第110話、子供の戯言に付き合わされると疲れちゃうよね...。


教皇の事は気になるが、

とりあえずは大丈夫だとノエルがいうので、

俺は先にアルトの弟のエジルに会いに行くことにした。


エジルが住んでいるのはこの街に2番目に大きい建物だった。

大きな門の前にいる騎士に聖女ノエルからの手紙を渡す。


「確かに、聖女様の手紙だな。

ここでしばし待たれよ。」


騎士が屋敷に入っていく。

そして20分後、騎士が戻ってくる。


「領主様が会ってくれるそうだ。

私に付いてきてくれるか?」


「あぁ。」


アルトの弟エジル。

そして勇者の子孫。

どういう奴なんだろうか...?

俺は不安になりながらも騎士の後ろをついていった。

デカイ扉の前に着くと一緒に居た騎士が、


「領主様!お客様がお見えになりました。」


「わかった。入れ。」


扉が開かれ、俺は中に入る。

そこで目にしたものは美女を両脇に抱えている偉そうに座っている子供達くそガキらの姿だった。

今この街では大変な事が起きているのに何をしているんだコイツらは...。


「お前は剣舞祭で優勝した。コウ・タカサキだな。」


「こいつが剣舞祭で優勝した者か!?

なんだか田舎臭い奴だな。

こんな奴なら俺でも倒せそうだ!アハハハ!!」


「まぁ、そう言うな。ネモよ。

一応、剣舞祭で優勝した者だぞ。

いくら勇者の子孫のお前でもてこずるんじゃないか?」


「俺が?こんなヤツに?

ないないない!!万が一でも負けないわ!

負けたら裸で街中を歩いてやるよ!」


俺を目の前に2人は勝手なことを言ってくる。

こんなヤツらがアルトの弟と勇者の子孫?

笑わせてくれる...。

たいしたレベルもステータスないくせに...。


「お前がレオンハートの第四王子のエジルだな。」


「あぁ...。どこかのバカが王子に復帰したから第四王子になっちまった。全く...。

父上も兄上達も何を考えているのか...。

頭が痛い。

というか、貴様...。

何でこの私と同じ目線で話しているんだ?」


「エジル!お前舐められてるな~!傑作だよ!キャハハハ!」


「笑っているお前...。勇者の子孫なんだろ?

この街は今、帝国に囲まれて危機なのは知っているよな?」


「あぁ~?それがどうした!

そんなことは俺には関係ないな。

俺の役目はこの王子さまを守ることなんでね。」


「お前それでも勇者の子孫か...?

お前の聖剣...。泣いているぞ...。」


「聖剣が泣いている?

アハハ!!バカいってんじゃねーよ!

剣が喋る訳ねーだろうが!!」


ダメだコイツら...。

この街の癌にしかならない...。

どうしたものかな...?


(マスター。提案があります。

王家の証を見せて、王家の威厳を使ったらいいと思いますよ。)


えっ?

これってそんな効果があるの...?


(聞いてなかったんですか!?

この証は王様と同じ権限が与えられるんですよ!ちゃんと人の話は聞いてください!)


そんなに怒んなくても...。

まぁ、使えるものは使うか...。


俺は収納魔法から王家の証を取り出して、


「お前達...。

これがなんだかわかるか?」


「なんだそのショボいアクセサリーは!?

分かるわけねーだろ!!」


「ネモ...。少し黙れ...。

お前それどうした...?まさか奪ったのか?」


エジルは怯える様に聞いてくる。


「んな事するわけないだろ。

お前の兄貴...新王ウィリアムから預かったんだよ。なんかあったら使えって。」


「に、兄様が...。」


「エジル!どうしたんだ!?

あんなアクセサリーがどうしたって言うんだ!?」


「あ、あれは、王家の証。

王と同じ権限を与えられる。今のアイツはこのレオンハート国の王と立場は一緒なんだ...。」


「だからどうした!!

あんなもん奪ってお前が使えばいいだろうが!!」


「し、しかし...。」


冷や汗をかいて明らかに動揺しているエジルとは反対に、ネモは動揺しているエジルを見てキレた。


「ダァァー!うじうじしやがって!

何ヒヨッてやがんだぁ!?

お前が奪わないんだったら俺が奪ってやるよ!!

お前はそこで見ていろ!?」


「ネ、ネモ...。」


勇者の子孫であるネモは、

席を立ち身体ににつかわぬ大剣を持ってこちらに歩いてくる。


「なぁ、コウ・タカサキだっけ?

お前が持っているそのアクセサリーくれよ。」


「お前バカだろ?

何でお前みたいな奴に大事なアクセサリーをやらなきゃいけないだ?

勇者の子孫かなんだかわかんないけど、

あんまり調子こいてると泣かすぞ。くそガキ。」


「き、貴様...。

下手に出てれば調子に乗りやがって...。

殺してやる...。」


ネモは殺気を全開出して俺を睨んでいる。

睨まれても全く怖くはないんだが...。

一応、鑑定するか...。


ネモ・アルテシアス(12才)LV40


職業・勇者


・HP4000・MP2000


ユニークスキル

・「英雄の一撃」・「ペテンの戯言」

スキル

・上級剣術・大剣術

魔法

上級回復ハイリペア



俺に比べてLVもステータスも段違いに低い...。

それにしても面白いユニークスキルがあるな...。


[英雄の一撃]

・自分自身のHPが30%を切ると発動する一撃必殺の太刀。攻撃力は普段の10倍。


[ペテンの戯言]

・自分自身が話したあり得ない出来事を、相手が何も疑うことなく信じるスキル。

ただし、自分よりLVが高い者には効かない。


是非ともこの二つのユニークスキルを、

俺の[ミヨウミマネ]で頂こう...。


「ほら、かかってこい。

ネモ・アルテシアス。遊んでやるよ。」


「グヌヌ...。お前死んだぞ...。

いいんだな!?俺は勇者の子孫だぞ!?

強いんだぞ!?本当にいいんだな!?」


ん...?

ネモの様子が何かおかしいんだが...。

全然来ないし...。


(マスター...。不本意かも知れませんが、ネモのユニークスキル[ペテンの戯言]がステータスに追加されました...。)


....マジで?


(マジです...。)


なんじゃそりゃ...。

まさかアイツ、そのスキルだけでここまで来たんじゃなかろうか...。


そう考えると一気に気が抜けたコウであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る