第138話、作ったの俺なんですが...?



スノーフリーデンからアバドンに帰ってきた俺たち...。

正確には俺とヴォイスとアスタ、リスクだ。

アルト達はソーマに転移の魔法を教えてもらうためにもう少しスノーフリーデンに残るんだとか...。

そんな事を言いつつ本当は弟のエジルともう少し一緒に居てあげたいんだと思うけど。


何にせよ、久しぶりにのんびり出来るな。

俺たちはアバドンの街の門に居る衛兵に挨拶をした。


「あぁぁぁーー!!おめぇ、コウさんでねーか!?」


「そ、そうですけど...。ど、どなた?」


「忘れちまったのか?ほら、この街に来たときに身分証がなくてギルドで作れって言った...。」


ずいぶん前な気がする。

思い出したフリをしよう...。


「あ!?

あのときはありがとうございました。」


「英雄様に覚えていてもらえるなんて感激だぁぁ!ぜひ!是非ともサイン下さい!!

妻と子供達に自慢したいんだ。」


「そ、それはいいですけど。どこにサインすれば...。」


すると衛兵は持ってる槍を目の前に差し出して、

「この尖端の鉄の部分にお願いします!

衛兵のジョンへって。」


槍の刺す部分でいいのか?

俺は仕方なくジョンから渡されたペンでサインをした。


「コウさん!!ありがとうございます!

この槍は家宝にします!!」


「そ、そんな大袈裟な...。」


「いやいや、コウさんは今やこの国の英雄なんですよ!私は鼻が高いです!!」


ジョンはサインした槍を大事そうに抱き締めクネクネしている。


「あ、あの...。」


「はい?」


「通ってもいいですか?」


「あぁぁぁ!す、すいません!

舞い上がっちゃって!どうぞどうぞ!!あっ!?

でも大通りは歩かない方がいいかもしれませんよ!騒ぎになると思いますよ。」


「またまた~。大袈裟な。ではまた。」


俺たちは衛兵に挨拶をして大通りを歩いた。

すると、

「英雄様の御帰還だぁぁ!!」

と誰かが言った瞬間。街の人が沢山集まってきた。


「な、なにこれ...。

お兄さん、少し怖いんだけど...。」

「集まりすぎなの...。」


街の中は一瞬でお祭り騒ぎになった。


「こんな揉みくちゃじゃ全然家に帰れない...。

みんな俺に捕まれ。転移するぞ。」


みんなが俺に捕まったのを確認して俺はパーティーの家まで転移した。


「いやいや...。マジでやばかったな...。」


「そうですね。よもやこんな感じになっているとは...。」


「お祭り騒ぎは好きだけど少しはのんびりしたいな。」


「しばらくは家でのんびりするのもいいんじゃないんですか?

することもないんですし。」


「そうだな...。でもいいのか?

ヴォイスが行きたい所があればどこでも連れてくけど。」


「いいんですよ。マスターが側に居てくれる、ただそれだけで私は幸せなんですから。」


「僕もお兄さんの側がいいな~!料理は美味しいし!」

「絶品なの!」


「2人は食い気の方が勝っている気がするけどな。

よし!

今日は久しぶりに腕によりをかけて俺が作るか!!」


「やったぁぁ!!」「なのぉ!!」


アスタとリスクはおおハシャギした。


「それならゴング夫妻も呼びますか?」


「そうだな。折角だし、皆で食べよう!!」


俺はキッチンに向かい料理を始める。

ヴォイスはゴング達を誘いに行き、アスタとリスクはテーブルにナイフやフォークをセットし始めた。


「さてと...。今日は何を作ろうかなっと?」


俺は収納魔法の中身を見る。

ワイバーンの肉があるな...。

最近はいつもバーベキュー的な感じで楽しすぎたから今日は手をかけよう。


とりあえずワイバーンの肉を脂身ごとミンチにする。それをボールへ入れる。


そして次は玉ねぎとニンジン、キノコをみじん切りにしてボールに移す。

そこにケチャップ的な調味料と塩コショウを適量、それと卵を入れてよくこねる。


コネコネ...。


コネコネ...。


こね終わったら形を整形してバットに並べていく。

それが終わったら、次はボールに小麦粉と卵を水で溶く。ダマにならないようによく混ぜること。


シャカシャカ...。


シャカシャカ釈迦...。


それが出来たら少し固くなったパンを細かく削っていく。


ガリガリガリ...。


ガリガリガリクソン...。


整形したお肉をバットから取りだし、

小麦粉と卵の溶いたものにくぐらせてパン粉をつけて違うバットに置いていく。


おっと...ウッカリ。

油に火をつけなければ...。


俺は鍋に油を注ぎコンロに火をつけた。


よし。


さて続きだ。

それが全部出来たら、次はキャベツの千切りだな。


トントントントン...。


トントントントンHINOのニトン...。


よし、これだけあればいいだろう。


大きなボールに山になる程のキャベツの千切りを切った。


次はレモンをスマイルカットをして...と。


後はスープを作って、米はないからパンで良いか。

よし、ほぼ準備終わった。

ちょっとリビングに行ってみるか...。

リビングに行くと、


「アニキ~!!久しぶりだな!」


「ゴング!来てたんだな!」


「何言ってるだ!

厨房まで挨拶に言ったら、

アニキがブツブツ言って怖いくらい集中してたからリビングで待ってただよ!」


「全然気づかなかった...。

それは悪かった。アニーも久しぶり。

体調は大丈夫か?」


「久しぶりです。体調は良いですよ。

まだまだ安定期ではないのですが。

身の回りの事はゴングさんがやってくれますから。」


「ゴングは本当にいいパパになるな。」


「そんなに褒められると照れるだや~!

こっぱずかしい!!」


そう言いながらニコニコしているゴングとアニーを見ていると俺までほっこりしてくる。


「よし、みんな集まってることだし早速ご飯にするか!」


「「わぁぁい!!」」


みんな俺の料理を楽しみしているようだ。

俺はすぐ様キッチンに行き、油の温度を確かめて揚げ始めた。


そして盛り付けをして皆の居るリビングに運んでいった。


「アニキ、これは何て言う食べ物だ?

おら見たことねーだよ。」


「ふふん。何だろうな?

とりあえず食べてみたまえ...。

料理の説明はそれからするから。」


「アニキがそんな言うんだから相当だべ。

みんな食べるべ!!」


「「はぁぁい!!いただきます!」」


いただきます。って、

俺がいつも言っているから浸透したのかな?

みんなが一口食べた。


「なんじゃこりゃぁぁ!!

外はサクサク中はジューシー。

肉汁が溢れてるだ!!」


ゴング...。いい解説です。


「はぁぁぁ。美味しすぎる。

なんですかこれは?

お腹の子も喜んでいますぅ!!」


アニー...。まだ妊娠1、2ヶ月でしょ?

それはアニーの勘違いだと思いますよ...。


「これは何個も食べられる!!

溢れる...。口に一杯溢れてくるぅぅ!!

すごい!すごいよ!お兄さん!!」

「お口の中....。じゅるじゅるなのぉぉ!!」


アスタ...。リスク...。

卑猥な言葉は止めなさい...。

ここは食卓ですよ...。


「うん、このメンチカツは美味しいですね。

初めて食べましたが、流石マスターですね。

感無量です。」


ヴォイスさん...。

これから説明するのに料理名言われたら俺は何も言えないんですけど....。


「なるほど!

これはメンチカツって言うんだべな!!

これは美味しいだ!!

アニキ、これを教えてほしいだ!!」


「本当に教えてください!!

ゴングさんのお弁当に作って上げたいです!」


「全然いいよ...」


俺が作り方を教えようとしたら、


「マスターに代わって私が教えます。

これはですね.....。」


ヴォイスが代わりに教え始めた。

作ったのは俺だよ...?

ねえ...?


俺が説明する前にヴォイスが全て説明して、

俺が空気になったのは言うまでもなかった。


俺って一体...。


俺が食べたメンチカツだけは涙で塩味が強かった。

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