第176話、世界の半分をなんちゃら。



「コ、コホン。いつまで抱き合ってるんじゃ...。」

プロペトは気まずそうに注意してくる。

俺とミアは顔を真っ赤にしてそそくさと離れた。


「す、すみません。名乗ってなかったですね。俺の名前はコウ・タカサキと言いまして、ミアさんの婚約者です。」


「これは、これは丁寧にどうも...。って!?

こここここ、婚約者だとぉぉぉぉ!!!」


プロペトは俺の婚約者と言う言葉に面白いほど驚き取り乱す。


「ま、まさか。孫の婚約者と会えるとは...。

蘇って見るもんじゃの...。

サンドラやユリウスにも会わせてあげたかったの...。」


「お祖父様...。」


「おじい...お祖父様!?

ミアのお祖父様なのか!?」


「ええ、私のお祖父様の先々代アリュートの王なの。」


「プロペトじゃ。まあ、生き返った屍じゃの。

もう少しでまたあの世に戻るがの。

それにしてもミアよ。よくコウ殿が来るのが分かったの?」


「うん。ヴォイス...ええと、説明が難しいけど私とコウの魔力で作った魔法人間って言うのかな?彼女からテレパシーが来たの。コウが今来ると。」


「ほほう。そんな技術が...。

ワシももっと生きてそんな研究したかったのぉ...。

それにしてもコウ殿のその強さは一体...?」


「それは俺が...って、ちょっと待ってください。」


俺はミカエルの気配を察知した。

まだ死んでいない。

ミカエルの残骸に目をやるとみるみるうちに斬られてそこら中に散らばった残骸がくっつき元の通りに復活をした。


「ちっ。コアを破壊したつもりなんだがな...。」

俺は自分の爪の甘さへの言葉が漏れる。


「ハァハァ...。残念だったな...。

それにしても危なかった。

反応がもう少し遅れていたら確実に殺られてた..。糞、こんな奴がまだいたとは...。」


ミカエルは肩で息をしながら言葉を放つ。

俺はミカエルを鑑定する。

ステータスはそこそこだがも魔力の残量はそこまで残っていなかった。

これはミアが頑張ってくれたからなのだろう。

しかし、

手負いのヤツほど何をするか分からない。

俺は念話で、


ラウル。

ここに居る3人に結界を張れるか?


(うん!アニキ!楽勝だよ~!)


頼む...。


そう言うと俺の腕輪となっているラウルが結界魔法を放ち、ミアとプロペトとグスタフを包んだ。


「これは...。」


目の前に急に現れた結界に驚くミアに、


「結界だ。これはミカエルアイツの攻撃位なら通さないから安心して休んでくれ。

じゃあ、サクッとミカエルアイツ倒してくるわ。」


「うん。

コウ!やっちゃって!」

ミアは拳をコウにかざした。


「おう!」


そして、俺はミカエルへ一歩、また一歩と足を進めた。

近づく俺にミカエルは後退りし焦りながら、


「ま、待て!!お前に提案がある!

は、話を聞いてくれないか?」


「話?俺はお前と話すことはないが。」


「ちょ、ちょっとで良いから聞いてくれ。

頼む。」


ミカエルは必死に懇願してくる。

何だか弱い者イジメをしてるみたいで気が引ける。

「ハァ~~。で、なんだ?聞くから話せよ。」


「き、聞いてくれるのか?」


「早く話せよ。俺はそんな気が長くないんだ。」


「う、うむ。我と手を組む気はないか?

組んでくれたらこの世界の3分の1...いや、半分をお前にやろう。どうだ?いい話だろ?」


テンプレの悪の親玉の言葉じゃねーか...。

どこの世界にもこんなヤツは居るんだな。

俺は呆れた顔で言葉を返す。


「お前はバカなの?」


「は?」


「何で俺がお前みたいな弱くて卑怯で陰険な野郎と手を組まなきゃならないの?

意味わからんって。

それにそのセリフは力が対等な事で成立するわけ。わかる?ねぇ?わかりますか?

お前と俺には天と地...、いや、月とすっぽん...、いや、宇宙とミトコンドリア位の力の差があることにも気付かないお前と手を組むなんてないわ~。」


俺は早口で怒濤な口撃をかます。

ミカエルは理解が追い付かないのか俺の華麗な口撃の前で唖然としている。


「そ・れ・に!!

お前は俺の大事な婚約者ミアとその家族を傷つけた。その罪は万死に値する。

故にお前は


....死刑!!」


俺はビシッと両手の指先をミカエルに向けていい放った。


決まった...。

今の俺は宇宙一格好いい。ミアのラブも最高潮になったハズだ。

俺はチラッとミアを見た。

するとミアは気まずそうに視線をそらす。

プロペトの方を見ると、急に後ろに振り向き口笛を吹き始めた。


これは誰のせいだ?

この仕打ちは誰のせいだ?

俺?いや、違う!!

確かにスベったのは俺のせいかも知れない。そこは認めよう...。

だが問題点はそこじゃない!!

そもそもミカエルコイツが世界の半分がなんちゃらなんて言わなければこんな仕打ちにはならなかった。

そうならなかったのだ!!


俺は両指を下ろしミカエルに、


「ようは、全てお前が悪い!!」


呆気に取られてたミカエルだったがハッっと気付き、

「イヤイヤ!!スベったのはお前のせいだろ!?」

「イヤ!お前だ!」

「絶対にお前だ!!」

「お前だからお前だ!」

よそから見たら2人は小学生の言い合いのようなものになっていた。


その様子をミアもプロペトも聖剣のアスタとリスクも神器の腕輪のラウルもミアが持つ神器マリアージュも呆れた様子で見ていた。


言い合いが5分ほど続いた後、

いきなりミカエルの身体を何者かが貫いた。


「グハァァ!??何で私の身体が貫かれて...。」

「やれやれ...、無防備すぎだろ...。」


貫かれたミカエルはその場に倒れた。

そして、その何者かは姿を現す。

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