第127話、ゲームの結末。


ワイバーンを全て倒した俺は、地上に降りてヴォイス達が来るのを待った。


「来るまでもう少しかかるか...。

それじゃあ、解体作業でもして待ってるか。

それにしても量が多いな...。」


見るだけでも数百のワイバーンの死骸がある。

これをチマチマ解体してたら時間が掛かって仕方がない。


「解体で聖剣技なんか使ったら師匠怒るかな....?

優しい師匠だから怒らないよね...。きっと。」


俺は風魔法で剣を作り出し、

少し罪悪感を感じながらも時間も技を放った。


「聖剣技。[桜吹雪]。」


目にも止まらぬスピードと剣技で次々とワイバーンを骨と皮と身に解体していく。

最初は余裕で解体できていたが数が100体を越える辺りから段々とキツくなってきた。

聖剣技[桜吹雪]を長い時間発動したことがなかったからだ。


「まだまだ残っているのにきつくなってくるなんて...。俺もまだまだ修行が足りないな...。」


3、4メートルある巨体のワイバーンの皮を丁寧に剥ぎ、骨と肉の分断を超スピードで次々と行っているのだ。

自分にグラビティ×20の負荷を掛けながら。

疲れてくるのは当たり前である。


「はぁはぁ。後半分くらいか...。先は長いな...。ちょっと休憩っと。」


俺が額の汗を拭いて息を整えていると、ヴォイス達がやって来た。


「マスター。遅くなりすいません。」


「全然遅くないよ。むしろ早いくらいだって。

まだ俺の方は解体が半分くらい終わってないから。」


「こんなに綺麗に解体する必要はあるのですか?」


「あるんだな~。これが!

理由は後で説明するよ。

それより手伝ってくれないか?

流石にこの数を一人でやるのは時間が掛かりすぎてしまって、

アルトとのゲームに負けてしまう。」


「そうでしたね。ゲームの途中でした。

それではマスターにも[感覚共有]、[意思疏通]。

これでマスターのやりたいことが私達にも伝わるので作業がはかどると思います。」


「おぉ。これはスゴい。じゃあやるか。」

「はい。」「うん。」「なの。」


俺の解体の仕方がヴォイス達に伝わり、

あっという間全てのワイバーンの解体が終わった。

それにしても、アスタとリスクの腕が剣に形が変わったのには驚いた。

意思と感覚が共有されているために、

俺と全く同じように動けるのには驚愕させられた。


本人いわく魔力の減りが多いからあまりしたくないらしいが。

俺にとって新しい戦力なのは正直心強い。

もし俺に何か不足な事態が起きても戦えるのだから。


解体済みの全てのワイバーンを収納して俺たちはアルトの待つ場所に向かった。


「少し遅くなったな...。ちょっと飛ばすぞ。」


(マスター...。

ちょっとじゃなくて、全力で飛ばしてください。

遅刻はその時点で敗けですよ...。)


「は、はい!ぶっと飛ばします!」


俺は疲れた身体に鞭を打ち、全力で飛ばした。

そしてアルトの元に着く。


「コウくん。おかえり~。めちゃめちゃ汗かいてるけれど大丈夫?」


「ハァハァ...。だ、大丈夫だ...。

時間間に合ったか?」


「うん。時間ピッタシだよ。もう少しゆっくり来てくれれば僕の勝ちだったのに。」


「良かったぁ。ヴォイスの言う通りぶっ飛ばして正解だったな。」


「そうですね。私、失敗しないので。」


そのフレーズどこかで聞いたような...。


「コウくん。早速、帝国軍の待つ場所まで行こう。聖騎士団のみんなも炊き出しの準備終わってると思うから早く材料を届けないとだよ。」


「あ、あぁ。行こうか。」


俺たちが帝国軍の真ん中に着くと聖騎士団達の炊き出しの準備が終わってて後は材料待ちの状態だった。


そこに大きな布をひいて、俺たちの収納魔法から出す食材を帝国兵も聖騎士団も楽しみにしていた。


「僕から出すね。コウくん、驚かないでね!」

「あぁ。」


アルトから収納で出された魔物の肉は大なり小なりを含めて山のように高くそびえ立っていた。


「「オォォォォーーー!!」」


帝国兵も聖騎士団もそびえ立つ肉の山を見て声を上げた。

実際俺も余りの量に驚いた。

しかも、色んな種類の肉があるからバラエティー豊富だ。


「どう?僕も中々スゴいでしょ?」


「あぁ。正直驚いた。この数はスゴいな!

さすがアルト。」


「次はコウくんの番だよ。」


「あぁ。俺のは一種類だけだけど、量ならアルトに負けないぜ!」


俺も収納からワイバーンのお肉を出す。

そして、肉は山のようにそびえ立った。


「「オォォォォォー!!」」


2つの肉の山が積み上がって、帝国軍も聖騎士団もテンションが最高潮になった。


「量は互角か...。」


「うん。そうだね...。でも次は物資だよね!」


2つの肉の山は料理が出来る帝国兵と聖騎士団員に任して第2ラウンドとなった。


「次は俺から出そうかな。」


「うん。コウくんからお願い。」


「わかった。」


俺が出したのはワイバーンの皮と骨、それと伐採した木を加工したものだ。


「こ、これは?」


「これはこうやって使うんだ。」


俺はワイバーンの皮を広げて骨と木を組み合わせていく。

そして、出来上がったのは20人は寝れるであろう、ワイバーンのテントだ。

ワイバーン皮膚は寒さに強い。

防寒対策済みのテントの出来上がった。


「コウくんはやっぱりスゴいな...。敵わないや...。」


「そんなこと言うなよ。次はアルトの番だぞ。」


「この後で出すのは気が引けるんだけど、僕のはこれ。」


そう言ってアルトが収納から出したのは魔物の毛皮だった。しかも相当な量の。


「い、いや。アルト...。お前もスゴいよ...。

この量の魔物から毛皮を解体するのってめちゃめちゃ大変だっただろう?」


「いやいや、僕の場合は魔法だっtたからそんなには大変じゃなかったよ...。はぁ...。また負けたか...。」


アルトがひどく落ち込んでいる。

うーん。

俺が勝ったとは言えないよな...。

甲乙着けがたいとおもう...。


「....アルト。この勝負は引き分けだ。」

「えっ?」

「肉の量は互角だけど、俺のは1種類。それに対してアルトは数十種類の肉だろ。

それにテントは俺のアイデアなだけで、毛皮をこんなに綺麗に剥ぐなんて俺には出来ない。

よって引き分けでいいんじゃないか?


それに見てみろよ。

帝国兵達と聖騎士団達を楽しそうにしてるじゃないか。

俺たちが見たかったのはこういう光景じゃないのか?」


「そうだね...。やっぱりコウくんには敵わないよ。それでこそ僕の憧れ...。」


「ん?なんか言ったか?」


「別になにも言ってないよ!それじゃ引き分けって事でいいね。」


「おう!それでアルトは勝ったら俺に何をさせるつもりだったんだ?」


「別に...。恥ずかしいから言いたくないよ。

コウくんは僕に何をさせるつもりだったの?」


「俺も恥ずかしいから言いたくないな...。

ならせーので言うか?」


「コウくんも言うならいいよ...。」


「じゃあ、せーので言おうぜ。

せーの!」


「「ずっと俺の(僕の)友達で居てくれよ。(ください。)」」


俺たちは互いを見つめて....笑った。

気持ちは一緒だった。

俺は思った。このアルトが隣にいる限りどんな困難でも立ち向かえて行けると。

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