第135話、頭が下がるよヴォイスさん。



スノーフリーデンに帰ってきて数日がたった。

スノーフリーデンに居た帝国兵は無事に着いたみたいだ。

そして、その間にソーマがブレイブの聖剣の種子でみんなの聖剣が完成した。

リアは、小さい杖の聖杖。

ラテは、弓を扱うので聖弓。

ノエルは、回復と打撃に特化している聖棍。

そして、勇者の子孫ネモは長剣の聖剣を与えられた。

どれも聖剣の子供なので、もちろん人化も出来ないし意思の疎通は出来ない。

長年魔力を注ぎ込んで成長させないと行けないらしい。


そして、ノエルはボロックに告白をして無事にカップルが誕生した。

ノエルがボロックと付き合った事で聖騎士団員は精神的ショックで寝込む者も多かった。

文句も言いたそうな奴は沢山居たが、聖剣持ちのボロックを見てみんな何も言えなかったみたいだ。

聖女のファンは予想以上多かった。

スノーフリーデンの領民は祝福する者で溢れた。

めでたく俺のパーティーにノエルが加入したのだ。


しかし...。

しかしだ。

何か違うんじゃないかと俺は思っている。

全然納得してないよ。

出来るわけがない!!

なぜ俺以外はカップルなんだ!!

いや、確かに俺もミアっていう彼女はいるが...。

常に一緒にいるわけではないし、

ヴォイスは一緒に居てくれるけどそれは何か違うんじゃないか!?

不公平極まりない....。

こんなの不平等じゃないか!?


俺はここ数日そんな事ばっかり考えていた。



「あの...。マスター。くだらない事ばっかり考えてないで行きますよ。」


「行く...?行くってどこへ?」


「帝国に決まってるでしょーが!!

バカな事を考えすぎて脳みそまで腐ったんですか!?」


「そんなキツく言わなくても...。」


「マスターはこの位言わないとすぐにマイナスの妄想ばっかりするんですから、いいのです!!」

ヴォイスは口をぷくーっと膨らましながら言う。


「そうなんだけどさ...。」


「みんな待ってますよ!ホラ、行きましょう!」


「わかった...。」


俺はヴォイスに促されてパーティーメンバーが待つエジルの館の広場に行った。


「コウくん、やっと来たね!」

「遅いわよ!アンタ!!何していたの!?

どうせくだらない事でも考えていたんでしょ!?」


「そ、そんなことは...。」


リアの鋭い指摘に思わず動揺してしまった。


「コウくん。帝国にはエジルとネモも連れていっていいかな?」


「いいけど、どうして?」


「ラウド王子と歳もそう変わらないから仲良くなれると思うんだよね。そして、2人には帝国とレオンハート王国の橋渡しになって欲しいと思っているんだ。」


「エジルはそれでいいけど、ネモは勇者の子孫だろ?冒険とか憧れないのか?」


俺はネモに聞いてみた。

ネモは少しおどおどした感じで、


「お、俺はおとさんも今はスノーフリーデンで療養しているし、初めての友達もここに居るからしばらくはここに居たいと思っているんだ。」


エジルを見ながら嬉しそうに話す。


「そうか、ネモ。良かったな。」


「うん。」


俺達がここに来たときの反抗期の子供みたいな態度はどこへやら。

これが成長か...。

親になったらこんな気分に何回もなるんだろうな...。

そんな事を考えてると、ネモが不思議そうに話してきた。


「そういえば、コウさん。その格好でいいんですか?

今日は帝国の王様の葬式でしょ?」


「へ?」


「喪服で行くってコウさんが言ってましたよ。」


俺はみんなを見渡すと確かにみんな真っ黒な喪服姿だった。

「さては、コウさん...。忘れていました?

自分が言ったことなのに...。」


「わ、わかってたさ...。ちょっと考え事をしててさ...。」


「本当かな...?なら早く着替えてきてくださいよ。」


「あぁ...。ヴォイス。

って!!

いつの間に喪服に着替えているんだ!?」


「何の事でしょう?私は最初から喪服でしたよ。ウフフ。」


ヴォイスは笑いを堪えてピクピクしていた。


こ、コイツ絶対俺が忘れていたこと分かっていたな...。

忘れていた俺も悪いけど...。

ってか俺喪服なんて持っていないぞ...。

どうする?どうする?


俺が頭を悩ませていると、アスタとリスクが近づいてきて、


「お兄さん。喪服持ってきたよ。」

「...なの。」


「えっ!?」


「ヴォイス姉ちゃんに頼まれていたんだ。」

「...仕立て屋に取りに行ってきたの...。」


「あ、ありがとう。ヴォイスもありがとう。」


「いえいえ、私はマスターの事なら何でも知っていますから。」


「お、おう...。」


さっきは知らんぷりしてバカにしてたくせに、こういう所はしっかりしているんだから本当にヴォイスには頭が下がる。


俺は渡された喪服に着替えてみんなの元に行った。

「それじゃ行こうか。」


みんな頷き俺は転移の魔法を使い帝国に向かったのであった。



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