」


カインが俺を睨む。


「そこで提案なんだが、お前に俺の身体をやろう。元々お前は俺の身体が欲しかったのだろう?やるよ。」


「馬鹿か!?そんな見え見えの嘘に俺が引っ掛かるとでも思っているのか!?」


「そうだな...。ならこれならどうだ?」


俺はアスタとリスク、ラウルを人化させてアルトの元へ行かせ、両手を広げる。


「これで俺は丸腰だ。お前を攻撃する意思は俺はない。」


「何故そこまでする?理由がわからん。」


「何故って?カインは俺の大事な人の弟だからな。俺が犠牲になっても救いたい人なんだよ。人間ってそういう生き物なんだ。お前には分かんないかもしれないけどな...。」


「ふふふふふ、ハハハハハ!!馬鹿だな!?

普通自分を犠牲にするか?頭おかしいぞ!?」


カインは勝ち誇った顔で笑う。


「ところで、お前の名前は何て言う?

俺の身体を乗っ取るヤツの名前くらい聞いときたいんだが...。」


「名前?言ってなかったか?まあいい、コウ。君の最後に聞かせてやろう。

俺の名前はゼウス。人神のネメシス半身だ。長い事クラウディアこことは違う理の世界に居て人間達を見てきた。非常に面白いと興味を持ったんだよね。興味を持ったことでネメシス俺達の心は2つに別れたのさ。君がきっかけで俺はこの世界に来れたって訳だ。」


「やはり俺が原因か...。それにしてもゼウスって何人も居るのか?さっきあったヤツもゼウスって言ってたぞ...。」


「チッ...。ラファエルの奴か...。アイツ俺の真似ばっかりしやがって。後で1回シメてやる。コウ。聞きたい事は終わったか?大きな口を開けろ。そこから入るのが楽だからな。」


「ああ...。やってくれ...。」


俺は両手を上げたまま大きな口を開ける。


「コウ。これでお前の身体が俺のものに...。」


カインの口から黒い液状な物体が出て、それが俺の口に向かってきた。そして、完全にカインの口から離れ俺の口に入るコンマ1秒のタイミングに魔法が放たれた。


「『完全隔離パーフェクトキューブ』!!」


その魔法は俺の口のほんの数ミリ手前で透明な箱になり、黒い液状のゼウスを捕らえていた。

この魔法を唱えたのは賢者アルト。

彼の魔法だ。

結界魔法を極限まで魔力を高めた賢者ならではの発想を形にしたのだ。

俺がゼウスと剣を交わる前に伝えた作戦をアルトは完璧にこなしてくれたのであった。

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