第114話、反抗期は誰にでもあるもんだ。



「エジル、ネモ。ちゃんとやっているな。」


「コ、コウ...さん。はい...。言われた通りにしています。」

「.......。」


エジルはまだびびっているのか、俺を見てキョドってる。ネモはいじけている子供見たいにだんまりを決めていた。


「食料は後どのくらいある?足りそうか?」


「い、いや。全部だしても足りなさそうです...。これ以上は...。」


「そうか。ならしっかり言われたことをやってくれたご褒美に援助してやるよ。

今ワイバーンを大量に倒してきたからさ。」


「へ?」

「....嘘つけ!!そんな肉がどこにあるんだっていうんだよ!」


ネモは食い気味に反抗してくる。


「ネモ...。お前ちゃんと反省しているのか?」


「は、反省はしている...。だけど、実際どこにもねーじゃん。」


「反省しているならいいけど、あんまりそういう態度取ってるとまた泣かすぞ...。」


「う...。き、気を付ける...。」


「まぁ、いい。

とりあえず屋敷の料理人達を呼んでくれ。

このバカでかい庭にワイバーンを置くから。解体しないと領民に渡せないだろ?

後、エジルとネモも解体に付き合え。」


俺がそう言うと料理人達はすぐにやって来た。


「よし、ワイバーンを出すぞ。」


バカでかい庭にワイバーンの死体を次々と出していった。


「マジか..。こんなことって...。」

「うっ...。血なまぐさい...。」


「ほら!!エジル!ネモ!手が止まってる!!次々解体しないと間に合わないぞ!!」


「何で俺がこんな事を...。」

「うぅ...。」

2人は文句をいいながらも他の料理人たちと一緒に解体していった。


よし、ちゃんとやっているな。

俺ももう一働きしないと。

領民達が大勢集まる屋敷の前までいき、

声を増幅する魔法を使った。


「領民の皆様、私の名前はコウ・タカサキと言う。

只今、この街の領主エジル様自らワイバーンを解体して皆様にお肉を渡そうとしています。

今までの彼の行いを許せとは言いません。

...が、今は心を入れ替えて、この街の為、領民の皆様の為に人命を尽くそうとしています!

是非とも彼にもう一度チャンスを与えてはくれませんか!?」


領民達はザワザワしだした。


「そんなの信じられるか!?

今まで散々好き勝手やって来て、俺達がどんな思いで生きてきたか!!」


「そーだ!!そーだ!!」


「その怒りはごもっとも!

しかし、彼は今変わろうとしている。

そして、今この街の周りは帝国軍に囲まれている!

後3日もすれば攻めてくるであろう。」


「そ、そんな...。」


「だが、エジル様は先陣を切ってこの街を守る為に戦うとおっしゃられた!」


「どうせ尻尾巻いて逃げるさ!!

アイツはそういう奴だ!!」


「そーだ!そーだ!」


「そこで、もしこの街が帝国から救われたなら彼を許し、この街の領主として置かせてもらっては頂けないだろうか!?」


「そんな事がもし出来たならいいぜ!!

期待はしちゃいないがな...。」


よし。

ほとんどの領民がこの街を救うって事で納得してくれた。よかった...。


「これから、肉を配っていく。

みんなお腹一杯食べてくれ!!

これもエジル様のご配慮だ!!」


この街の人口1万人程ならワイバーン100体で十分食料は間に合うな...。

俺は演説を終わらせてエジル達の所に向かった。


「コ、コウさん!!なんであんなこと言ったんですか!?

僕が先陣なんて無理ですよ!!」


「あー。なんか勢いで言っちゃった。

悪かったよ。でも、ネモも居るし、聖騎士団員も居るし、大丈夫だろ。」


「コウさんは居ないんですか?」


「俺は帝国軍の親玉を倒しに行かなきゃだからここには居ないな...。倒したらすぐ戻ってくるよ。」


「そ、そんな無責任な...。」


「無責任って...お前なぁ...。

大体エジルがちゃんと領主として仕事を全うしていれば、

こんなことになってはいないんだからな。

身から出た錆びってヤツだよ...。

戦いの事は何とかなるから安心しろって。」


「コウさんがそう言うなら...。」


「ネモ。大丈夫だろ?」


「ま、まあな...。エジルは俺が守る!」


ネモは少しビビりながらも強がっているようだったが、この2人なら大丈夫だろう...。


その後、領民全てにお肉を渡し終えた。


「2人ともお疲れ様。そして、エジルの従者の皆様お疲れ様!!

これは俺からのおもてなしだ。」


エジル邸の庭に俺の収納魔法でテーブルとその上に豪華な料理を並べた物をだした。


「こ、これは一体...。」


呆気にとられるエジルとその従者。


「みんなが頑張ってる時に俺が作って用意したものだ。みんなお腹がすいただろう?

遠慮なく食べてくれ。」


俺がそう言うとみんなよっぽどお腹が空いてたのかすぐさま料理に飛びついた。


「な、なんだコレ...。旨い!!旨すぎるぅぅ!!」

「またまた...。パクっ。

............。

................。

うおぉぉぉぉ~!!何じゃコリャァァ!!

旨すぎるなんてレベルじゃないぞ!!

しかも一口食べると力が湧くような...。」


従者達は大喜びで食べてくれた。

力が湧くのはダンジョン塩を使ったせいだろう。

魔力を帯びている塩だからな...。

ふと横を見ると、エジルとネモは遠くで食べたそうにしていた。


「なんだ?2人とも食べないのか?」


「バ、バカを言うなよ...。王族と従者が同じ卓でご飯など食べていいわけが...。」


「おいおい。まだそんな事言ってるのか?

王族だろうが従者であろうが、同じ仕事を一緒にした仲間だろう?

共に食し、共に笑い、共に泣く。

そういう事の繰り返しで絆っていうものを作っていくんだ。

今さら王族とか従者とかで壁を作るのはやめろ。」


「そ、それは命令ですか....?」


「あぁ。命令だ。

一緒に食べていっぱい話をしてこい。

ただし、横暴な態度をとったら泣かす。」


「は、はい...。」


エジルとネモはトボトボと従者達が食べてるところに向かった。


「坊っちゃん!!この料理美味しいですよ!!」


「坊っちゃん!こちらの料理も食べてみてください!」

従者達はエジル達の元に料理を次々と持っていく。


「お、おい...。お前達。こんなに食べれないって...。」


「いいからいいから!ほら、一口。」


エジルとネモは目を一瞬合わせ同時に料理を一口食べた。


「う、旨い!!」

「あぁ!!なんだコレ!!旨いぞ!!」


「でしょ!?まだまだ沢山ありますからいっぱい食べてください。」


あれ?

従者のみんなが物凄く優しい気が...。


「みんなエジル様が優しい方っていうのを知ってたんですよ。」


従者の1人が俺に言う。


「じゃあ、俺が来たときにエジル達はあんな横暴な態度をとってたんだ?

お前達も見て見ぬフリだったし。」


「エジル坊っちゃんは寂しかったんだと思います。齢12歳でこの街の領主にさせられて親に捨てられたなんて嘆いてた時もありました。

そのころから少しづつ変わって行きまして...。

私たちにはどうすることも出来なかったんです。

そして、ネモ様が来てから明るくはなったんですが変わりに態度が横暴になって...。

それでも、あの頃の優しいエジル様に戻ってくれるって信じてました。


コウ様。

来ていただいてありがとうございます。

我々一同感謝しております。」


「ただの反抗期か...。

まあ、誰にでもあるしな。

これからもエジル達を支えてくれよ。」


「はい!」


エジル達を見ると従者達に囲まれて楽しそうにしていた。

そんな顔も出来るんじゃん...。

その笑顔があればこの街も変わって行けるさ。


俺はエジル達の楽しそうな様子に微笑んだ。

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