第121話、その涙、その想い俺が全て受け止める。
コウとの念話を切り、ヴォイスはラテの元に行った。
「ラテ。あの遠くに一人逃げている人、見えますか?」
「暗くてうっすらとしか見えないわ...。
まさか弓で狙えとか言わないよね!?
無理よ。遠すぎるもの。」
ラテは獣人とエルフのハーフ。
目も良く弓矢の腕も良いがその必ず当たる射程距離は2キロ程しかなかった。
そして、逃げているガブリエルとの距離はおよそ5キロ当てるのも難しい距離だ。
「大丈夫だから弓を構えて。」
「あの距離はいくらなんでも...。」
「大丈夫。私がサポートするから。」
ヴォイスにそう言われてラテは弓を構える。
「サポート魔法。[必中][パワー上昇][視野上昇]
そして、[マーキング]。
これで大丈夫。どう?見えるでしょ?」
「うん。ハッキリと見えるわ!これなら大丈夫!」
「お願い射って。」
「わかった。」
ラテは弓を力強く弾き、自分の得意の風魔法を付与させ放った。
放たれた弓矢はガブリエルに一直線に飛んでいった。
「ハァハァ...。なんで私がこんな目に...。
クソ...。」
フラフラになりながら走っているガブリエルは背後から気配を感じた。
振り返ると目の前には弓矢が、
「!?」
ガブリエルは反射的に避けた。
「避けられた!!ヴォイスどうしよう?」
「大丈夫。ちゃんと[必中]の魔法を掛けたから。避けても当たるの。ふふふっ。」
ヴォイスはニヤリと笑った。
寸前の所で避けたガブリエルは、
「危なかった...。クソ。一体どこから射ってきたの!?」
矢が飛んできた方を集中して見渡すが人が居る気配もない。...が、
「グハッ!!」
背中に激痛が走った。
ガブリエルが背中を見ると避けたハズの矢が刺さっていたのだ。
「ク、クソ...。追尾型の矢だと...。」
ガブリエルは矢を抜き、傷を癒す。
「もう魔力もないっていうのに...。クソが...。」
ガブリエルはヤケクソになって帝国に向かって走り出した。
「ヴォイス、当たったけど逃がしちゃって良かったの?」
「えぇ...。
マーキングの魔法を掛けたから大丈夫。
後は、マスターがなんとかするって言ってたわ。」
「そっか。なら良いんだけど。」
ラテは弓を見ながら、
(ソーマが作ったこの弓。すごい代物ね...。
いくらヴォイスのサポートがあったからってあの距離を飛ばすんだもの。
さすがは聖剣を作るほどの人...。
私もこれでアルトくんの力にもっとなれる。
ソーマには感謝しないと。)
そう思いながらラテはアルトの側へ向かった。
一方コウは、狂龍人化している帝国兵と戦っていた。
5人の帝国兵は次から次へと連続に攻撃をしかけている。
それを俺は全て避けていた。
スピードと連携は中々だな...。
(お兄さん。なんで攻撃しないんですか?)
(ずっと避けてばっかりなの...。)
それはだな...。
俺は迷っていた。
完全なる悪党ならば即斬るのだが、この帝国兵達は操られているだけだ。
罪も無い人間を斬るのはどうしても気が引ける。
その気持ちが剣を振るうことを鈍らせていたのだ。
アルトの解呪の魔法が来るまでは攻撃しないでおこうかなと...。
もしかしたら、元に戻る手がかりがあるのかもしれないし...。
[鑑定]のスキルでは元には戻れないと出ていたが、何かあるはずだ...。何か...。
(マスター。アルトの解呪の魔法の準備ができました。)
了解。頼む...。
(分かりました。)
すると、コロシアムの数倍はあるであろうこの戦場一帯が結界で覆われた。
アルトの
これでこの狂龍人化した帝国兵達に何か変化があるといいのだが...。
解呪魔法を受けた目の前の狂龍人化した帝国兵は苦しみだした...。そして、
「コ、ゴロシデ...。ゴロシテクダサイ....。」
喋りだしたのだ。
しかし、言葉とは裏腹に俺に向かって襲ってくる。
「カラダガ...、イウコトキカナイ...。タノム...。コロシテクレ....。」
「モウタタカイタクナイ...。オネガイシマス...。コロシテクダサイ...。」
襲いかかってくる狂龍人化している帝国兵達は全員涙を流しながら俺に訴えてくる。
クソが...。
何か手は無いのか...。
(お兄さん...。)
(いい考えがあるの...。でも...。)
リスク。そのいい考えを教えてくれ...。
(それは....。ゴニョゴニョ....。)
なるほどな...。成功確率は50パーセントってところか...。
(出来ることはした方がいいの...。)
そうだな...。
俺は覚悟を決めた。
(お兄さん。クラレお姉ちゃんに伝えたらすアルトと来るって。)
わかった。アスタ、リスク。ありがとう。
(お兄さんの為なら。)(なの...。)
俺は狂龍人化した帝国兵に、
「おい!!お前達のその涙、その悔しい想いは俺が全て受け止める。安心してくれ。」
「アリガトウ...。」「アリガトウゴザイマス...。」
俺は[瞬歩]で距離を取り、自分に掛けてたグラビティ×20を解いた。
そして、身体能力向上×20を掛けた。
「お前達に苦痛も一切感じないように本気を出す。
俺の最速の奥義で逝け。
桜吹雪。瞬影...。」
狂龍人化した帝国兵から見たら目の前の男が構えてた双剣をしまっただけに見えた。
その瞬間、視界がずれていった。
何が起きたか分からないまま、最後に見たのは首がない自分の身体だった。
そして、痛みもなく帝国兵達は意識を切らしたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます