第173話、力を合わせて。


全く動けないミアにミカエルは不敵な顔をして、


「おや?どうした~?

もしや魔力がなくなって動けなくなったか?

アーッハッハッハ!やっぱり何しても私が勝つのだよ!」


後、少しだったのに...。

後少しで倒せたのに...。

何で今魔力切れ起こすの...。ここまで来て...。悔しい...。


悔しさからミアの目からは涙が零れる。


「残念だったな。

私にも時間がないからここで幕を下ろしてやるよ。」


ミカエルはそう言うと、先代達が持っていた剣を拾いミアの前に立つ。


私はここで死ぬの...?

コウにもちゃんと逢えてないのに...。


「あの世で悔やむがいい。死ね。」


ミカエルは剣を振り上げ下ろそうとしたその時、


「ウオォォォォォ!!!」


ドゴォ!!

何者かがミカエルに猛烈にタックルをかました。

予想外の攻撃だった為にミカエルはもろに食らい吹っ飛ばされた。


「大丈夫ですかぁぁ!?ミア様ぁぁ!!

このグスタフ、只今参上しました!!」


「グ、グスタフ...。助かった。」


ミアは間一髪の所で隊長のグスタフに助けられた。

グスタフはアリュートで歴代最強のハズのミアをここまで手負いにする者が居たのかと驚き吹き飛ばした相手を見た。

そして、グスタフはさらに驚く。

そこに立っていたのは片腕こそないが親友のユリウスの姿だったからだ。


「ミア様、あ、あ、あれは!ユリウスなのですか...?」


「グスタフ...。違うわ...。

見た目は父上だが、中身は別物だ。

ミカエルと呼ばれていた。奴は父の亡骸に憑依しているんだ。」


「何と...憑依ですか...。」


「誰かと思えば、お前はこの男の記憶にあるぞ!確かグスタフだったか?」


ミカエルはニタニタと不敵な笑みを浮かべる。


「そんな下卑た笑いをするな!

ユリウスはいつの時も聡明な奴だった!

それを子供の前でぇぇ!!」


グスタフは怒りに震えながら声を上げた。


「実に下らんな。死んだ奴の思いでって奴か?

2人ともすぐに殺すから、死んでからあの世で会うんだな。

まあ、あの世なんてものがあるとは思えんが。」


「ミア様。ここは私が引き受けます。

一旦、お引きください。」


「何を言ってるの!?

そんな事出来るわけないじゃない!

私はアリュートの王よ!敵に背を向けるなんて許されない!!それに貴方とアイツじゃ力の差がありすぎるわ。無駄死にするだけよ!」


「そんな事は知っているぅぅ!!」


グスタフはミアに声を荒げた。


「今のアリュートにはミア様、貴女が必要なんだ。貴女が死なない限り何回でも兵は集まり戦うだろ!

それにカイン様を一人にするおつもりか!?

貴女が居なくなったらカイン様は...。」


ミアは一度目を瞑り、力強くグスタフを見た。


「...そうね。カインを一人には出来ないものね。」


「分かってくれましたか!?では...。」


「でも、だからこそ引けない。2人で力を合わせて戻るの!!」


「何を言って...」

「グスタフ!!私の、いや王の命令よ!!

拒否権はないわ!!」


あまりの威圧の命令にグスタフは出かかった言葉を呑み込んでしまう。


「いい威圧だが、そんな瀕死の女と雑魚でこの私に勝てるとでも思ってるのか?」


「勝てる勝てないじゃない!!勝つんだ!」


瀕死のミアは立ち上がり神器マリアージュを握る。


「ミア様。今日ほど貴女と共に戦えることを嬉しくそして、誇りに思います。


ユリウス!!

見てるか!?

お前の子供はこんなに立派になったぞぉ!!」


グスタフの言葉に応じるようにユリウスの顔が穏やかになっていく。


「ちっ。なんだこの気持ちは!?

気持ち悪い!!アリエルの奴、欠陥品の身体を使わせやがって。」


ミカエルは表情とは裏腹に毒を吐いていた。


ミアは思う。

これは徐々に憑依が解けているのではないかと。

ダメージをもっと与えれば分離するのでは?と。


「まあいい、このユリウス身体より娘。お前の方が強いしお前を殺して、私がその身体を有効に使ってやる。光栄に思え。」


「生憎、私の身体は先約がいるのよ。残念でした。

グスタフ。行くぞ!」


「はい!ミア様!!」


2人はミカエルに向かって攻撃を仕掛ける。


「ストーンバレットォォ!!」


グスタフが中級の土魔法を放つ。

このレベルの相手に効くとは微塵も思っていない。

土煙を上げてミカエルの視界を少しでも悪くしているのだ。


「ここに来て...子供騙しだな。」


多少視界を悪くなってもミカエルには関係なかった。ミアとグスタフの位置は感知で把握していたからだ。

グスタフが魔力の質力を上げていく。


巨人の岩斧ギガントアックス!!」


巨大な斧の形をした魔法がミカエルを襲うが、持ってる剣を振るい粉々した。


「下らんな...。」


そう呟くミカエルの背後から、ミアが音もなく近付き神器を振る。


「バレてないと思っているのか?」


ミアの剣を弾こうとミカエルはするが空ぶる。


「残念。ハズレ。雷光の一太刀ライジングスラッシュ。」


雷より早いミアの一太刀がミカエルのもう一本の腕を切り落としたのだった。

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