第109話、類は友を呼ぶ。
俺はクラリスに連れていかれ、神殿の一室にたどり着いた。
コンコン。
「はい。」
「コウ殿をお連れした。ノエル入ってもいいか?」
「どうぞ。お入りください。」
部屋に入ると神々しい女性が待っていた。
「お姉様。扉をお閉めください。」
クラリスが扉を閉めると、ノエルは魔法を詠唱し始めた。
「.....。
部屋中一体に薄い膜状の物が広がった。
「これで大丈夫...。
あぁー!!もう疲れたぁぁ!
お姉ちゃんいつまでこんな生活しなきゃ行けないの!?
もう我慢できないんだけど!!」
ドガッとソファーに寝っ転がって駄々をこね始めた。
「お、おい!ノエル...。
コウ殿もいる前ではしたない.ぞ..。」
「お姉ちゃんは真面目すぎるよ。
コウ君は大丈夫だって!ミアが言ってたもん!」
「ははは...。」
俺は愛想笑いしか出ない。
さっきの神々しさは何だったのか...?
聖女とは一体...。
さすがはミアの親友だ。
類は友を呼ぶとは良く言ったもんだ。
「ノエル様。初めまして。コウ・タカサキです。」
「よろしく~!ところで、その固っ苦しい呼び方やめてくれない?
今はここには3人しか居ないし、
魔法を掛けたから外には聞かれることないんだから、普通にノエルって呼んで。」
「あ、あぁ。わかった。」
「そういえば、コウ。ヴォイスちゃんとアスタちゃん、リスクちゃんはどうしたの?」
「え?ここに居るけど...。」
「マジで!?会わせて!!」
「あぁ...。みんな人化して出ておいで。」
俺はみんなを解放してノエルとクラリスの前に出した。
「な、なんと...。」
クラリスは驚いて口が開きっぱなしだ。
「わぁ~!可愛い!!
君たちがアスタちゃんとリスクちゃん?」
ノエルは目をキラキラさせながら話す。
「はい。そうです。それにしても、お姉ちゃんテンション高いね~。」
「...なの。」
それに対してアスタとリスクは怖がっているのかテンション低めだ...。
「い~な~!!私もこんな可愛い妹が欲しかった!!
両親がもっと頑張ってくれれば出来たかもしれないのに...。」
聖女とはほど遠い言動だな...。
「ノエル...。仮にも聖女なんだから発言には注意を...。」
「あぁーー!!聞きたくない!!
お姉ちゃんはいっつもそう!!
そんなんだと彼氏にも捨てられるよ!1」
「な!?今あの人は関係ないだろう!!
それに私は捨てられたりしない!
ちゃんと愛し愛されているからな!!」
「はいはい。ノロケご馳走さまです。
早く結婚してください。そうすれば肩の荷が下りるのに。」
「誰のせいで結婚できないと思ってるんだ...。」
「結婚できないのは、私のせいだと言いたいの!?」
「そうじゃない!そうじゃないが、ノエルの事が心配なのだ...。たった一人の妹だから。」
おいおい...。お2人とも...。
俺達がいること忘れてないか?
「クラリス様、ノエル様。落ち着いてください。
私たちはミア様から頼まれてこちらに来たのです。話を聞かせて頂きたいのですが...。」
ヴォイスが間に入って本来の話に戻す。
「貴方がヴォイス?
ミアにそっくりじゃん!!
雰囲気と髪の色は違うけど見た目はまんまね!」
「はい。ミア様とマスターによって作られましたから...。
それでどういう助けて欲しいというのは...。」
「なるほどね!魔法でそんな事もできるんだ~!今度ミアに教わって作ろうかな~?」
「あ、あの...。話を...。」
「ミアのいる場所遠いんだよな...。
どうやって行こうかな...。」
あ...。
これは...。
「話を聞けぇぇい!!」
やっぱりキレた。
俺に子供って言うけどヴォイス結構子供っぽいとこあるよな... 。
「ノエル様を助けて欲しいってミア様に頼まれたから急いできたのに何なんですか!?
そもそも、助けなんかいるんですか!?
結界があるから帝国軍からの攻撃は来ないし、私たちが来るほどの事ではないんじゃないんですか!?」
「おぉ~!ヴォイスちゃん、めっちゃ早口!
よく噛まずに言えたね!」
「茶化さないでください!!」
「ごめん、ごめん。そんなに怒らないで。
そうだね...。
ちょっと真面目な話、この街を救って欲しい。」
「そのつもりで俺たちはここに来たんだ...。
それで俺たちは何をしたらいい?」
「コウ達にやって欲しい事は。主に3つ。
この神殿の教皇の始末。
この街の領主の制裁。
そして帝国軍を撤退させる事。」
「ちょ、ちょっと待て。
それって全てじゃないか?」
「そうだけど?なに?」
「なにって...。俺たちの負担がめっちゃデカイ気がするんだが....。」
「大丈夫だって!
ミアもコウに任せておけば大丈夫って言ってたし!」
「な!?」
ミア...。
さすがに出来るか自信がないよ...。
「策はあるから安心してくれよ!」
「本当かよ...。」
「問題の一つ目は、教皇だけど。
少し前から様子がおかしくて鑑定で見たら状態異常で[洗脳]ってなってたんだ。
そこで聖魔術で[洗脳]を解いたら、
今度は[心酔]って状態異常が表示されたんだ。」
「[心酔]...。それは何に?」
「そこが分からないんだ...。
でもその状態異常になった直後に帝国が攻めてくるようになった。
ということは、帝国側に[心酔]しているのだと想定できる。
が、そんな魔術師が帝国には居なかったハズ...。」
「帝国も何かに操られている可能性があるってことか...。」
「マスター。ひょっとして...。」
「あぁ...。俺も同じこと考えていた...。
ノエル、続けてくれ。」
「あ、あぁ。
2つ目は領主エジル・フォン・レオンハートの制裁をお願いしたい。」
「エジルを?理由はなんだ?」
「エジルは王族であり、領主の立場を利用してこの私に求婚してくるのだ。」
「断ればいいんじゃないのか...?」
「それが出来たら苦労はしない。
私はあのモヤシ王子が大嫌いなのだ...。
クネクネ私にすり寄ってきて愛をささやいてきて...。
オェェェェーー!!
思い出すだけでも吐き気がするほど気持ち悪い...。」
吐き気って...。
ちょっとなんか出ましたけど...。
「だから制裁を頼みたい!
聞くところによるとコウのパーティーには第三王子がいるじゃないか!?
なんとか頼んでくれないか?」
「それは良いけども...。
そんな理由で制裁って...。」
「理由なら他にもある。
ヤツは勇者の子孫と名乗る輩と結託して好き放題しているのだ...。
そのお陰でこの街の民に食料が充分に与えられずにいる。」
「それは、一大事だな...。わかった。ノエルとの話が終わったら早速エジルのもとに行こうと思う。」
「よろしく頼む。
そして最後は帝国軍を撤退させる事だ。」
「そこが一番の肝だな...。」
「帝国軍の攻撃を何度も防いでいるのだが、この結界も持って後3日だろう。
私の魔力が尽きればその時点このスノーフリーデンは終わる。
それゆえ私はこの神殿から外には出れない。
なんとかお願いできないものか?」
「あぁ。何とかしてみる。」
「ありがとう。
ってかよかったぁ~!!
断られたらどうしようかと思ったぁ!!
さすがはミアの彼氏だね!!」
「話し方が変わっているんだが...。」
「それはそうでしょう!?
大変な頼みごとをするのに、軽いノリみたいな感じだと聞いてくれないじゃん。
私だってさすがにそこら辺の分別はついてますよーだ!!」
「そ、そっか...。」
なんか騙された感はあるが、さっきの真剣な顔は本当に困っているのだろう。
困っていることを表に出さないところもミアに似ているな...。
類は友を呼ぶ...か。
よし。
ミアの親友の為に俺は動き出したのだった。
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