第166話、ハンドルを握ると性格変わる人っているよね。


話し合いが終わり、他のみんなには飛行船で準備をしてもらい俺は1人師匠であるデュークの家に向かった。

向かう足取りが重い。

俺の考えが杞憂であればいいのだが。


「はぁ~。」


深い溜め息が出る。


「そんな深い溜め息なんかしてどうした?

考え事か?」


「ああ、そうなんだ。実は...。


って、ししし、師匠!?」


突然の師匠の登場に驚き過ぎて心臓が止まるかと思った。


「そんなに驚くなよ...。何だか悲しいじゃないか。」


「すいません。色々考え事してたもんで...。

ってそれよりもどうしてここへ?」


「いやなに、ルシフェルが俺を誘いにコウが来るだろうって話をしててな。

窓の外を見ていたらコウが俺の家に歩いてるのが見えて俺から出向いたって訳だ。」


「そうだったんですね...。」


またしてもルシフェルか...。

俺の心を読んでいるかのようで本当気味が悪い。


「あの、師匠にも魔人国アリュートに着いてきて助けて貰いたいんですけど、大丈夫ですか?」


「大丈夫も何も俺達もそこに向かう予定だったし、弟子の頼みは断れないだろ。任せろって言っても俺よりコウの方が何倍も強いから頼りにはならないかも知れないがな...。」


「そんなことないですよ!頼りにしてます!」


師匠やめてよ~...。

そんな沈んだ顔をされたらフォローするしかないじゃん。

師匠って以外とナイーブなんだな...って、俺も師匠と変わらないか...。


「皆が師匠を待っているので行きましょ!」


「あ、ああ。そうだな。」


「あ、あの師匠...。エクスとルシフェルは...。」


「あいつらは人化して家に居るぞ。もうすぐ来るはずだが...。おっ!来た来た!」


2人はゆっくりと歩いてくる。


「待たせたな。コイツの準備が長くてな...。」


「フフフ。失敬な。旅をする前に身だしなみを整えるのは紳士のたしなみではないですか。そういう所が大事だと私は思うのですよ。」


「はぁ~。ずっとこの調子でな。遅くなってすまない。」


「まあ、ちょうど良かったからいいけどな。

これから俺達もコウ達と共に魔人国アリュートに行くぞ。」


「ああ、コウ殿。宜しく頼む。」


エクスは礼儀正しく頭を下げる。


「あぁ。宜しくな。」


「コウ、宜しくね。君の為におめかししてきたんだけどどうかな?気に入ってくれると嬉しいんだけどな~。フフフ。」


頬を赤らめて言ってくるルシフェルに俺は吐き気を感じた。

コイツは何を言っているんだ...?

俺が疑っているのを知っているクセに...。

バカにしているのか?

俺は苛ついたがすぐに冷静を取り戻す。

ルシフェルコイツのペースに乗せられてはダメだ。

平静に...。平静に...。


「いいんじゃないか?おめかしした姿も...。」


「本当に!?嬉しいな~。クックック...。

そうかコウはこういうのが好きなのか~...。」


なんなんだコイツは...。

ダメだ、ダメだ!

気にするな...。


「そ、それじゃ、準備も万端ってことで皆の所に向かうぞ。」


俺は極力ルシフェルに関わらないように切り替えて歩き出した。


「お、おい。そんなに急がなくても。」


「師匠。早く行きましょ!皆も待っているので!!」


「あ、あぁ...。」


ルシフェルはその光景を見て薄ら笑いを浮かべていた。

足早に歩き皆の待つ飛行船に着いた。

そして、中に入ると皆が今か今かと待っていた。


「これから魔人国アリュートに向かう。みんな準備はいいか!?」


そう言うと皆は力強く返事をくれた。

俺は操縦室に入り飛行船を起動し、


「いざ、魔人国アリュートへ。発進!!」


飛行船は空高く上がった所で思いっきり魔力を込めた。すると飛行船のエンジンの音がだんだん大きくなってパーティーの皆は不安がっていた。


「ちょ、ちょっとこの飛行船大丈夫!?

凄い音しているんだけど...。」


リアは不安そうな顔をしている。


「だ、大丈夫でしょ...?

コウが操縦するんだし...。」


ノエルも何だか不安そうだ。


「アルト君...。大丈夫だよね...?」


ラテはアルトの服の袖を掴み震えている。


「さ、さすがに大丈夫だと思うよ。...多分。」


アルトも不安がっている。


「大丈夫だ!

いくらコウでもそんな無茶な運転はしないだろ!」


デュークは自信満々に言うがルシフェルは、


「クックック。あのヤンチャな方が安全運転が出来るとでも思ってるんですか?

私はデュークの中に避難しますね。では。」


「お、おい!!お前ずるいぞ!!」


デュークは言うが時すでに遅し、ルシフェルはデュークの中に入った。

ルシフェルの言葉に皆は不安にかられる。


「わ、私たちはどうしよう?」


「どうするって?

ど、どこかに掴まるしかないんじゃないの?」


「皆!急いでそこら辺に掴まれぇぇ!!」


デュークがそう言うと皆掴めるところに掴まった。

俺はパーティーメンバーが不安になって怯えている何て事は露知らず一人テンションを上げていた。


「全速力で行くぞぉぉ!!オラァァ!!行けぇぇ!!」


魔法を思いっきり発動する感覚で発動すると飛行船は、戦闘機並みの凄いスピードで飛び出した。


「うひょぉぉー!!気持ちいいぃぃ!!」


体感した事ないスピードと身体にかかるGが心地よかったのだが、


(マスター!!皆がヤバイことになってますよ!!減速してください!!)


気持ち良く飛ばしていた俺だったがヴォイスの念話で我に返って減速をした。


ヤバ...。

これはやっちまったかもしれない...。


(マスター...。

今から私がそこに行って操縦しますので待機室に来てください...。)


俺はヴォイスと操縦を変わり待機室に行くと、案の定全員に怒られた。

魔人国アリュートに着くまで正座させられたのは言うまでもない。

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