第106話、領主だからって大きな建物に住んでるとは限らない。
王都から3時間。
いまだに空を飛び続けていた。
「なんか寒くなってきたな...。」
(スノーフリーデンに近づいてる証拠ですね。向こうでは雪が降っているらしいですよ。)
おいおいおい....。
凍えちゃうって...。
たどり着くまでに死んじゃうって....。
何で教えてくれなかったんだよ...。
(忘れてました...。すいません。)
忘れてたのはしょうがないか...。
どうしたものか...。
俺は考えた。
火で温めた風を送る、
まるでエアコンの暖房の温風を身体に包むのようなイメージ...。
多分、[英知の書]があるから出来るような気がする。
「
俺にはネーミングセンスがなく安直な名前だが、ちゃんと発動した。
温風が俺の身体を包む。
「おぉ~。コレは便利だな。」
(マスターはもう、何でもアリですね...。)
俺も本当にそう思う...。
快適になった俺はさらに飛ばした。
(マスター。街とその周りに沢山の反応があります。)
あぁ...。
嫌な気配がするな...。
街が見えてきた。
結界が街全体に張られている。
帝国軍はその結界を壊せずに攻めあぐねていた。
それにしても帝国軍の数多いな...。
どうしたものか...。
俺が考えていると、
(あの...お兄さん。)
どうした?アスタ。
(僕たちと同じ気配が街からするよ...。
この気配はどっちかの叔父さんなんだけど、どっちか分からない...。)
(あの叔父さん達、気配が似てるの。)
叔父さん...?
聖剣か!!
聖剣はたしか、後2本。
1本は師匠が持ってるけど...。
師匠の気配はしないしな..。
師匠だったら、帝国軍に襲われているスノーフリーデンのこの状況を打破してると思うし...。
って事は、勇者が持っている聖剣ブレイブか...。
(ブレイブ叔父さんかぁ...。僕苦手なんだよな...。)
(なの...。)
なんで苦手なんだ?
(寡黙でちっとも喋らないし、表情が変わらないからちょっと怖いんだよ...。)
(なの...。)
そっか...。
まあ、好き嫌いは色々あるよな...。
それにしても勇者が居るならこの状況どうにかすればいいのに...。
どうなってんだ?
俺は首をかしげながら街の上空まできた。
この結界は聖属性か...。
(そうですね。
マスターは聖属性の魔法を覚えているので、
結界と同じ魔力を流せば通れると思います。)
了解!
ってか俺が出来るなら、帝国軍も出来るんじゃないの?
(マスター。
高位の聖属性はよっぽどスキルと職業に恵まれてないと使えないんですよ。
マスターとアルトは特別ですね。)
そうなんだ。
俺は[ミヨウミマネ]があるから出来るけど、アルトは本当にすごいな...。
(そうですね。
あれほど才に恵まれている人物は居ないと思いますよ。
そんな人と親友になっているマスターはもっとすごいですけど。)
褒めないでくれよ...。
照れるじゃん...。
俺は上機嫌で結界を聖属性の魔力で一部中和して結界内に入った。
とりあえず、アルトの弟のエジルを探すか...。
領主だから一番でかい建物に住んでいるだろう...。
お、あのお城がそうかな...?
行ってみるか。
俺は空を飛びながら一番でかい建物を目指した。
その頃、
「姉様...。侵入者です!私の結界を通って来ました。」
「何っ!?ソイツはどこに向かっている!?」
「....真っ直ぐこっちに向かっています。
姉様、逃げてください...。
私の魔力を凌ぐものなど相手にしたら姉様が死んでしまいます。」
「バカを言うな!!私は騎士だ!
守るものを捨てて逃げるなど、万死に値する。それにこの街は帝国に包囲されている。
今さら逃げても変わらん!なら戦うのみ!」
「姉様...。
私は姉様にはただ幸せに生きてもらいたいのです。戦わずとも誓いあった彼と共に生き延びることも...。」
「くどい!!
私は決めたのだ!たった一人の妹を守ると!
彼も納得している...。」
「...姉様。」
「皆の者!侵入者がこちらに向かっている。
迎え撃つぞ!」
「「御意!!」」
姉様と呼ばれる者は騎士団を引き連れ、神殿の入り口に向かったのだった。
「あぁ...。姉様...。
神よ。どうか姉様を救いたまえ。」
残った妹は祈りを捧げる事しかできなかった。
本当にでかい建物だな...。
(マスター。ここは神殿みたいですね。)
神殿?領主の城じゃないのか...。
とりあえず話を聞くか。
神殿なら聖女がいるかもしれないしな。
俺は神殿の目の前に降りて中に入ろうとする。
しかし、複数の殺気を感じ距離をとった。
入り口の扉が開き、
神殿の中から大勢の騎士達が現れた。
重々しい空気が流れる中、一人の騎士が俺の前に出てきた。
「侵入者め!!何が目的だ!」
え?侵入者?何この状況...。
俺は後ろを振り返るが、誰も居ない。
確実に俺に言ってるよな...。
「あ、あの話をしたいのですが...。」
「侵入者と話すことなど無い!」
「いや...。だから、少し聞いて欲しいんだけど...。」
「我々は悪党の話など聞かん!!」
「だから...。」
「聞かん!!!!!」
なんなんだコイツは...。
全く聞く耳をもってくれない。
こういう場合どうしたらいいのかな?
教えて、ヴォイエモォン!!
(その呼び方やめい!!
誰が青くて真ん丸の猫型ロボットですか!?)
頼むよ。
あの人、話全然聞いてくれないんだ。
なんか道具出してくれよ。
(しょうがないな、のびコウ君は...。
テレテテン♪ってあるかぁぁ!!
いい加減にしろ!!)
なんだよ。
ヴォイスもノリノリだったクセに...。
冗談はさておきどうしたものか...。
(こういう時にウィリアム王から預かった王家の証を見せればいいんじゃないですか?)
それだ!!
さすがヴォイス!頼りになるな!
(それほどでもあります。
ですが、次にヴォイエモンなんてふざけた名前で呼んだらミア様に言いつけますから。)
わ、わかったよ...。
だからミアに言いつけるのは止めてください。
(わかれば宜しい。)
俺は収納から王家の証を出して、騎士達に見せつけた。
「この紋所が目に入らぬか!!
この証を何と心得る!
レオンハート王から直々に受け取った証だぞ!」
(...全くこの人は。)
証を見て騎士達は後ずさりをしている。
しかし、話を聞かない騎士は、
「あんな物は偽物だ!!
こんな若造が、持っている訳がない!!
皆の者、怯むな!取り押さえるぞ!!」
「「御意!!」」
「へっ?」
呆気に取られた俺はあえなく捕まり、牢屋に入れられたのだった。
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