第175話、悪い。遅くなった。



「すまない、グスタフ。あの世で謝罪する。『極限魔法、炎龍の業火』。」


プロペトが唱えるとミカエルとグスタフの足元から天まで昇る炎の龍が舞い上がった。

目の前には跡形もなく燃え尽くされて骨さえも残っていなかった。


「グスタフ...。何で...?」


ミアは膝から崩れ落ちる。

父の代わりとして育ててくれたグスタフを思い涙が溢れて来るのを止められなかった。

泣き崩れるミアにプロペトよろよろと近づく。


「ミア...。すまなんだ...。ヤツを倒すにはこれしかなかった...。」


「うぅぅ...。分かっています。

私にもっと力があったらグスタフが犠牲になることもなかったのに...。」


ミアは自分の力の無さを恨んだ。

私がもっと強ければ...と悔やむ。


「糞が...。結界が間に合わなくて死ぬところだったじゃねーか..。」


空の上から聞こえては行けない声が聞こえた。

ミアとプロペトは恐る恐る空を見上げる。


するとグスタフに羽交い締めにされているミカエルの姿があった。


「いつまで掴んでやがる。邪魔だ。」


ミカエルはグスタフを振りほどく。

グスタフは意識を失っているらしく頭から落下してくるグスタフをミアの風魔法で地面との衝突を避けた。

ミアはすぐにグスタフの元に走る。

意識はないが生きていた。


「良かった...。まだ生きている。」


ミアはホッと胸を撫で下ろす。


「何が良かっただ?良くね~よ!!

この俺に死の恐怖を与えやがって...。

しかも、俺だけ結界魔法掛けるつもりがアイツまで結界魔法に覆われやがったし...。

アリエルのヤツ。糞みてーな体を寄越しやがって...。」


ミカエルは怒りで口調まで変わっていた。


「父さんがグスタフを守ってくれたんだ...。

父さんありがとう...。」


父に感謝し、涙をぬぐい空中にいるミカエルを見上げた。

ミカエルはイライラした感じを全面に出してこちらを睨む。



マリアージュ...。

私の寿命は後どの位残ってる?


(ごめん...。発動は出来ないかな...。普通の人間と同じくらいしか寿命は残ってないよ。)


そっか...。

そうだよね...。


ミア達の次の手はもう残ってはなかった。

グスタフは意識を失ってるし、プロペトは満身創痍。そしてミアも力を使い果たした。


「どうしたぁぁ!?もう打つ手は無しかぁ!?

ゴミクズの分際で抗いやがってぇぇ!!

楽には殺さねえから覚悟しろやぁぁ!!」


ミカエルの汚い怒号が空からミア達に放たれる。


「ミア...。お前だけでも逃げるのじゃ。

お前まで失ってはワシは死んでも死にきれない。」


「お祖父様...。それは出来ません。」


「そんな事言ってももう打つ手がないのは明白であろう...。」


「そうですね...。

そうなんですが...、

.......。

.......。

.......。

ウフフフフ。」


「ミ、ミア?急に笑い出してどうしたんじゃ!?」


急に笑い出したミアにプロペトはおかしくなったんじゃないかと心配する。


「お祖父様。なんとかなりそうです!」

ミアはそう言い空を見上げる。


「何とかって、お主...。」

プロペトもミアに習って空を見上げた。


「何だぁぁ!?

ニヤニヤしやがって!おかしくなってしまったか!?」

ミカエルの目から見ると、

さっきまで絶望的な顔をしてたのに今は笑顔でこっちを見る女は絶望過ぎて壊れてしまったように見えていた。

しかし、ミアが見てたのはミカエルではない。

そのさらに上空。


「な、なんだ?アイツは俺を見ていない?

上の方か?」


ミカエルは上に振り返ろうとしたその時、




流星斬りメテオスラッシュ!!!」


何者かに身体を斬られて首と胴を分断されたのであった。


「い、一体何が...。」

ミカエルは何が起きたか分からなかった。

そして、斬られたミカエルの身体は地上に墜ちていった。


そしてその何者かはミアの前に降り立った。

ミアがずっとずっと待ち続けた人。

前世の恋人、そして現世の婚約者。


「悪い。遅くなった。」


「本当待たせすぎだよ...。

どれだけ待ったと思ってるのよ...。コウのバカ...。」


「ごめんって。」

コウはミアを抱き締める。


「良く頑張ったな...。」

「うん...。」


ミアもコウの後ろに手を回し抱き締めかえしたのだった。

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