第136話、結局そんなもんだ。
帝国に着くと、帝国の国民全て喪服を来ていて悲しみに沈んでいた。
「まさか王様がなくなるとは...。何でも悪魔に体を乗っ取られてたという話だ。」
「だから急に軍備を強化したのか...。少し前の王様には考えられないもんな。」
「私は一人ぼっちになってしまったラウド王子が不憫で不憫で...。」
帝国の民の声が回りから聞こえてくる。
それは一国の王様が死んだのだから、当然だが...。
俺たちは国民をかき分けて城に向かう。
するとトカレフ将軍がわざわざ迎えに来てくれた。
「おぉー!コウ殿!お待ちしておりましたぞ!ささ、こちらに!」
「トカレフ将軍...。わざわざ悪いな...。」
「いえいえ。コウ殿達は帝国の救世主です。
そんなにかしこまらないで下さい。
ラウド王子がお待ちです。」
「ラウド王子は大丈夫か?その...落ち込んでいたりとか...。」
「シェイクナー王が亡くなって2日位は部屋に閉じ籠ったままだったんですけども、3日目に部屋から出てきて覚悟を持った顔で私たちに言いました。
この帝国をより良い国にするために力を貸してくれないか?と...。」
「ラウド王子は強いな...。俺だったら大切な人が亡くなったらそんなに心を強く持てないかもしれない...。」
「えぇ...。ラウド王子は本当に強い人だと思います。そんな王子をこれからも支えて行こうと思っています。」
「そうだな...。」
俺達はトカレフ将軍に付いていき玉座に通された。
「ラウド様。コウ殿一行を連れて参りました。」
玉座に座る少年は椅子から立ち上がりこちらを見ると片膝を着いた。
「コウ殿!そして皆様!
この度はこの帝国を救っていただいてありがとうございます。
この帝国の民の代表としてお礼を申し上げます。
そして、前王シェイクナーの葬儀に来ていただきありがとうございます。」
周りの帝国の官僚や騎士達が俺達に片膝を付いて頭を下げた。
「あぁ...、頭を上げてくれ。
結果的に救っただけで俺達は自国の友を助けるために戦っただけだ。
こんなに礼を言われるような事はしていないんだ。」
これは事実だ。
結果的には救ったってなってるけど実際は気にしていなかった。
「それでも、それでもコウ殿は救ってくれた。これは紛れもない事実です。
何か褒美になるようなものを渡したいのだが...。」
「それは俺達は貰えない。俺たちの望みはこれからも友好的な国の付き合いが出来る事を祈っている。」
「そうですか...。わかりました。
それでは葬儀と私が帝国の王になることを見守っていてはくれませんか?」
「あぁ。御安いご用さ。」
「ありがとうございます!!それではこれから父シェイクナーの葬儀を始める。
皆の者!準備してくれないか!?」
「「ハッ!!」」
俺達は客室に案内されて待機してしばらくいると葬儀の準備が出来たと兵士の連絡を受けて葬儀に向かった。
帝国内の王族専用のお墓で葬儀は行われ、帝国の城の前には国民達が手向けの花を一輪づつ、置いていきシェイクナー王とのお別れをしていった。
そして、葬儀は滞ることなく終了した。
そこからラウド王子と俺達一行はそのまま帝国の城の国民全体が見えるベランダに移動した。
「帝国の全ての民よ。聞いてくれ。」
声の拡張の魔道具でラウド王子が国民に話しかける。
国民達はラウド王子の言葉に静まり返り話を聞いた。
「帝国の民よ、私は亡き父シェイクナーに変わって王になる事をここに宣言する。
今は力も無き頼りないかもしれない。
それでも私はこの国を父の時よりもより良いもにしたいと考えている。
どうか私に力を貸してはくれないか?
そして、私を、帝国を支えてはくれないか?」
すると、帝国民から拍手が沸いた。
なりやむ事のないほどの拍手を新しい王ラウドに送られたのだ。
帝国民にとってラウドはとてつもない人気があったことを感じた。
「後、皆に紹介したい者がいる。
この帝国の危機を救ってくださった英雄。
レオンハート国のSランク冒険者コウ・タカサキ殿とそのパーティーだ。」
えっ!?
なんで急に俺達!?
紹介されるなんて聞いてないぞ...。
俺達はラウド王の隣に行き帝国民に向けて手を振った。
「パーティーの代表のコウ・タカサキ殿より一言もらおうと思う。」
ちょ、ちょっとまて...。
聞いてないって...。
こういうのは普通レオンハートの王子であるアルトかエジルがやるべきだろうよ...。
なんで俺が...。
そんな風に思っている俺をよそに、国民達は盛り上がっていた。
これは逃げれない状態だ。
俺は助けて欲しいとパーティーに目線を送るが誰一人目を合わせてはくれなかった。
くそ...。
この薄情者...。
俺は諦めて拡張の魔道具の前に立った。
「紹介に預かったコウ・タカサキだ。
英雄だなんて紹介されたがおれ自身はそうは思っていない...。
救いたかった命を救えなかったからだ。
本当に申し訳ないと思う。」
俺はラウドに一礼をした。
「しかし、新しく王になったラウド王は前を向いて進もうとしている。
俺はそれを全力で応援をしていこうと思う。
具体的にはレオンハート国と帝国の国同士の永久友好関係をここで結んでもらう。
幸いに俺のパーティーにはレオンハートの第三王子アルトと第四王子エジルがこの場にいる。」
アルトとエジルが一歩前に出てラウド王と握手をした。
「そして、互いの国で助け合い共に発展して行こうではないか!!
より良い明日を迎えるために!!」
俺は拳を高く上げた。
それに応えるように帝国民達の声援はこの日最大に大きくなった。
気持ちいい...。
この高揚感、まるでスターにでもなった気分だ。
(マスター。自分に酔っている所すいません。よく声援を聞いてください。面白いものが聞こえますよ。プププ。)
ん?
声援がどうしたって?
俺が聞く耳をたてると、
「ウオォォォー!!俺は猛烈に感動したぜ!!」
「わっかる!!俺、コウ殿に付いて行くぜ!!」
「コウ!!」「コウ殿!!」
声援が全て男だ...。
女性の声援は?
「ラウド様~!一生ついていきます!」
「アルト様~!素敵~!」「エジル様~!可愛い~!」
女性の声援は全て俺以外に向けられていた。
何でだぁぁぁ!?
俺は両ヒザから崩れ落ち床を叩いた。
その様子をヴォイスは腹を抱えて笑っていた。
俺なんて、俺なんて、
結局そんなもんだ...。
俺の頬に伝う滴は止まる事を知らず、さっきの高揚感と一緒に流れ落ちていった。
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