第145話、アルト一行。その1。


「みんな準備できた?」


そうソーマが言うとアルト達は頷いた。


「じゃあ、行くね~。転移。」


ソーマが転移の魔法を使うと一瞬でエジル邸から森の入り口までたどり着いた。


「ここがラテさんとソーマさんの実家の森か...。すごくでかいね...。」


「そうだね~。

まあ、世界樹の森だからね~。

この森を守るためにエルフと獣人が力を合わせて守っているんだけど、相性がなにかと悪くてね~。」


「そうですね...。

はぁ~。

その事で今回も呼ばれましたからね...。

本当いい加減にしてほしいわ。」


ラテは溜め息混じりに話す。

そこにリアが鼻息荒く言う。


「そうね!

種族間のいざこざなんてくだらないわ!

時代遅れもいいとこよ!!」


「それを言われると僕としては心が痛いけどね。

人間族も、身分だ何だって言っているからさ。」


アルトもリアの言葉にうつむく。


「それはアルト様のせいじゃないから、

心配しないでください!!

むしろ、アルト様はラテやアタシ、ソーマ兄ちゃんに差別したりしないじゃん!

そういう心持ちが大事なんだと思います。

私はそういうアルト様が大好きですから。」


「リア...。ありがとう。」


リアの言葉にホッコリする中、聖剣クラレントが神妙な顔をしている。


「なんかこの森に嫌な気配がするんだが...。

普段からこんな不気味な気配をしているものか?」


「嫌な気配...?

確かに...。以前はこんな気配はしなかったはず。もしかして村に何かがあったのか?」


ソーマも難しい顔をしている。


「この世界樹の森は、モンスターも入れない領域なのに何か悪い気配が混じり混んでいる。

アルトくん、みんな!

早速で悪いんだけど村に急ぐよ!!」


ソーマは焦った顔をして森の中に入っていく。

アルト達もソーマの後を付いていった。

道なき道を歩くこと30分。

ソーマが足を止めた。


「おかしい...。普段はここから道があったハズなのだが...。」


「そうね...。これは深刻な状態かもしれないわ。」


「みんな、臨戦態勢をとってくれ。いつ襲われるかわからないから。」


「僕が探知の魔法かけますよ。」


「アルトくん。この森では探知の魔法は何故か効かないんだ。世界樹の聖域だからかも知れないけど...。」


「そうなんですか...。」


「僕が先頭で歩くから真ん中は、

アルトくんとリア、最後尾はラテの布陣で行くよ。

クラレは聖剣化してアルトくんと一緒に。」


「「了解!!」」


緊張が走る中アルト達一行は警戒をしながら森を進んだ。

するとラテが、


「モンスターの匂いがするわ!

その数は...分からない。数が多すぎる。」


「分かった。僕は前線でモンスターの攻撃を防ぐからアルトくんとリアちゃんは、火属性魔法以外で攻撃して!森に火がついたら大変だからね。」


「はい!」


「ラテは後方から出来るだけ攻撃して弱らせて!倒せたら一撃で倒していいから。」


「わかった。」


ソーマはそう言いながら片手剣と槍をそれぞれ持ってモンスターが来るのを待った。


「来るわ!!」


ラテの言葉が響くと同時にブラックウルフ達が次々と飛び出してくる。

ラテの弓の攻撃でブラックウルフは致命傷にはならないまでも動きを鈍らせた。


「ここまで遅いのなら。氷の弾丸アイスショット!」


アルトとリアは動きの鈍ったブラックウルフを凍らせていく。

そして、ソーマは槍と剣を上手く使い止めを刺していく。次々とブラックウルフの死骸が転がっていった。

100匹以上倒した所でブラックウルフ達hあ

出てこなくなったが、


「油断しないで、大きいのが来る。」


ラテの言葉に緊張が途切れない。

そこに現れたのは3メートルはあるだろうか?

熊のモンスターだった。

アルトはすかさず鑑定をした。


「みんな気を付けて!狂熊の王グリズリーキングで、レベルは120だ。」


「なっ!?レベルが高い...。」


ソーマが驚くがラテとリアは落ち着いていた。


「レベル120が何だって言うのよ。

こっちはもっと化け者みたいな人とパーティー組んでるんだっつーの!!


轟け、雷帝の弓ライトニングスパーク!」


ラテが放った弓矢は雷よりも速いスピードでグリズリーキングを捉える。

被弾したグリズリーキングは痺れて動きを止めた。


「そうよね!!

うちの化け者のリーダーには負けてられないわ!!」


「2人ともコウ君の事を化け者だなんて可哀想過ぎるでしょ...。

でも、負けてられないのは同感だな。

リア、行くよ!」


「ハイ、アルト様!」


「「切断の十字架ウインドウクロス!!」」


クロスに飛んでいった風の刃がグリズリーキングの胸元に十字架に型どられたように穴を空けた。

そして、絶命を余儀なくされた。


「まさか、君達がここまで強いなんて...。

僕、実は要らなかったかもね...。」


ソーマは3人の強さにショックを受けていた。


「いやいやいやいや!

僕達が強くなったのはソーマさんが武器を強化してくれたお陰ですから!ねっ!?」


アルトはラテを見る。


「そうよ!こんなに扱いやすいよ思わなかったわ!ねっ!?」


ラテはリアを見る。


「そそそ、そうよ!ソーマ兄ちゃんの武器は世界一なんだから!ねっ!?」


リアはソーマを見た。


「そこで僕に同意を求めないで欲しかったな...。」


「あっ!」


「でも、純粋に僕が作ったのを褒めてくれて嬉しいよ。ありがとう。」


ソーマが笑顔になってアルト達はホッとした。


「それにしてもソーマさんは多才なんですね。剣に、槍に。僕は羨ましいですよ。」


「あぁ~。それはね。

僕のスキルが[ウエポンマスター]だからだよ。

一応、全ての武器を装備できるんだ。

聖剣とかも装備出来るけど、魔力をごっそり持っていかれるから装備したくはないけど。」


「ソーマさんも何でもアリの人種なんですね...。羨ましい。」


「コウくんと一緒にしないでくれよ~。

あんなに化け者じゃないって!」


「そうですね~。」


モンスターの襲撃が落ち着いたアルト達は村に向かい再び歩き出した。

一方、化け者扱いされていたコウはくしゃみが止まらなかったそうな。

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