第108話、俺のおっちょこちょいが過ぎるんだが。
「コウ殿、行くぞぉぉ!!」
「あぁ。来い。」
クラリスがダッシュで近づいてくる。
重そうな鎧を装備しているわりに速い...。
「たぁぁ!!」
カァンン!!
上段からの袈裟斬りを俺は剣で受け止めた。
LV90で筋力MAXなだけはある。
さらに、クラリスは追撃で木剣を振るってくる。
性格にクラリスの剣技がにじみ出ているのか、真っ直ぐな剣筋で非常に読みやすい。
俺はクラリスの剣を、右に左に小さく動き避けていく。
「何故だ!?何故当たらん!?」
「何度やっても、当たらないよ。
クラリス...。君の剣は真っ直ぐすぎる。
モンスター相手ならいいけど、人間相手じゃ読まれてやられるぞ。
もっと考えて打ち込んでこい!」
「クッ!!偉そうに...。」
年下に教わるのはよっぽど嫌なのかな?
そんな偉そうに言ってないけど...。
(マスターがそう思っているだけで、結構偉そうですよ。)
そうかな?
まぁ、何思われても別にいいけど...。
俺に言われた事がよっぽど嫌だったらしく、
クラリスの剣は激しくなってきた。
剣筋のキレは増しスピードも上がったのだが、その分攻撃が単調になっていった。
これじゃダメだな...。
そもそも、こんな重い鎧を装備して動くことが間違っている。
前線で仲間を守るタンク役ならいいが、この性格、剣筋から見るとアタッカーだろ。
もっと装備を軽装にすれば、俺とももう少し面白い手合わせになったのに...。
「ハァハァ!チクショォォ!!
こうなったら手合わせなんてもう知らん!」
息が上がっている。相当疲労がたまっているのだろう...。
しかし、ヤケになったクラリスはスキルを発動した。
クラリスの所持しているスキルは[一刀両断]と[聖魔斬]。
この場面なら、十中八九[一刀両断]だろう。
聖魔斬はアンデット系や闇系のモンスターに有効で俺には有効ではないからだ。
どのくらいの威力か受けてみるか...。
「くらえぇぇ!![一刀両断]!!」
目に見える程の
ちょっと待て...。
この技を受けて俺の木剣が折られたら、俺が負けたことになったりしないか?
それは嫌だな...。
なら俺もスキルを使わせてもらおうか...。
剛の剣を制するのは、
剛の剣のさらに上の剛の剣か、
柔の剣って事を教えてやらねば。
木剣が折れないように今回は柔の剣だな...。
「剣聖、第二の奥義....
2人の木剣がぶつかった瞬間。
俺は[一刀両断]の力を木剣で受け流す。
その受け流した反動の力を使って回転をし、
そしてそのままクラリスの鎧に叩きつけた。
「きゃぁぁーー!!」
ドゴォーン!!
クラリスはぶっ飛んでいき壁まで壊した。
へっ!?
あれ!?何これ!?
力をだいぶ押さえたハズなのに...。
(まさか...。マスター...。
グラビティの魔法を掛けっぱなしだったんじゃないですか...?)
そうだった...。
牢屋に入れられた時、あまりにも暇すぎて訓練でグラビティ×20をかけたんだった...。
(木剣の重さも20倍になっているんですよ...。クラリスは死んだかも知れませんね...。)
マズイ...。
それは非常にマズイ...。
どうする...?いっそのこと逃げるか...?
(バカ言わないで、ちゃんと様子を見に行ってください!!)
俺は恐る恐るクラリスに近づいた。
「...うぅ。」
良かった!息がある!!
俺はすぐさまクラリスに回復魔法をかけた。
「...はっ!?ここは...。私は吹き飛ばされて...。」
「すまない...。派手にぶっ飛ばしてしまった...。」
「....いえ。私は負けてしまったのですね。
コウ殿。手合わせして頂いてありがとうございます。」
「お礼なんて言わないでください。」
俺の手違いで殺しちゃうところだったのに、お礼なんかを言われたら心苦しい...。
「私の敗因はなんだったのでしょう...?
もしだったら教えて頂けませんか?」
「クラリスさんの敗因は...。」
「ってちょっと待ってください!
なんでコウ殿が敬語なんですか?
それにさん付けって...。なんか気持ち悪いので普通に喋ってください。」
俺なりに気を使ったんだけど...。
気持ち悪いって...。酷くない!?
(それはしょうがないですよ...。
さんざん偉そうに喋ってたのに急に敬語ですからね...。気持ち悪がられても...ねぇ...。)
(お兄さん、可哀想...。)
(...なの。)
みんな...。
俺を可哀想な人を見るような発言はやめてくれ。
泣いちゃうよ...。
「コウ殿...?大丈夫か?」
「あ、あぁ。それで、なんだっけ...?
敗因だったか...?」
「はい。」
「大きな敗因は2つ。1つ目は、装備だな。」
「装備ですか...?」
「あぁ。クラリスはスキルから見てアタッカーだろう?
なのにそんな重い装備をしているから本来のスピードが出ていない事。」
「そ、そんな...。」
「2つ目は、
クラリスの剣が真っ直ぐすぎる事。
モンスターが相手なら充分戦えるが、人間相手だと読み易い...。
もっと狡猾に2手3手考えながら戦わないと、勝てる相手にも勝てないかな。」
「そうですか...。」
「でも流石だよ!
俺とステータス倍以上違うのに、あそこまで戦えているんだから。」
「ば、倍以上違うんですか...?」
「大体な。俺のステータスは...。」
コウ・タカサキ(15)LV120
・HP20000・MP28000
ユニークスキル
・[ミヨウミマネ]・[英知の書]・[王の威圧]
スキル
・上級剣術・双剣術・剣聖術・new聖剣術
・全属性魔法
技
・瞬歩・一閃・一閃乱舞etc..。
奥義
・1、雪月花・2、流受閃・3、桜吹雪etc...
...........
...........
...........技や魔法が多すぎてクラリスはもう聞いていない。
「まぁ、こんな感じだ。」
「どんな感じですか!?
情報量多すぎて全く理解が追い付きません!
...が、負けたのも納得できました。
手合わせして頂いてありがとうございます。」
「お、おう。
ところで、聖女様に会いたいんだが...。」
「そうだったな...。ノエルは上の階にいる。
コウ殿が来るのを待っていた。
私は知らなかったが...。
最初にちゃんと知らせてくれればコウ殿を牢屋に入れなくても良かったのに...。」
「聖女様を名前で呼んでいるけど怒られたりしないのか?」
「ん?何で怒られるんだ?妹の名前を言ったくらいで。」
「え!?聖女様は騎士団長様の妹なの?」
「あぁ。コウ殿は知らなかったのか?」
「知らないよ!ただ俺はミアに親友のノエルを助けて欲しいって...。
あっ....。
そのとき確か、アイリーンって言ってたな...。
彼女の親友の姉だと知らずに申し訳ない...。」
「ははは!コウ殿はおっちょこちょいだな!
まぁ過ぎたことは気にするな!」
俺はクラリスが器のデカイ人で本当に良かったと心から思った。
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