第165話、やっぱりすごいよ!ゴングさん!


「アルト、話は聞いたか?」


「うん、聞いたよ。魔人国アリュートの場所はここから遥か北東の島にあるんだよ。

アバドンここに来るときにウィリアム兄さんに書簡を書いてもらったからいつでも行けるよ。」


「そうか。後はゴングに頼んでた物の完成を待つだけか...。」


「ん?コウくん、ゴンさんに何か頼んだの?」


「あぁ。俺たちは大所帯になっただろ?

だから俺たちを運ぶ乗り物が必要だと思ったんだ。ゴングは仕事が早いからもうそろそろ出来たりしてな。」


すると、ドタドタと足音が鳴り響いてマイホームのドアが開いた。


「兄貴~!!頼まれたものが出来ただよ!!」


「出来たか!?さすがゴングだ!仕事が早い!!」


「そんなに褒めるでねーだ。照れてしまうだよ。」


ゴングは頬を赤らめて言う。

ゴリラが照れてる。とその場に居た誰もが笑いを堪えた。


「よし。みんな出発する準備を...。ってもう出来てたのね。」


「それはもう。マスターがいつでも行けるように準備は整えてありましたよ。」


「さすがだな。ありがとう。」


ヴォイスは俺の考えをいち早く察知して全ての準備をしていてくれた。

本当に持つべきものはヴォイスさんである。


「よし。出発するぞ!ゴング案内してくれ。」


「わかっただ!」


俺達はゴングの後を追いソーマの店の工房の裏手に行った。

そこに着くと俺が思い描いていた通りの空飛ぶ船、飛行船が出来ていたのだ。


「どうだ?おらの自信作だ!兄貴満足してくれただか?」


「ああ!!流石だ!!ゴングの製作は世界一だな!!」


「よしてくれだよ!!照れてどうにかなっちまうだぁ~!!」


顔を真っ赤してゴングは恥ずかしながらクネクネしていた。

俺達は思った。

ゴリラが顔を真っ赤にしてクネクネしている...。

新種のモンスターのようだ。...と。


「中も見せてもらうぞ。」


「はいさ!!」


俺達は船の中に入ると、外見からは想像できないほどの大きな部屋があった。


「ここが待機所だ。ご飯食べてもいいし、リラックスしてもいい。後そっちの扉からはシャワールーム。その隣は女性の仮眠室で、その隣が男性の仮眠室だ。」


「ええーー!!これどうなってるの?」


「意味がわからないけどアンタやるわね。」


「ゴングくん!グッジョブ!!」


みんな各々探索を始めた。


「兄貴と先生、ヴォイスさんはこっちに来てくれ。操縦室に案内するだ。」


「ぼ、僕も?」


「ああ、なんかあったときに操縦は出来ていた方が良いだろ?

操縦には魔法操作に長けて、尚且それなりの魔力がある奴じゃないとダメなんだ。ヴォイスは俺の魔力を分けているから余裕だとして、他に出来るのはアルトしか居ないんだよ。」


「そうなんだ。」


「それに俺になんかあって逃げなきゃ行けない時があるかもしれないしな。」


「そんな状況になって逃げるなんて僕には出来ないよ!!」


「落ち着けって。万が一だ。万が一。

これはアルトにしか頼めないんだ。」


「それならわかったけど...。」


アルトは渋々納得してくれた。


「...いいだか?」


「ああ...。」


「ここが操縦席だ。そしてここに手を置いて魔力を注ぐと...。」


ゴングが操縦席の石に魔力を注ぐと石は光り、飛行船のコックピットの壁が透けて外の景色が360度広がった。


「これはスゴいな...。」


感動を覚えていると、急に元のコックピットの景色に戻った。


「ハァハァ...。おらの魔力じゃこれが限界だべ。」


ゴングは汗をポタポタと滴ながら疲れた顔で言う。


「じゃあ、次はアルトやってみよう。」


「う、うん。大丈夫かな...?」


「大丈夫だろ。ゴングより魔力はずいぶんとあるんだし...。」


「じゃあ、ちょっとやってみるね...。」


アルトがコックピットの操縦石を触ると先程と同じ様に光り、辺りの景色が広がる。


「魔力の減りはどんな感じだ?」


「う~ん。少しづつ減っているって感じかな。これなら問題ないと思うよ。」


「流石だな。そのまま少し浮かしてみよう。」


「え!?そ、そんなの急に言われても!」


「大丈夫。イメージするんだ。魔法と一緒だよ。浮くイメージ。」


「こ、こうかな?」


アルトがイメージすると飛行船が地面から離れ軽く浮いた。


「なるほど。コツさえ掴めば行けるね。魔力も全然大丈夫そうだ。」


「そうか。なら良かった。よし、じゃあみんなの所に戻るか。」


「あれ?コウくんはしなくていいの?」


「アルトのを見ていたからな。お忘れかな?俺のユニークスキル。」


「ミヨウミマネか!なんかコウくんズルいよぉ!!」


「こればっかりは俺に言わないでくれ!さあ、戻ろう。」


「うん。」「んだ。」


俺達はみんなが待つ待機ルームに向かった。

そこにはみんなが待っていた。


「みんなお待たせ。操縦は覚えたからいつでも行けるぞ。」


おぉ~と皆が声をあげる。


「そこでだ、魔人国アリュートに向かう前にみんなに話があるんだけど...。」


みんなが静かになって俺の話に集中した。


「みんなは俺とアルトの師匠のデュークをどう思う?一緒に連れていって大丈夫だと思うか?」


「え!?なんで急にそんな話になるの?コウくん、僕たちの師匠なんだよ?一緒に付いてきてもらうに決まっているじゃん。戦力は少しでも多い方がいいって。」


周りからもそうだ、そうだ。と声をあげる。


「そうなんだけどな...。俺にはどうしても師匠と契約を結んでいるルシフェルの事が信用できないんだ。」


俺は思いのたけを話した。

すると、ここまでデュークと一緒に旅をしていた。ノエルが話を切り込んできた。


「あのしゃべり方とコウは色々あっただろうから信用できないのも分かるけど、身に纏っている魔力は完全に聖なる魔力だったから信用してもいいと思う。

私が聖女だから言うわけじゃないけど、聖なる魔力は悪の魔力とは全くの正反対だから普通は相容れないものだし。」


え...?

そうなの?

俺は普通にどっちも使えるんですけど...。


(それはマスターが転生してきた人間だという事と、マスターのユニークスキルが合わさって成せるものだと思いますけど。)


なるほど...。

元々この世界の住人のデューク師匠には出来ないと。


(可能性は0じゃないと思いますけどおそらくは。)


わかった。


「アンタ!自分の師匠の事位、信じなさいよね!!だからダメなのよ!」


腕を組ながらリアが言う。

リアさんお口が悪いですよ。


「私も師匠様なら信じてもいいと思います。」


とボロックは言う。

君はやっぱりイエスマンだな。

よっ!騎士の鏡!


「私はアルト君が良いならそれでいいかな。」


とラテは言う。

アルト一筋が過ぎませんか?

自分の意見を持ちましょうよ。


「警戒するのはわかるんだけど、僕は師匠を信じたいかな。師匠なら大丈夫だと思う。うん。」


アルトはまっすぐな眼で言ってくる。

本当に純粋でいい奴だな。

これじゃなんだか信じてない俺が薄汚れている見たいじゃないか...。


(元々ですよ、マスターは。)


おい!!


俺は念話でヴォイスにツッコんで、みんなの目を見た。


「わかった。師匠も連れて行こう。

ただし、ルシフェルには気をつけてくれ。」


「うん!」「はい!」「わかった!」


それぞれ返事をしてくれている中、

リアが俺に近づいて来て、


「アンタ、疑うのも程々にしないと嫌われるわよ!」


そのリアの言葉が俺に胸にクリティカルヒットしたのだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る