第143話、ボロック一行。その2。


ボロック以外の2人は緊張感を持ちつつ、前から来る者達を待った。


「見えてきたぞ。この気配は...。まさか...。」


「ブレイブ!なにか知っているの?」


「あぁ...。この気配は聖剣エクスカリバー。

我が弟の気配だ。」


「それって剣聖様の剣じゃ...。」


「え?え?」


ボロックはまだ分かってない様子で2人の顔を交互に見ていた。


「ボロック!緊張感を持ちなさい!

今前から得体の知れない者が来るわ!!

敵なのか、味方なのか分からないからしっかり気を引き締めなさい!」


「は、はい!」


「来たぞ!!」


3人の緊張感は高まった。

ブレイブと聖女ノエルは冷や汗が垂れる。

そして、訳もまだ分かってないボロックは緊張感だけは持って前を向いていた。


「そんなに警戒しなくていいよ。

ブレイブ。久しぶりだな!」


「デュークなのか...?」


「あぁ。お前の事を知っているのとコイツが居ることが証拠だろ?」


「兄者。久しぶりだな。何年ぶりだろうか?」


歴戦の戦士風の男がブレイブに話しかける。


「あぁ。久しいな。我が弟エクスよ。」


「して、オルガはどうした?

お前ブレイブが居るってことはオルガも居るだろう?」


「オルガは負傷して第一線を離れた。

今の私の契約者はこの男だ。」


「へぇ~。勇者しか認めないお前が認めた男ね。」


デュークがボロックをジロジロ見る。


「ステータス的にはかなりレベルが低いな。

この男が主でいいのか?」


「き、貴様は何を言っているんだ。」


ボロックはデュークの言葉に怒りを感じた。


「悪い、悪い。悪気はないんだ。

気を悪くしたなら申し訳ない。

ボロック・ゴンザレス。」


「どうして私の名前を...。」


「どうしてって?

俺が鑑定のスキルを持ってるからに決まっているだろう。」


「鑑定のスキル?

まるでコウ殿みたいな事を言うんだな...。」


「コウ?

コウって、コウ・タカサキの事か?」


「ああ。

私が入ってるパーティーのリーダーだ。

本当はアルト様がなった方がいいような気もしているがな...。」


「アルトも...。懐かしいな...。」


「懐かしいって別れて半年位しかたってないのでは?フフフ。まぁ、デューク、貴方にとっては地獄みたいな半年でしたもんね。」


白髪の不気味な存在が薄気味悪い笑みを浮かべて剣聖に話しかける。


「ルシフェル...。

地獄の日々を与えたお前がそれを言うなよ。」


「フフフ。

あの日々は私にとっては楽しかったんですけどね。」


「あ、あのアルト様も知っているみたいなんですが....。貴方は一体?」


「ん?俺は剣聖デューク。コウとアルトの師匠ってところかな...。一応。」


「な、な、なんと!!

コウ殿とアルト様の師匠でありましたか!?

失礼な態度を申し訳ない!」


「全然いいぞ!

コウなんて俺をすぐに越えていったから師匠って言われてもなんか違う気がするがな...。」


冷や汗が止まらないノエルは恐る恐るデュークに聞く。


「デューク様...。その白い髪の人?は誰ですか?人間ですか?」


「こいつか....。説明するのが難しいな...。」


悩むデュークに不気味な笑みを浮かべる男は言う。


「デューク。

説明しづらいなら言わなくていいよ。

きっとこの子達では理解できないだろうし。」


「あぁ...。すまないな。説明はできないが私と契約しているパートナーってとこだ。」


「そうですか....。剣聖様が言うならしょうがないですね。」


「悪いな...。ところでお前達はどこに行くところなんだ?」


「私たちはアバドンに居るコウさんの所に行くところです。

私は旅が初めてなので慣れておこうと思って我儘言って別で行動しているのです。」


そう言うノエルを見てデュークは難しい顔をしている。


「そうか...。ノエル・アイリーン。

聖女...か。

レベルが低すぎてボロックよりも足手まといなるな。」


「は、はい...。自分でも思ってます。

だから少しづつ力をつけて..。」


ノエルの話を遮る様に、


「それでは遅いな。

少しづつなんて悠長な時間はないハズだ。

才能はあるのにもったいない。

そこで提案なんだが...。」


「提案ですか...?」


ノエルは不思議そうな顔で聞く。


「あぁ...。

俺たちは国からの依頼でダンジョンに住む魔族たちの殲滅を頼まれている。

ここからはそう遠くない場所に新しく出来たダンジョン3つだ。

その3つのダンジョン住まう魔族の殲滅を手伝ってもらいたい。」


「えっと...。」


悩むノエルにデュークは畳み掛ける様に話してくる。


「お前達にもちゃんとメリットはある。」


「メリットですか?」


「あぁ。

まずはレベル上げだな。魔族はかなりレベルが高い。経験値が美味しいという事だ。」


レベルが高いと聞いてボロックは不安になってデュークに聞く。


「そんなにレベルが高いなら我々では勝てないのでは?」


「そうだな...。このままでは厳しいだろう。

だから魔族と戦うまでボロックとノエルに修行をつける。」


「け、剣聖デューク様自ら修行をつけてくれるんですか!?」


「あぁ。コウとアルトだけ修行をつけてお前たち2人に修行をつけないのは不公平だろ?

どうだ!?やってみないか?」


ボロックとノエルは目を合わせて頷く。

そしてデュークの方に向かい、


「私にとっては願ってもないもの!是非お願いしたい!」


「私も!私だって強くなりたいもの!!是非お願いします!」


力強く懇願した。

2人もコウとアルトの足手まといになっている事はわかっていた。

いつまでも守ってもらうだけじゃ行けない。

自分達が守るくらいじゃないとこの先一緒に旅は出来ない。

2人は決意を持ってデュークを見た。


「2人ともいい眼だ!じゃあ、さっそく行くか!!」


デュークは街道の結界の外に出る。


「そっちは...モンスター出ますよね...。」


「当たり前だろ?モンスターと戦いながら教えていくからな。悪いけど俺はスパルタだから覚悟しろよ!」


「は、はい!!」


2人の地獄の日々は始まったばかりだ。

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