第107話、勘違いは誰にでもある。
牢屋に入れられて早2時間。
「おーい。俺はいつまでここに居ればいいんだ。」
「うるさいぞ。この後、騎士団長が取り調べに来る。
全く...。このクソ忙しいときに..。」
「君も忙しいかもしれないけど、
俺もやらなきゃいけない事があるから忙しいんだよ...。」
「そんなの知るか!
なんで俺がお前なんかの見張りしなきゃいけないんだ...。
みんなは戦う準備してるのに...。」
「戦う?街の外にいる帝国軍と?」
「他に誰がいるって言うんだ。
ったく、外から来たんだからわかるだろ...。
もう街全体の食料に底がつく。
この街はもう限界は近い...。」
「おいおい!深刻な事態になってるじゃん!
こんな事をしている場合じゃないじゃん!」
「そうだよ!
誰のせいで、俺が見張りになっていると思うんだ...。」
「ん?誰のせいだ?」
「お前だよ!!
ったく、早く団長来ないかな...。」
見張りの騎士と話しているとドタドタと足音が聞こえてきた。
「コウ殿ォォ!コウ殿は居るかぁぁ!?」
この声はさっき全く話を聞いてくれなかった騎士だな。
ってか、俺の名前どこで知ったんだ?
「おっ!やっと来た。騎士団長!こっちです!!」
さっきの話を聞かなかったヤツ。
騎士団長だったんかい!?
あんなのでよく騎士団長なんか務まるな...。
「そっちか!?」
ドタドタとうるさい足音で歩く騎士団長が俺の目の前で立ち止まった。
そして、頭を下げた。
「コウ殿!すまなかった!」
おっ?
やっと勘違いだったとわかったか...。
う~ん。
すぐ許すのもちょっと癪だな...。
どうしてやろうかな...?
(またそんな事を言って...。
マスターは本当に子供ですね...。)
いいんだよ...。
こういうヤツは一度ガツンと言わないと分からないんものなんだから...。
「いやぁ。困るんだよね。
人の話を全然聞かず、勝手に牢屋に入れるとか。」
「すいません。本当にすいません。」
騎士団長は何度も頭を下げる。
「大体。僕がここに何しに来たかわかります?」
「...はい。助けに来てくれたんですよね?」
「そうなんですよぉ~。それに知ってました?僕がSランク冒険者だって。」
「...知ってます。い、いやさっき知りました。」
「その僕の話も聞かずに牢屋行きってどうなってるんでしょうかねぇ~!?」
「....すいません。」
「そんなんで騎士団長なんて務まるんですかね~?
ん~?
反論があるなら言ってみたまえ。
大体、謝罪なのにそんなフルフェイスの仮面被って謝罪になるんですかねぇ~。
どういう教育を受けたらそうなるんですかね~。」
「お、おい...お前。それ以上は止めた方が...。」
騎士の言葉を遮るように騎士団長はフルフェイスの仮面を脱いだ。
サラサラとキレイな髪に整った顔。
「お、お前。お、女だったのか...。」
女性だとわからずにズケズケ言ってしまって、罪悪感が半端ない...。
騎士団長は頭を下げる。
「すまなかった...。これで満足か...?」
睨みながら言われたら怖いよ...。
完全に敵意むき出しじゃん...。
(そうさせたのはマスターですけどね...。
あんな嫌な上司みたいに言われたら誰でも怒ると思いますよ。)
そうは言ってもこの可愛い口が止まらなかったんだもん...。
(はぁ~。口は災いの元ですね。
気を付けてください。)
正論すぎてヴォイスに何も言えなかった。
「あ、あのもう顔をあげてくれ。
俺の方こそ言い過ぎてしまって、すまなかった...。」
ってなんで俺が謝ってるの...?
立場逆転じゃん...。
騎士団長は真っ直ぐ俺を見てきた。
「コウ殿...。
聖女様に会わせる前に手合わせをお願いしたい。」
「な!?なんで?」
「あそこまで言われて大人しく出来るほど、
私は人間が出来てはいない...。」
あ。これはヤバイ流れだ...。
完全にキレてる顔だし...。
「大体....。
騎士団長が私に務まらない...?
ふざけるな!!
成人したてのガキが...。
よもや断ったりはしないだろう?
Sランクの冒険者コウ・タカサキ!!」
やっぱりそうなりますよね...。
(マスター。
これは身から出た錆びなので、
彼女と手合わせをして錆を落としてもらったらいいと思いますよ。災いという錆を...。)
上手いこと言わなくていいって...。
女性と戦うの気が引けるんだよな...。
(それは、彼女が可愛いからですか?)
そう...。
って、ち、違うわっ!?
(動揺しましたね...。下心アリと...。
ミア様に報告します。)
勘弁してくださぁい...。
「どうしたぁぁ!?
コウ・タカサキィ!!」
騎士団長は声を上げ俺を睨む。
「わかった。わかりました...。
やればいいんでしょ...。やれば...。」
「よぉし!コウ・タカサキ!!
私に付いてこい!!」
俺は牢屋から出て騎士団長に付いていく。
その際に、他の騎士から聖剣を返された。
アスタ...。リスク...。
離してごめんな...。
(大丈夫!丁寧に扱ってくれたし...。
でも、出来ればもうお兄さんの側から離れたくないかな...。)
(....私もなの。)
...うん。ごめん。
もう離さないから...。
俺は抱きしめるように聖剣を抱えた。
しばらく歩くと修練場についた。
「コウ・タカサキ。
流石に、普通の剣だと貴殿を殺してしまうかも知れないから木剣でいいか?」
「俺はなんでもいい...。
ちょっと聞き捨てならないんだが...。
誰が俺を殺すって...?お前のその実力で笑わせる。」
「な!?
貴殿は私の実力を知らないだろう!?」
この騎士団長は鑑定って知らないのかな?
脳筋っぽいもんな...。
ちなみに騎士団長の鑑定結果が、
クラリス・アイリーン(22)LV90
職業・聖騎士
HP9200・MP4500
ユニークスキル
・[統率者]
スキル
・聖剣技・上級剣技・気品
パッシブスキル
・筋力MAX
技
・一刀両断・聖魔斬
魔法
・
・
「鑑定で
クラリス・アイリーン。」
「な!?わ、私の名前を...。
教えてないのに...。それに視たって一体何を...?
ま、まさか。ひ、卑猥な...。」
「いやいや!!全然、卑猥なことじゃないから!?
それに俺が見たのはアナタのステータス!
戦うのに情報は必要じゃん!!」
「ふん!!
ステータス?情報?
そんなものは私には必要ない。
全て叩き斬ればいいのだからな。」
技も[一刀両断]と[聖魔斬]しか無いのも頷ける。
「このまま話してても埒が明かない。木剣を受けとれ。貴殿の実力は剣が語ってくれる。」
クラリスは俺に木剣を投げてくる。
俺は木剣を受け取り構えた。
「騎士団長クラリス殿。どこからでもかかってくるといい...。稽古をつけてやる。」
「くっ...。どこまでも舐めた事を言う。
覚悟しろ!コウ・タカサキ!」
俺とクラリスの手合わせ?が始まった。
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