第137話、またやらかしました?
帝国の新しい王の就任式は無事に終わり、パーティーが始まった。
俺の回りには相も変わらず男性貴族が集まってくる。
そして、アルトやエジルの回りには女性が集まっていた。
本当に俺は呪われているんじゃないかって思う。
俺ってそんなに顔が悪いのか?
この世界の人々に俺はどう映って見えているんだろう?
まさか、かなり不細工に映っているのか...?
そんな事を本気で考えてしまう...。
「マスター...。大丈夫ですか?
お顔が優れないようですけど...。」
「あぁ...。少し考え事をな...。」
「そうですか...。あんまりクダラナイ事で思い詰めない方が良いですよ。」
「わかっているなら聞くなよ...。」
「そう思うなら今日は祝いの席なんですから、しけた面しないでください。
マスターはこの国でも英雄なんですから。」
「そうだな...。ごめん。」
ヴォイスに言われてハッとした。
俺は英雄なんだからそんな事をいちいち考えるようなチンケな考えは捨てよう。
「ヨシッ!!ヴォイス、今日は飲むぞ!!」
「そうですね。でも、あんまり飲みすぎないように...。」
俺はヴォイスの話も聞かずに貴族の間に入って飲みまくった。
「さすが英雄様!」とか、「英雄様はお酒の強さも英雄なのですな!」とかいっぱい褒めてくれるから俺は調子に乗ってしまった。
やはり記憶が無くなった。
そして、次の日。
頭痛と共に起きる。
「うぅ。頭いたい...。そして、気持ち悪い...。」
「調子に乗って飲むからですよ...。
本当マスターは成長しないですね...。
同じこと何度するんですか?
ミア様も呆れてますよ...。
異世界来てまでも成長しないって。」
「ヴォイス...。小言は今は止めてくれ...。
本当に頭痛いんだって...。
...[キュア]。
少し楽になった...。はぁぁ...。」
「本当に、マスターは...。」
呆れた様子で席を立つヴォイスはコップに水を注ぎ持ってきてくれた。
「ゴクゴク...。ぷはぁ~!
生き返った!ヴォイスありがとう。」
「いえ、これも私の役目ですから...。
それで今後はどうしますか?
帝国でやることは終わったじゃないですか。」
言われてみればそうだ。
最近は動きすぎている気がするな...。
ミアにも会いに行きたいんだけど...。
さすがにヴォイス達にも休ませてあげないとかな...?
「うーん、そうだな...。
少しアバドンに戻って休もうか?
最近ドタバタしていたからな。
少し休んでからミアに会いに行こうと思うんだけど。」
話を聞いているヴォイスが神妙な顔をしている。
「休むのはいいんですけど、
ミア様に会いに行くのは厳しいと思います。」
「え!?なんで?」
「それは言えません。
いくらマスターの頼みでも。」
「そんなこと言われたら気になってしょうがないよ。」
「すみません...。ミア様との約束なので。
ただマスターがミア様に会いに行くとか言われたなら、
「もう少し待って、今は色んな事でバタバタしているから落ち着いたら連絡する。」
と言っていました。
私がミア様の事で言えることはそれだけです。」
俺が力になれる事なら...。と思うが、
ヴォイスは事情を知っていて言っているのだろうから大丈夫か。
ミアから連絡するって言っているんだしな。
「わかった。深くは聞かない。
ただし、ミアから連絡来たらすぐに教えてくれ。」
「はい。わかりました。」
「じゃあ、皆と合流するか。」
俺達は支度を済ませ皆が集まっている帝国の王の食卓へと向かった。
そして、食事を済ませスノーフリーデンに帰還する前、帝国の新王ラウドとエジル、ネモが固く握手をしていた。
なんでも同世代で話が合い友達になったんだとか。
本当に微笑ましい限りである。
別れの挨拶をして俺達はスノーフリーデンへ転移した。
「いや~。やっと着いたな。」
「そうだね。一時はどうなることかと思ったけどね。」
「ん?なんだアルト。
今回は葬儀とパーティーだけだったからそんなに難儀なことはなかったろ?」
俺の言葉に皆固まっていた。
「へ!?俺なんかしてしまいました?」
「な、なんかですって!?アンタ本当に覚えてないの!?本当にバカじゃないの!!」
リアは俺に吠えてくる。
「そんな事言われても覚えてないんだから仕方がないだろ。ないの、記憶が!」
「まさかの逆ギレ!?マジこんな奴が英雄とか笑っちゃうわ!!」
ちょっとリアさん...。
口が悪すぎやありませんか...?
「ま、まぁまぁ。リアも落ち着いて..。」
すかさずアルトがリアを宥める。
「まぁ、コウくん的には当たり前というか、いつも通りな感じだったよ...。」
なんで目を逸らす...。
「私が説明しますね。」
困ったときのヴォイス先生が説明してくれるようだ。
「マスターはあの公衆の面前でお酒に飲まれて裸踊りをして、
女性の貴族の方々にマスターのマスターを見せびらかし、
挙げ句の果てはそのマスターを握り、
「我が英雄のエクスかリバーを受けてみよぉぉ!!」
とご乱心していただけの事です。
マスター...。ご理解いただけました?」
「....え?う、うそ。嘘だよね?」
俺は皆を見たが誰一人目を合わせようとはしなかった。
俺の聖剣アスタとリスクでさえヴォイスの後ろに隠れ、汚いものを見るような目で睨んでいた。
「マスターのご乱心を止めたのはアルトです。睡眠魔法でマスターを眠らせて、
その隙にベッドまで運んだので一応被害は最小限に抑えられましたが...。」
だからか...。
帝国の人たちが帰りの俺に対してだけ物凄くアッサリしていたのは...。
「って最小限に抑えられてねーよ!
めっちゃくちゃ嫌われたじゃねーか!」
「自業自得でしょ!?」とリアが、
「私もそう思う...。」とラテも、
「まぁまぁ、コウくんだから...。
仕方がないっていうか...。」とアルトまで。
「僕はボロックのエクスかリバーの方が好きだよ!てへへ...。」と聖女にあるまじき発言のノエル。
「ノエル...。恥ずかしいので止めていただきたいのですが..。」と赤面するボロック。
って人が落ち込んでるときにイチャイチャするなよ。
「ぼ、僕は何も見てないですから...。ほ、本当ですよ。」と明らかに動揺するエジル。
「ま、まぁ、いいんじゃねーの?コウさんも大人だし...。」
とフォローしてくれてはいないネモ。
「お兄さん...不潔!」
「...なの!!」
とアスタとリスクまで言ってくる始末。
あぁ...。
俺の助けはヴォイスさんだけだ...。
俺はヴォイスを見ると、言葉にしなく口だけが動いていた。
読唇術で見てみると、
お、も、し、ろ、い。
「面白いってなんだぁぁ!ちくしょぉぉ!!」
膝から崩れかけた俺を見てヴォイスは腹を抱えて笑っていた。
スノーフリーデンでの一件は俺の気持ちを落とされ一件落着したのだった。
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