第168話、戦姫ミア。
ミアは自室で戦の為の準備を整えていた。
「ミア。今回の戦は大きそうだね~。」
「うん。今回はアンデット2万の大群なんだ。」
「げえ~。アンデットかぁ~...。私。嫌だよ。
あいつら汚いもん。」
「そんなこと言わないで、マリアージュ。
私には貴女が頼りなんだから。」
「へぇ~。ミアの婚約者より私の方を頼ってくれるの?嬉しいなぁ。」
「頼るも何も貴女と私は一心同体なんだから今回もお願いね。」
「しょうがないなぁ~。ミアの為に頑張りますか!」
マリアージュ。
ミアが転生してくるときにこの世界クラウディアの三神の一人、守護神アテリーネから授かった
「ホラホラ、早く神器に戻って。
戦いに出るときは神器に戻る約束でしょ?」
「ハイハイ。」
マリアージュは人の形から細剣に姿を変えてミアの腰脇に収まった。
準備が出来たミアは精鋭部隊が待つ門に急いだ。
門に向かって歩いている途中、ローレライが現れて深刻そうな顔で報告をする。
「姫様...。王家の墓の方が荒らされていました。荒らされたと言うよりも自分で出てきたような感じです。」
「やはりか...。民の方の墓はどうだった?」
「同じような感じでした...。これは一体...?」
ミアは一息つき、
「報告ご苦労だった。今回の敵は思ったよりも外道な奴って事だ...。死者を冒涜しやがって...。」
ミアの拳に力が入る。
「ローレライ。お前もカインの護衛を頼む。何が起こるか分からないがお前が居れば安心だからな。」
「承知しました。」
「それと、私が戦場に出ている間、ここにレオンハート国の王子達のSランクパーティーがやって来る。丁重にもてなしてくれ。彼らは味方だ。
もしならば、彼らにもカインの護衛を頼めたら頼んでくれ。」
ミアのその言葉を聞いたローレライは頷いて姿を消した。
「ローレライももっと社交的ならモテるんだろうけどな。可愛い女の子なのに勿体ない...。」
そんなことを呟きながらミアは再び門に向かって歩き出した。
城を出て王都の門に向かう道中は、
「戦姫ミア様ー!!格好いいー!!」
「戦姫様ー!!今回もスカッとぶっとばしてくだせい!!」
民衆が花道を作りミアを熱い言葉で送り出す。
ミアはその花道を堂々と歩いて行く。
王女として魔人国アリュートを率いるミアは民衆の期待に応えなければならない責務があるのだ。
これは魔人国アリュートでは代々伝わる王となる者の仕来たりで、ミアも最初の頃は嫌がったのだが民の声、民の笑顔を見ているうちに自分の中でも闘争心を奮い立たすルーティンになっていたのだ。
そして、門に着くとミアは振り返り民衆に向けて拳を掲げた。
民衆達はその姿を見ると声を上げこれから戦場に行く兵達にも声が届く。
士気が充分に上がったミアと精鋭部隊達は門の外に出た。
「国民達の声を聞いたか!?
我々はこの戦い負けるわけには行かない!!
気を引き締めていくぞ!!」
「「オオォォォーー!!」」
兵達も声を出しミアの声に応える。
「先陣は私が行く。」
「ミ、ミア様!!それは...。」
「なんだグスタフ。私が先陣だとなにか不満か?」
「そ、そんなことないのですが...。もしなにかあったらと思うと。」
「あはは!!なにかあったらだと!?
笑わしてくれる!
この国で一番強いのは誰だ!?私だろ!?
強いヤツが先陣を切らないで誰が出るんだ!!」
「す、すいません...。」
ミアは振り返り精鋭部隊に大きな声で言う。
「いいかお前ら!!誰一人として死ぬなぁ!!これは命令だ!!死んだヤツは私がもう一回殺す!!」
無茶苦茶な事を言ってるのはミア自身も分かっているがテンションが上がっているときは、
自分でも止められないのであった。
これこそ戦姫と言われる由縁なのだが、
コウにだけは見られたくないとずっと思っているのだった。
その事を知っている神器マリアージュはついフフっと笑うのだった。
ミア達が馬で向かうこと30分見晴らしのいい丘に辿り着いた。
ミアはこの戦いに疑問を抱いていた。
なぜ墓地から攻撃を仕掛けなかったのか?と。
王家と民の墓地はアリュートを出てすぐの所だ。
それがわざわざ一旦墓地から引いて攻めて来るなんて愚の骨頂でしかない。
罠の可能性もあるが考えないようにした。
戦場では一瞬の迷いが命取りになる。
「いいか!ここで陣を張る!
アンデットの軍団が来るまでの少しの間休憩だ。」
ミアは仲間達に指示を出し、自身は探知魔法でアンデット軍団の位置を確認する。
「魔法範囲に入るまで後30分くらいか...。」
確認が終わると、マリアージュが念話で話してきた。
(ねえ、ミア?
アンデット軍団って言ってもアリュートの民なんだよね~?どうするの?)
どうする?どうするとは何?
モンスターとして殲滅するけど。
(え?いいの?)
思う所がないって言われれば嘘になるけど操られてしまって自国を攻めてくるんだから、
せめて苦しまないように倒すのが供養になると思う...。
亡くなってしまった者より今生きている者達を守らないと行けないから...。
(そっか...。ミア、私も精一杯頑張るね。)
うん。ありがとう。
頼りにしてるね、マリアージュ。
念話を終わらし、ミアは目を閉じて心を落ち着かせ集中する。
しばらくすると戦闘区域にアンデット軍団が入ってきた。
「来た...。」
ミアは立ち上がり精鋭部隊に号令をする。
「オラァ!!敵さんの登場だぞぁ!!
お前ら気合い入れて行くぞぉぉ!!」
「「ウオォォォーー!!!」」
ミアの掛け声に精鋭部隊も声を上げる。
戦姫ミアの戦い口火が切って落とされた。
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