第153話、俺の見せ場。
「兄貴。」
「あぁ。ラウル頼む。」
俺がラウルに指示をすると、ラウルは光の玉を魔族にぶつけた。
俺は[銀翼の翼]が戦っている魔族を[鑑定]のスキルで見る。ステータスは十分の一に変化していた。
この能力は本当にすごいな...。
俺もそろそろ終わらせないと。
俺は指示を出していた魔族以外を[一閃乱舞]で粉々に切り刻んでいった。
指示を出していた魔族はその光景に呆気を取られた。
一方[銀翼の翼]は、
「死ね!人間!!」
魔族の攻撃がリバーグに襲いかかる瞬間、
「リバーグ!!離れて!!」
アレッタの声を聞いて我に返ったリバーグは、魔族の攻撃を間一髪で躱わす。
そして、詠唱が終わったアレッタは魔法を放つ。
「燃え上がれ、地獄の炎!!インフェルノ!!」
魔族の足下から極大の炎の柱が立つ。
「グオォォォ!!」
プスプス...。
炎が消えるとボロボロで瀕死の魔族がそこに佇んでいた。
「な、なぜ...炎耐性を持つ私が...こんなボロボロに...。」
「今だよ!リバーグ!!」
「いっけぇぇ!!」
仲間の声に息を吹き返したリバーグは、
剣に魔力を込めて魔族に振りかぶる。
「これで終わりだ!!エレメンタルスラッシュ!!」
リバーグの放った一撃で魔族は完全に沈黙した。
「やった...。倒した。俺達は魔族を倒したぞぉぉ!!」
皆、リーダーであるリバーグに近づいていき、抱き合いながら魔族との勝利を分かち合った。
「お前らさ~。
喜ぶのはわかるが、まだ魔族は居るんだぞ。
戦場で隙を作ったらダメだろ。」
俺がそう言うと、[銀翼の翼]のメンバーはジト目で俺を見てくる。
何でそんな目で見てくるんだよ...。
事実を言ったまでじゃん。
しかも、弱くしてやってやっと勝てたくせに。
その魔族はボスじゃなくてモブなんだよ。
モブ。分かる?
ラスボスと戦って勝った英雄みたいな雰囲気出しやがって。恥ずかしいったらありゃしない。
と言ってやりたかったが、俺は大人だ。
と言い聞かせ我慢をした。
この鬱憤は魔族の殲滅で晴らそう。
うん。そうしよう。
俺は指示役の魔族に歩きながら近づいた。
「よう。ここに残るはお前だけだな。」
「ひぃぃ!!来るなぁ!!」
「何だよ。人間ごときにそんなに怯えなくても良いじゃないか。お偉い魔族様なんだろう?」
魔族は恐怖で足をガクガクさせていた。
「この扉の中にお仲間がたくさん居るのだろう?助けを呼んだらどうだ?
俺は殊勝だからな。待ってやるぞ。」
そう言うと魔族は一目散に扉を開けて中に入っていった。
それを見て俺は魔力を込める。
魔力を身体全体に広げてより深く深く魔力を練っていく。
これにより魔法の威力を高めているのだ。
ステータスを十分の一に制限されているから、これぐらいしないと一瞬で殲滅なんて出来ないだろう。
[銀翼の翼]の連中に格の違いを見せつけなければな。
俺は扉の前に立った。
すると、
ドドドドドドッ!!
魔族達が走ってくる音がまるで地響きの様に聞こえてくる。
扉から見える魔族、それに従うモンスターの数えきれない程に俺に向かってくる。
俺の後ろにジト目をしていた[銀翼の翼]のメンバーはそれぞれ武器を手から離し、この世の終わりって感じの顔をしていた。
諦めたらそこで試合終了ですよ。っと、
早速、俺は[ミヨウミマネ]で覚えた銀翼の翼のアレッタが使ってた魔法を右手に、
魔族が使っていた魔法を左手に発動させた。
そしてイメージする。
すべてを燃やし尽くす炎。
イメージは不死鳥。
黒い不死鳥。
イメージは固まった。
「合体魔法!!
放った魔法は黒い炎を纏った巨大な鳥の姿していた。
黒炎鳥は迫っていたモンスターや魔族を全て飲み込んで消し炭にしていった。
まさに一撃。
これぞSランク。
俺はどや顔で[銀翼の翼]のメンバー達をを見た。
しかし、迫り来る魔族達の恐怖に精神が壊れたのか全員失神していたのだった。
「俺の見せ場だったのにぃぃぃ~~~!!!
どうしてこう~なるの!?」
俺は膝から崩れた。
そこにラウルが肩をポンと叩く。
「兄貴...。ドンマイ。」
俺の目からは一滴の涙が流れたのだった。
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