第140話、出発の準備。
俺はスノーフリーデンのエジル邸に来ていた。
「コウくん!一週間ぶりだね。なんかあったの?」
「あぁ。アルト、久しぶり。ラテは居る?
手紙を渡すようにギルドから言われてきたんだよ。」
「そういう事ね。もう少しで来ると思うよ。
コウくんせっかく来たんだからご飯でも食べて行く?」
ヴォイス達も買い物しに行ったばっかりだから、ご飯くらい食べてもいいだろ...。
「あぁ。せっかくだから一緒に食べて行こうかな。」
「うん!
僕もちょうどこれからだったんだ~。」
俺はアルトと食卓の間に行った。
そこにはエジルとネモとソーマも居た。
「あっ!コウさんお疲れさまです。」
「こ、コウさん。お疲れさまです...。」
「コウくん、お疲れ~。」
「みんな、お疲れ様。」
三者三様の挨拶で俺を向かえてくれた。
俺は席に座り食事を楽しんだ。
エジルはこの一週間領主としての仕事を真面目にしていて少しづつだが領民に信頼してくれる様に頑張っているようだ。
ネモは聖騎士隊長のクラリスに毎日しごかれている様だ。
お陰でレベルと技能が上がったらしい。
勇者として少しづつ自覚を持ったみたいだ。
ソーマはアルトに魔法を教えて他はゴロゴロしているらしい。
ここの暮らしが快適なんだとか。
店に戻ってゴングに鍛冶を教えればいいのに。まぁ、ゴングもかなり鍛冶の技術が上がったから放っておいてもいいらしい。
アルトは転移の魔法は覚えてんだけど、
他の魔法をソーマに教えてもらっているんだとか。
結局、何もしていなかったのは俺だけという事になる。皆が努力していたのにダラダラしていたのが何か恥ずかしい。
「そういえば、ボロックはどうしたんだ?
見えないんだけど。」
「あぁ~。ボロックとノエルさんは2人でアバドンに向かったよ。」
「え!?2人で大丈夫か?」
「なんでもノエルさんが2人きりになりたいみたいで、新婚旅行だぁー!とか言って旅だったんだよね。」
「それはまた、ノエルらしいな...。
まぁ、ボロックも聖剣持ちだし大丈夫か。」
食事も終わり会話も落ち着いたときにラテとリアとクラレントが入ってきた。
「あ、コウくんだ!久しぶり~。」
「アンタ!何しに来たのよ!フンッ!」
「お久しぶりです。」
「あぁ。久しぶり。」
こちらも三者三様の挨拶だ。
それにしてもいつまで俺はリアに悪態をつかれなきゃならんのだ。
まぁ、いいか...。
「ラテ、これ。ギルドから手紙が2通届いてたぞ。」
「ん、ありがとう。」
ラテは手紙を受け取って早速読み始めた。
そしてしばらく立つとため息混じりに話始めた。
「はぁ~...またか...。
ごめん、アルトくん。
私実家に帰らなきゃ行けなくなった。」
「ラテさん、どうしたの?
手紙の内容が原因?」
「うん...。
お祖父ちゃん同士が喧嘩してるから顔だして欲しいって...。
私が村を出てから毎年、毎年1回は喧嘩するんだよね...。
嫌になっちゃう。」
「そうなんだ...。なら僕も行くよ。
ラテさんの親御さんにも挨拶もしなきゃだと思ってた所だったし。」
アルトが男を出してラテに付いていくと言う。
エルフと獣人の村か...。
面白そうだな...。
俺も。っと思ったが俺はギルドからの依頼があった。
「俺は今回は行けないわ。ギルドからの任務があってさ。」
「ギルドからの任務?コウくん一人で大丈夫?」
「大丈夫。ヴォイス達も居るしさ。
それよりアルト達の方が大丈夫なのか?
皆、後衛じゃないか...。
前衛のネモとか連れて行けばいいんじゃないか?」
「お、俺...?俺は...。」
ネモは行きたくないような顔をしている。
それはそうか。
まだレベルも高くないから足手まといになる可能性の方が高い。
「大丈夫。
僕だって一応、王国で剣の手ほどきは受けてるからね。
大体その前に探知の魔法で気づくから魔法で倒せるよ。」
アルトがそう言うとネモはホッとした顔をした。
お前は一応、勇者なんだから色々な経験積まなきゃダメだろって思うがこれも時代なのかね...。
もしそんな事を言ったら確実に嫌われるし、訴えられかねん。さわる神に祟りナシだ。
本人がやる気を出したときに俺が暇だったらレベル上げやら手伝って上げればいいのだ。
「アルト様!私は付いていくから!」
「リア...。無理しなくていいよ。危ないかもしれないから。」
「なに言っているんですか!?
ワタシはアルト様と片時も離れたくないのです!
大体ラテ一人では不安ですわ!」
強がってしゃべっているリアだがラテとも仲がかなりいい。普通に心配なんだろう。
そもそも契約精霊だから置いていかなくてもいいと思うのだが...。
「リア、ありがとう。ラテさんの事が心配なんだね。」
「そそそ、そんな事はなくてよ!」
リアは顔を真っ赤にしてそっぽを向いた。
「なら僕がアルトくんに付いていくよ。」
「ソーマさん、大丈夫なんですか?」
「大丈夫、大丈夫。そもそも僕の故郷でもあるしね~。転移の魔法を使えば近くまでひとっとびさ。」
「近くまでしか行けないんですね。」
「あの村の森には強い結界が張ってあるからね~。
あの森の出身の僕とラテがいれば余裕っしょ。」
「わかりました。お願いします。」
「オッケー。準備してくるから少し待ってて。
ほら、ラテちゃんもリアちゃんも準備するよ。クラレは....いっか。では後でね~。」
そう言うと3人は準備をしに部屋をでた。
「アルト気を付けてな。
なんか起きたら念話を飛ばしてくれ。
すぐ駆けつける。」
「うん。ありがとう。
コウくんも気を付けてね。」
「おう。じゃあ、またな~。
エジルとネモもしっかりやれよ。」
「は、はい!」「わ、わかってるよ。」
俺はアバドンに転移した。
そして、家に着くととんでもない量の食材が運ばれていたのだ。
「な、な、なんじゃコリャァァ!!!?」
「あ、マスターお帰りなさい。
アスタとリスクにおねだりされて買ったらこんな量になってしまいました。
私の収納魔法では入り切らないのでマスターにお願いしようかなと...。」
「いやいや、これはいくらなんでも買いすぎなのでは?」
「そうは思ったんですけど...。アスタとリスクが食べきれると豪語するもんでついヒートアップして...。」
あ、頭が痛い...。
よくこれだけの食材を集められたな...。
量で言ったら普通の民家が丸々2軒位の大きさだ。
俺の収納は時間停止も付いてるから腐らないんだけどさ...。
この街の食料無くなってしまうのではないか?
っていうかアスタとリスクが見当たらない...。
「ヴォイス!アスタとリスクは?」
「食料を置いてまたどこかに行ったんですけど...。」
「マジか...。」
俺は念話を使いアスタとリスクにすぐ戻るように伝えた。
なんか文句みたいな事をグチグチ言われたが渋々了承して帰ってきた。
ん?
アスタとリスクの後ろに人がいっぱい来てるんですけど...。
「お兄さん、ただいま~。」
「なの。」
アスタとリスクは何食わぬ顔で帰ってきた。
「アンタがこの子達の保護者?」
「は、はい。」
「この分の代金払っておくれ!!」
「こっちもだ!」「うちもだ!!」
「ちょ、ちょっと待ってください!
払いますから。」
俺は請求書を持ってきた人々にお金を次々と支払った。
「次はちゃんとお金を持たして買い物させておくれ!いちいち取りに来るほど、うちも暇じゃないんだからさ!!」
「は、はい...。すいません。」
俺は来てくれた方々に謝罪をし帰した。
「アスタ...。リスク...。ちょっと来なさい。」
「僕たちは悪くないって!!
好きなように買っていいってヴォイス姉が言うから!!」
「そうなの!!私たちは悪くないの!!」
「買い物はいいけど、節度を持って買い物をしなさい!
そして、言い訳をする前にまずは謝ることを覚えなさい!
わかったか!?」
「はい...。ごめんなさい。」
「ごめんなさいなの。」
「マスター、すいませんでした。」
「みんな反省したみたいだからヨシとしよう。次からは程ほどにな....。」
「はい!」
みんな返事だけはいいんだから...。
この食材食いきるまで何日かかるんだろう...。
そんなことを思いながらアイテムボックスを整理したのだった。
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