第102話、悪には天誅を!そして演説は短いのに限る。
天井がない馬車は俺たちを乗せて王都のメイン通りにつく。
すると見たこともない数の人々が沿道に引き締め合っていた。
「コウ殿、無いとは思いますが反対組織の連中が攻撃して来るかもしれません。
そうなったら守って貰いたいのですが...。」
「ウィリアム王。お任せください。
安心してパレードを終えられるように力を尽くしましょう。親友のアルト王子の為に。」
「だからコウ君...。王子はやめてって...。」
「しょうがないだろ~。
そう言わないと城の兵士や騎士達に睨まれて肩身が狭いんだ。
我慢して下さい...。アルト第三王子様。」
「コウ君...。絶対バカにしてるでしょ?」
「さあね~。ほら進む見たいだぞ。
国民の皆様に手を振ってくださいませ!
アルト王子様!」
「コウ君!!もう...。」
相変わらずアルトをいじってると楽しいな。
反応が初々しいからかな...。
そんな事を思いながらも俺はしっかりと探知の魔法を使いながら敵意を持ってる奴を探した。
チラホラ敵意を持っている奴がいるな...。
「ウィリアム王。敵意を持っている奴が居るがどうする?
何かされる前にこちらから攻撃しようか?」
「いや、それは止しておこう。
ただ攻撃しようとして来たら無力化をお願いしたい。
大丈夫だろうか?」
「優しい王様だこと...。
了解。嫌いじゃないぜそう言う所。」
「敵意を持ってたとしても我が国の民には変わんないからな。
しかも、父上が何の相談もなく急に王位を引き継がせたもんだから反発する輩が出てくるのもわかってたし...。」
「そこまで分かっててパレードに出席するんだな。」
「国民の前に出れない国王なんて誰も指示してくれないだろう?
私だって怖いが王になるってことはそう言うのを跳ね返してこそ王になれるんだと思うんだ。」
「そうだな...。しっかり俺たちが守るから安心して国民達にアピールしてくれ!」
「コウ殿....。...ありがとう。」
「気にすんなよ。アルト。俺とヴォイス以外に結界を張ってくれないか?」
「うん。攻撃が来そうなの?」
「そうじゃないが...。一応、な。」
俺がそう言うとアルトは迅速に結界を張った。
俺とヴォイスに結界を張らなかったのは、
何かあったときにすぐ対応できるようにするためだった。
今は武器が無いから頼りは体術と魔法。
無効化するくらいなら多分出来ると思うのだが、自分達より強い奴が居たらと思うと緊張が走る。
「マスター。大丈夫ですよ。
見る限りで私たちより強いものは居ません。」
「そうか...。だけど油断は禁物だ。
何があるか分からないからな...。」
「そうですね...。少し油断していました。申し訳ありません。」
「いいよ。何もないことに越したことはないんだから。」
馬車が城から出てちょうど半分、
大広場に着いた。
ここでウィリアム新王の演説が始まるらしい。
「俺は一旦離れて敵対意識を持っている奴をマークする。
ヴォイスは壇上の上から攻撃してきそうな奴が居たら俺に指示してくれ。すぐさま無力化するから。」
「分かりました。気を付けて下さい。」
「アルトはそのまま結界の維持を頼むな。」
「う、うん。」
俺は気配を消してパーティーと離れ距離を取り、
敵対意識が一番強い奴等が溜まっているところに近づいた。
見ると立派な装備を身をまとった大勢の傭兵達に囲まれて話す上流貴族風の奴等が居た。
あいつら確か授賞式にいたな...。
見た目がいかにも嫌なやつって感じだったから一目でわかった。
「あんな若造が次の王だと...。許せぬ...。」
「本当にそうですね。次の王にふさわしいのはアークダイ様しか居ないと言うのに...。」
「お主もそう思ってくれてたか!チゴーヤ!」
勝手な事を言っているな...。
もう少し近づいてみるか。
「はい...。あんな若造が王になってもこの国はいい国にはなりませぬ。
やはり、アークダイ様がなるべき....。」
「そうよのう...。しかし、こうも国中に次の王はウィリアムだと知れ渡っているからどうしたものか....。」
「ならば私に考えがあります...。」
「なんじゃ考えとは...?」
「不慮の事故に見せかけた....
暗殺です。」
「!?」
!?
俺は思わず口に手を当てる。
あっぶね~。
俺が声を出すところだった...。
「不慮の事故に見せかければ後は回りの貴族達に圧をかければ言うことを聞くでしょう。」
「そうすれば次の王は....。」
「アークダイ様です。」
「暗殺が上手く言ったとして第2王子達がおるだろ...。」
「その点は大丈夫です。第2王子のヘンリーは心に病を負っており復帰の可能性はありません。
そして第3王子に復帰したアルトはそもそも俗物王家の血だけで政治などは皆無。
第4王子は今は地方の都の領主となっててすぐに帰ってくることなど出来ません。
そうなると...?」
「やはり、儂が王になるしかないのう...。」
「そうでございます。ウィリアム暗殺の段取り任せてはもらえませんか?その代わり...。」
「あぁ...言わずともわかった。任せよう。ソレにしてもこんなことを考えるなんて、
チゴーヤ、お主も悪よのう...。」
「いやいや、アークダイ様には敵いませんよ。」
「「ワッハッハッハ!!」」
........。
....................。
時代劇か!?
思わずアークダイの禿げた頭をツッコんでしまいそうになった。
いやいや...。どうしようか...?
聞いてしまった以上はこいつらは放っておけないな...。
気配を完全に断って2人の側にいる俺に、
アークダイ、チゴーヤはおろか傭兵達にも誰も気づいて居なかった。
まだ悪事は働いてないが、
こういう暗殺とか
悪には天誅を!!
俺は小声でボソッと魔法を打つ。
「パラライズ(弱)。」
「「ワッハッハ....ホゲェ!?」」
その場にアークダイとチゴーヤは意識を失う。
これでも強かったか... 。
[パラライズ]
・雷系の魔法
微弱の電気で神経を痺れさせ動けなくする。
雷系で一番初期の魔法。
俺の場合、一般人にやる場合は弱めないと死んでしまう可能性があるから今回はかなり弱めている。
俺は気配を切ったまました気絶した2人を担いで、瞬歩でその場から離脱。
傭兵達は2人が突然消えたと騒いでいるが知ったことではない。
そしてそのままの足で王城の城門にいる騎士の前に2人を下ろした。
「あ、あのコウ殿どうなされました?」
急に目の前に現れた俺に騎士達は驚いている。
「この2人がウィリアム新王を暗殺すると言う話をしてたから、
気絶させって連れて来たんだけど。」
「この2人が...。
って大貴族アークダイ様とその分家のチゴーヤ様!?」
「この2人ってそんなに偉いの?」
「は、はい!王都の勢力の4分の1ほどの権力を握っている人なんですよ!!」
「へぇ~。でも新王を暗殺しようとしてたよ。」
「Sランクのコウ殿が言うなら間違いは無いんでしょうね...。
おい!!この者達を、牢屋に運んでいけ!!」
「了解しました!!」
騎士達は数人係りでアークダイとチゴーヤを牢へと運んでいった。
「さすがコウ殿でございます!ご協力ありがとうございます!」
「全然いいよ。それよりもあの二人の屋敷に家宅捜索した方がいいと思うぞ。」
「それは何故に?」
「ああいう奴らは裏に絶対何かを隠しているもんだ。秘密の密書とか、裏帳簿とかさ。
まぁそれは俺の勘だけどな。」
「なるほど...。直ちに王に確認とって家宅捜索入ろうと思います。」
「王ってどっちの?ウィリアム新王なら俺が伝えておくよ。俺が言うならオッケー出ると思うし。」
「コウ殿にお願いしてもよろしいですか?」
「あぁ。任せろ。」
「ではお願いします。
我々は直ちに騎士団員で編成を組み、アークダイとチゴーヤの家宅捜索に行こうと思います!」
「気を付けて行って来いよ!お前達が怪我やら何かあったりするとウィリアム新王の心が痛むからな。」
「はい!お言葉ありがとうございます!!
ではこれで失礼します!」
騎士達は俺に敬礼をしてこの場を去った。
俺は来た道を戻り、広場に着いた。
「......であるからにして。」
まだウィリアムの演説が続いていた。
俺が悪党を成敗して戻ってくるまで30分。
長えよ...。
校長の演説かっ!!
またまたツッコミたくなったコウであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます