第169話、黒いローブの2人。
「よおし!!お前ら思いっきり魔法をぶちかませぇぇ!!」
ミアの合図で部隊のほとんどが魔法の詠唱をする。
部隊を3つに土魔法と風魔法と炎魔法に分けて詠唱をし魔力を高めている。
「まだ溜めろよ!」
アンデットの大軍がミアの部隊目掛けて向かってくる。その距離500メートル。
「まだだ...。」
400メートル。
「もう少し...。」
300メートル。
「よし!!放てぇぇ!!」
ミアの合図で精鋭部隊は一斉に魔法を放つ。
「「合体魔法!メテオォォ!!」」
土魔法で大きな岩石の塊を生成し、風の魔法でアンデットの大軍の真上のはるか高くまで持っていく。
そして炎魔法で大きな岩石を爆発させた。
炎を纏った岩つぶての落下を風魔法の勢いでスピードに乗せて次々とアンデットに命中させて葬って行く。
「ふむ、そろそろ出るか。」
「いやいや、ミア様!
何を言ってるんですか!?
まだ魔法で岩石が降り続いている中で危険ですって!!」
隊長のグスタフはミアの発言に焦って制止を促すが、
「たわけが!!
私があんな魔法に当たる分けないだろ!!
ビビっているお前はここで部隊をまとめてろ!
まあ、付いてきても私はお前を守りながら戦う何て器用な真似は出来んがな。」
「ぐぬぬ...。」
グスタフはミアに何も言えなかったが、
グスタフにはグスタフの絶対に退けない理由があった。
それは、魔人国アリュートの前王ユリウスとの約束だ。
前王ユリウスとグスタフは幼なじみで親友だった。
その親友のユリウスの最後の言葉が2人の子供を守ることを託された。
ミアとカインの事だ。
グスタフは親のユリウスの代わりに、
2人の側にいて教養や剣術魔術や礼儀と全て教えてきたのだが、
幼き2人の親友の子は可愛くて過保護になって育てた。
メキメキ2人は頭角を現し、
ミアはアリュート最強の魔法戦士になり、
カインは剣術では精鋭部隊並みだが、多才の魔法を使い魔力もミアと同等になった。
この2人敵う者はアリュートでは居ないのだろう。
そして性格も真逆。
ミアは強引で、カインは温厚。
そういう風に育ったミアは、
戦姫と呼ばれるほどで戦場での独断先行をして一人で戦場を納める程だった。
今は育て方が失敗したのかもと思ってしまったのだが、ミアは一度決めたらもう止まらない。
「ではな!!」
グスタフは戦場に駆けていくミアを見て、
「全く...。手のかかる子だ...。副隊長!!」
「ハイ!!」
「ここを任す!!アンデットを絶対に通すな!!」
「分かりました!グスタフ隊長も気を付けて!」
「あぁ...。戦姫のお
では!!」
グスタフはミアの後を追いかける。
が、そう簡単に追い付けるハズもなかった。
その戦姫ミアは戦場に降り注ぐメテオを躱わしながらアンデットを次々に葬っていった。
次々と斬りつけながらこの大量のアンデットを操っている者を探す。
そして、探知魔法に引っ掛かったのはアンデットの大群の最奥。
一際強い魔力を感じそこに向かって一直線に向かった。
「この反応のヤツが我が国の墓を荒らしたうつけ者か!!
覚悟しろよ...。それにしても数が多すぎでしょ!!うっとおしい!!
マリアージュ!!」
(うん?どうしたの?)
「一段階、神器を解放する。力を貸して!」
(いいけど、魔力の残量に気を付けてね。)
「そこはマナポーションもあるから大丈夫だ。」
(わかった。それでは行くよ。)
「あぁ。「神器解放!!」」
神器マリアージュの
細剣は長剣に、左手に盾。そして両足には光輝くブーツに変わった。
一段階解放したミアは光輝くオーラを纏いアンデットの大軍に突っ込んだ。
アンデットはミアに触れられもせず消滅していった。
そしてとうとう辿り着いた。
アンデットの大軍を操っている本体に。
そこには黒いローブで能面の仮面を着けているヤツが2人。
そしてその2人を守ろうとする5体のアンデット達。
「貴様か...。我が民を愚弄するのはぁぁ!!」
ミアは激昂を上げる。
「愚弄?さて、何の事だか?お前分かるか?」
「いえいえ。私には何がなんだか...。人間の事は分かりかねます。」
「だよな。」
「でも、きっとあの人間はこの死体達を使っていることに怒っているんでしょう。」
「そんなに怒る事なのか?
使い道がない死体どもを再利用する事が。」
「私たちには関係無いことですが、
この死体の記憶を探れば...。
ああ、なるほど。そう言うことか。」
「なんだ?私にも教えないか。」
「貴方様はまだこの体に馴染んでないから出来ないかもしれないので、私の魔法で。」
黒いローブの小さい方が大きな方へ魔法をかける。
「これがコイツ本体の記憶なのか?」
「えぇ。どうです?面白くないですか?」
「なるほど。そう言うことか...。これは面白いな。」
「そして、我々の側に居るアンデットは...。」
「くははは!傑作だな!」
「ですよね!?」
黒いローブの2人は何が可笑しいのか笑っている。
その様子を見たミアはさらに怒りが増す。
「何がおかしい...?何を笑っている...?」
ミアの問いに黒いローブの小さい方が、
「いやなに、面白い発見をしただけですよ。
アリュート国の姫、ミア様。」
「!?」
ミアは名を呼ばれて動揺をした。
さっきまで自分の事は知らない様子だったのに急に名を呼ばれたからだ。
「あの...。」
黒いローブの小さい方が大きい方に話しかける。
「なんだ?」
「あの人間の身体私が貰っても良いですか?
この身体より強そうなので...。」
「別にいいんじゃないか?
俺は今のこの身体が気に入ってるし。
あの御方も良いと言うと思うぞ。」
「そうですか!ありがとうございます!
ではここは私に任してもらっても?」
「好きにしろ。
あの御方が来るまでには片付けろよ。」
「はい!ありがたき幸せ!」
そう言って黒いローブの小さい方はミアの方を向き少し前に出る。
「さて、ミアさん。
貴女の身体は私が貰うことになりました。
抵抗しなければ、苦しむこともないですよ。」
「何を勝手に言っている。
私の身体は私の物だ。お前にくれてやる道理はない。」
「ですよね~。まあ、いいです。
殺してからいくらでも改造してあげますから。」
黒いローブの小さい方がそう言った瞬間、殺意の波がミアを襲った。
しかし、神器マリアージュの光が殺意を弾く。
「あれ?おかしいですね?
大概の人間はこれで絶望して動けなくなるのに...。」
小さい方は首をかしげて腕を組んでいる。
「おかしいのは貴様らだ!!」
ミアは音を越える速さで小さい方に近づき、
小さい方の首を目掛けて一太刀振った。
見事に決まり首が落ちた。
「他愛もない。こんな力しかなくて私をどうにか出来ると思うな!次はお前だ!!」
ミアは黒いローブの大きな方に言うが、大きな方は全く微動だにしない。
「あぁ。
いきなり首を落とすなんて酷いですね。
まあいいんですけど。」
小さい方の首のない身体は首を拾い身体にくっ付ける。
「なっ!?」
その様子にミアは絶句する。
「驚きました?
人間には到底出来ない芸当でしょ?
驚く貴女の顔は最高ですね!ますますその身体が欲しくなりましたよ!」
テンション上げて喋って来る黒いローブの小さい方に、ミアの額から冷や汗が流れた。
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