第146話、アルト一行。その2。
モンスター遭遇から歩くこと2時間。
アルト達は村の入り口に来ていた。
入り口には獣人の衛兵3人とエルフの衛兵3人が見張りについてた。
衛兵達はアルト達をジッと見つめる。
怪しい者が来たとでも思っているんだろう。
するとラテが前に出て衛兵に近づいていく。
「ひ、姫様。よくぞご無事で!!」
「心配してましたぞ。」
衛兵達がラテの周りに集まってくる。
「だ、大事なひ...、仲間がいるんだから姫は止めてよ!!
恥ずかしいなぁ!!」
顔を真っ赤にしながら照れてるラテを見てアルトは改めて可愛いなぁと感じていた。
「こちらの方々が姫のお仲間さんで...。
ってソーマじゃねーか...。
ペコペコして損したぜ。」
「おいお~い。久し振りに帰ってきたって言うのにそんな言い方はないんじゃないの~?
寂しくて僕死んじゃうよぉ~?」
「はっ!なに言ってるんだか。
お前なんて死んでも死なねーじゃねえか。」
そう言いながら衛兵のエルフは拳を突き出す。
「ソーマ。お帰り。」
ソーマはそう言われると拳をぶつけ、
「ただいま。リュート。」
そして、2人は熱く抱き合っていた。
その様子をみたラテがアルトとリアに近づき、
「さてさて。
アルトくん、リア、中に行くわよ。
ソーマは友達と積もる話もあるんだろうし放って行こうよ。」
「いいのかな?」
「いいの、いいの!」
村に入るとまず目に入るのは、大きな世界樹だった。入り口から世界樹まで一本道になっており、道沿いに家が建っている感じだ。
「ここがラテさんとソーマさんの故郷かぁ。
村というより大きな街だよ。」
「うん。まあ、二つの種族が主に暮らしているからね。必然と大きくなるんだよ。
こっちがエルフの村で、こっちが獣人の村だよ。」
「ちょうど真っ二つに別れているんだね。
なんか不思議な感じがする。」
「そうだよねぇ...。
昔のしきたりか何か分からないけど廃止すればいいのに...。」
ラテの顔が曇るのがアルトには分かった。
「そんな顔になるならラテ、アナタがそのしきたりを変えればいいじゃない!!
姫なんでしょ!
アナタがこの村の長になれば変えられるでしょーが!?」
「嫌だよ!!アルトくんと離れたくないもん!!」
「誰が離れて長になれなんてって言ったの?
私はアルト様と結婚してここの村に住んで、長になればいいと思っているの!」
「リア...。そんな風に思ってくれたんだ...。
ありがとう...。グスン。ありがとう...。」
「泣く事無いわよ!!ラテ!
アタシも一緒にアルト様と結婚するんだからぁぁ!!」
「えっ?」
突然の告白にアルトは驚いたが、さすがにここまで女性2人にハッキリ言われて気付かないほど鈍感ではなかった。
「ちょっっと待ちなさいよぉ!!」
急に聖剣クラレントが人化して慌てた感じで言葉を放つ。
「私だって...。私だって...。
アルト様と結婚したいわよ。ずっとずっと一緒に居たいもん。」
何故かクラレも加わってきた。
3人はアルトを見て返事を待っている。
「分かった...。みんな...。
僕は決めたよ。結婚しよう!僕はみんなを幸せにする!」
「アルトくん。」「アルト様...。」「アルト様ぁぁ...。」
「「私達がアルトくんを幸せにするから!」」
3人の言葉は力強くそして綺麗にハモった。
「え、えぇぇ....。僕の決意って一体...。」
「よし、アルトくん!」
「は、はい!!」
「これから家族に挨拶しに行くけど大丈夫!?」
「えっ!?ちょ、ちょっと待って!!
まだ心の準備が...。」
「大丈夫、大丈夫!!」
「根拠のない大丈夫は怖いって...。
ちょっと待ってー!引っ張らないでー!!」
ラテはアルトの手を強引に引っ張って、
世界樹の真下に建つ大きな家の前まで連れていった。
ラテが玄関のドアを開けると、メイドの獣人とエルフが並んで、
「ラテ様、お帰りなさいませ!!
お待ちしておりました!」
「ささ!荷物を預かります!ラテ様、旦那様方が大部屋にてお待ちしておりますので。」
「わかったわ。」
荷物をメイドさんに預けて、大部屋に向かった。
アルトは緊張の余りに変な歩き方になったり、嗚咽をしたりと落ち着きはなかった。
王子といえど婚約者の父親には緊張するようだ。
「アルト様、深呼吸して。私達がついてるから安心してください。」とリアが励ましてくれる。
「アルト様、私も居ますから大丈夫です。」とクラレは心を落ち着かせてくれる。
「アルトくん。男を見せてね!」と少し照れたような顔をしているラテを見てアルトの覚悟は決まった。
コンコン。
ノックをして扉を開ける。
「失礼します、長女ラテ。只今帰りました。」
そこには獣人とエルフの面々が座っていた。
そして真ん中に座っているだろう獣人の男がおもむろに立ち上がり、いきなりラテに向かって飛んできた。
「ラテちゅわ~ん!!お父さんでちゅよぉぉ~!!」
飛んでくるラテのお父さんにラテは、
お父さんの顔面をアイアンクローで掴み、
「赤ちゃん言葉は止めろって言ったよねぇ..。」
「痛い!痛いって!ラテちゃん!!
お父さんの顔面取れちゃうって!!」
「一回くらい取れても大丈夫だと思いますよ...。ほら...。取りましょう...。」
ミシミシ....。と部屋中に聞こえるくらい軋んだ音が響く。
「ちょ、ちょっとラテさん!!
それ以上やるとお義父さんが死んでしまいますって!!」
アルトの声に手を離すラテ。
「ハッ!?ご、ごめんなさい!
アルトくんの前ではしたないことを!!
恥ずかしい~!!」
ラテは恥ずかしさの余りにその場でしゃがみこんでしまった。
「大丈夫ですって、
僕は全然気にしてませんから!
むしろ色んなラテさんの姿が見れて僕は嬉しいです。」
「アルトきゅーん...。」
ラテは子犬のような顔をしながらアルトを見ているとアルトはラテの頭をナデナデし始めた。
その様子を見ている歳を取ったエルフと獣人が怒号をあげた。
「き、貴様は誰だぁぁぁ!!」
「ワシらの孫に何をしとるんじゃぁぁ!!」
「えっ。えっ。」
急な怒号に戸惑うアルト。
「その手を離せぇぇ!離さぬなら覚悟せぇ!!」
「ぶち殺すぞぉぉ!!おりゃぁ!!」
今にも殴りかかって来そうな勢いに、
「「お止めなさい!!」」
その隣に座っていた女性2人に一喝されシュンとした。
完全尻に敷かれているのだろう。
「騒がしくてすみませんね。」
「じいさん含めうちの男共は血気盛んでいけない。いい年なのに。私達の方が恥ずかしいわね。」
「本当にそうね。それで貴方は孫のラテの何なのですか?仲が良さそうですけど。」
「えぇ。ただならぬ関係を感じますね。」
「ぼ、僕はラテさんと....。
結婚を前提に付き合わせていただいてる、アルト・フォン・レオンハートと申します!」
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