第174話、命を賭ける。


両腕を無くしたミカエルにミアは、


「神器で腕を落とした。これでアナタは再生もできなければ攻撃も出来ない。もう諦めて死になさい。」


ミアの言葉にミカエルは不適に笑い、


「クックック。再生も攻撃も出来ない?諦める?お前はバカか?腕を落とした位で。」


そう言うとミカエルの腕の付近に黒いもやがかかり真っ黒な腕の形に変わる。

そして、その両手に真っ黒な片手剣が生成された。


「こうなっては、今までの様に優しくは出来んぞ。」


構えをとるミカエルは異質で邪悪なオーラを纏わせた。


「...何?この禍々しいオーラは...。」


すると、神器マリアージュが念話で話してくる。


(ミア...。あれはヤバい...。

私を全解放していい勝負になるレベルだと思う。それだけ異質でヤバい代物だよ...。

どうするの?

このままじゃ...って言ってもミアは戦う方を選ぶんでしょ?)


当然。

あんな奴がアリュートに来たら民が弟が殺されちゃう...。

私が何とかしないと...。


(だよね...。

ミア、あんたとは長い付き合いだからそう言うと思ってた。)


でも魔力がもう残りわずかなんだよね...。


(うん...。知ってた。

だけど方法はある。

これをするとミアも私も死ぬかもしれないけど。)


方法があるならするわ...。

このまま戦っても死ぬのは避けられないし。

マリアージュには悪いんだけど...。


(私はいいんだよ。...わかった。

この方法はミアの寿命を魔力に変えるの私の見立てではもって3分かな。)


「3分か...。」


(それだけ神器は大量のエネルギーを使うの。普通の人間なら5秒ともたないけど、ミアは魔人族だから特別なんだ。)


人型種で最古の魔人族は長命で、その寿命は1000年を越す。エルフ族で700年、ドワーフ族で300年、獣人族で100年から200年、そして人間は80年と言われている。


(そして時間が経てば経つほど全身に痛みが走る。時間が来る前動けなくなるかもしれないから速攻で決めるよ!!)


うん...。わかった。


「グスタフ!ここは危険だから下がりなさい!巻き込んでしまうわ!」


「ミア様...それは聞けません。

例え足手まといでも私は貴方を守らなければならない。ユリウスアイツとの約束なんです!!」


グスタフの決意は固い。

父との約束。グスタフはいつも私とカインを護ってくれてた。一人前になるまで父の代わりとして我が国の他の勢力の貴族から何度も...。


「...ダメだ。って言っても聞かないよね。

わかった...。これだけは約束して。

絶対死なないと。」


「...はい。」


ミアとグスタフはミカエルと向き合う。

不適な笑みでミカエルは、


「ここまで待っててやったんだ。せいぜい楽しませてくれよ。」


「言われなくても...。行くよ!!

『全解放』!!


ウオォォォォ!!」


黄金のオーラを身に纏ったミアがミカエルに突っ込んでいく。

迎え撃つミカエルは真っ黒なオーラを爆発させて剣を構える。


2人は剣を振りかぶり剣同士がぶつかる。




ガギィィィン!!!!!!




.....ドゴォォォン!!!!




ぶつかった後に物凄い衝撃波が起こる。


「剣がぶつかっただけでこの衝撃波とは...。

私には何も出来ないのか...?」


その後も次々と剣がぶつかり衝撃波が巻き起こる。

次元が違う2人の戦いにグスタフは参加できないでいた。


「...グスタフか。」


声が聞こえる方を振り返ると老人がよろよろと起き上がっていた。


「....ま、まさか。先代プロペト様。どうして?」


「ワシにも分からないが、ワシ達歴代の王達を操ってた奴が死んで動けるようになったのかも知れないな...。

まぁ、そんなに長くは持たなそうじゃがの...。

して、グスタフ。

あれは何じゃ?どうなっておる...?」


「それは...。」


グスタフは自分が来てからの事をプロペトに話した。


「なるほどの...。それであのオーラか...。

してミアの生命エネルギーが物凄い勢いで減ってるんじゃが...。アヤツ...まさか!?」


「プロペト様、どうなされたのですか!?」


「ミアは自分の寿命を魔法力に変えておるのじゃ!!」


「な!!?」


「あのままだとミアは後少しで動けんなる。

プロペト...。すまぬが命を賭けてくれるか...?」


「ミア様を守れるなら私の命なんて安いものです。覚悟は出来ています。」


「フム。一瞬でいい。

ミカエルの動きを止めてくれ。

その一瞬でワシの残された力を全てぶつける。」


「...分かりました。」


「頼むぞ!!」


そう言うとプロペトは詠唱を始め、

グスタフは2人の剣が交錯する場所に一歩、また一歩と歩き出す。

今のグスタフにはミカエルを止める術はない。

あるのは頑丈な体だけだ。

それでも止められるか...。

いや!止める...。必ず...。何があっても...。

自分が飛び込める隙を伺いながら気配を消して近づいていった。



剣が交錯する中、ミアは焦っていた。

時間だけが過ぎるのにミカエルに攻撃が出来ないからだ。

理由としてミカエルの2本の剣から繰り出す攻撃の速度が速すぎるため防御に徹するしか策がなかった。


このままでは時間切れになる...とミアは思ったその時、ミカエルの背後からグスタフが現れミカエルを羽交い締めにした。


「貴様...。何をしている。」


そうグスタフに言ったミカエルに一瞬の隙が生まれた。

その隙をミアは見逃さずミカエルに袈裟斬りを食らわす。


「グオォォォ...。」


痛みでミカエルの顔が歪む。


「ミア!グスタフ!離れるのじゃぁぁ!!!」


(お祖父様?)


ミアはプロペトが魔法を大火力の魔法を放とうとしているのを見て瞬時に離れた。



...が、

グスタフはミカエルを羽交い締めにしたまま離れない。


「先代ぃぃ!!

私に構わず撃ってくだされぇぇ!!


ユリウス...共に逝こう。

あの世向こうで酒でも酌み交わそうぞ。」


「こ、この、離せ!!離しやがれぇぇ!!!」


ミカエルは羽交い締めをほどこうと足掻いていた。


「先代ぃぃ!!もう持ちそうにない!!

早く!!早くしてくれぇぇ!!」


「すまない。グスタフ...。あの世で謝罪する。

『極限魔法、炎龍の業火。』」


プロペトが唱えるとグスタフとミカエルの足元から天まで昇る炎の龍が舞い上がった。

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