第100話、バージョンアップするためにコウくんを見張って。


感動も一段落して、俺はソーマに話を切り出した。


「ソーマ。逢えて本当によかったな。」


「うん。本当に逢えて良かった...。」


「所で気になったんだけどさ、クラレントの前の持ち主ってアルコさんだっけ...。

なんか、アルトと名前が似ているのは気のせいなのか?」


「いや、気のせいじゃないよ...。アルコはこの国の初代国王アルコ・レオンハートだよ。

元々この王都は小さな村だったんだ。

そこにSランク冒険者を引退したアルコが国を作るなんて言い初めて、

300年たった今はこんな大きな大国になったって訳...。

子供達にクラレントを引き継ぎたかったんだけど、才がある者が現れなかったんだろうね。

僕はその頃は放浪の旅をしていたから噂でしか聞いてなかったけど。」


「その話は真か!?是非詳しく聞きたいんだが...。」


オーガイが驚いた顔をしてソーマを見ている。


「僕は知っているのはあくまで噂と推測。

クラレントがよく知っているのだと思うけど...。」


「.....。」

クラレントは俯いたまま黙っている。


「話したくないこともあるだろうし、あんまり言及しないで欲しい...。

僕にとってアルコは親友だったからさ。

思い出はその人の自由だろ?」


「た、確かに...。それもそうだな...。

クラレント。主の気持ちを考えずに軽率な発言すまなかった...。」


「....いえ、アルコ様の事は、アルコ様の意思を尊重して次期王になられるウィリアム殿に話そうと思います。皆様に話すことが出来なくてすいません。」


クラレントは深々と頭を下げる。


「いやいや、頭を上げてくだされ。我は我が息子ウィリアムにこの国を任せたのだ。

アルコ様の庫とについてはウィリアムに任せる。」


「.....なんか責任重大だな。」


うつむき加減でポツリと言葉を漏らしたウィリアムに俺は肩をポンと叩いて


「頑張れ!ウィリアム王!!」


笑顔で言った。

なおさら肩を落とすウィリアムだった。


「ってことは聖剣は血筋の者に引き継がれやすいってことなのか?」


「一概には言えないけど....。

そう言うのはあると思う。

カゲロウは元々この世界の住人では無かったし...。」


「え!?じゃぁ、もしかして俺のご先祖だったって事も...。」


「無きにしもあらずだね...。

もうカゲロウは亡くなってしまったから確認はとれないけどね...。」


マジか...。

前世の家系図なんて見たことも無いからわかんないけど、

アスタとリスクが俺の事を最初から[お兄さん]と言っていたからもしかしてそうなのかもしれない。

カゲロウって名前も相当昔の日本人ぽいし...。

もう今さら感は満載だけど...。


「おいおい...。ちょっと待ってくれ!

コウ殿はこの世界の住人じゃないってことは、神の使徒なのですか?」

ウィリアムが言ってくる。


あっ。ポロッと言っちゃった。

今さらいいんだけどね...。


(相変わらずマスターはドジですね。)


俺はヴォイスの方を見るとやれやれって顔をしている。

こんなドジでお茶目な所も可愛いでしょ?


(バカ...。)


「確かに、俺はこの世界の住人では無い。

違う世界で死んでこの世界に飛ばされて来たんだ。

ただ、神の使徒では無いよ。

自由に生きろとしか言われてないし。」


「....そうだったんですね。神の使徒なら導きの言葉とかあると思ったのですが...。」


「うーん。そう言うのは無かったな。

って言うかこの世界にはあまり干渉出来ないとも言ってはいたし。

しかし、俺が来たことによって問題が発生したのも確かだ...。

あのコロシアムで起きた事件も...。」


俺はこれまでの経緯を話した。

皆は静かに俺の話を聞いていた。


「あの剣聖様でさえ手こずる相手とは...。

もう一回この王都に攻め込んできたら今度こそ終わりなんじゃ...。」

オーガイが深刻な顔で言う。


「そうならない為にソーマを連れてきた。」


「それはどういう事ですか?」


「ソーマには新たな聖剣を作ってもらう。」


「正しくは聖剣の子供ですけど...。私のこの聖剣の種子とウィリアム殿の魔力を金属に乗せて、お父さ...ソーマ様に錬金してもらうんです。」


クラレントが補足をする。

みんなもう知ってるからお父さんって呼んでも良いのに...。


(クラレはまだ恥ずかしいんですよ。

あの子ツンデレだから。)


そうか...。

クラレントはツンデレなのか...。

っていつの間にクラレなんて呼べるほど仲良くなってんだ?


(内緒です...。)


「...なるほど。そして、ソーマ殿聖剣はどのくらいで出来るのだ?」


「そうですね...3日もあれば出来ますよ!

今回はコウくんが前に持ってきたオーガキングの棍棒からオリハルコンの抽出が出来たから、間違いなく今までで一番の物が出きる。」


「マジか...。」

俺は少し羨ましく思っていると、


「コウくん!安心して!君達パーティーの分の武器も作るから。

とは言ってもコウくんとアルトくんはバージョンアップなんだけどね!」


「バージョンアップ?」


「うん。クラレントとアスタ、リスクは僕が少しの間預かる事になるけど大丈夫かな?」


「俺はいいよ。アルトは?」


「僕も大丈夫。」


「よし、じゃぁ僕の娘達は一旦預かるね。明日の朝までには返せるから。

あ、あとコウくんに前あげた双剣2組も預かっていい?バージョンアップに使うから。」


「あぁ...。良いけど。なんか剣が無いのもしっくり来ないな。」

俺は収納から2組の双剣をソーマに渡す。


「あはは。コウくんなら魔法も使えるし、大丈夫でしょ?朝までの辛抱だから。」


「そうだな。ソーマ任した。」


「任された!そして、ウィリアムくんこの玉に魔力を込めて。」


ソーマはそう言うと透明の玉をウィリアムに渡した。

「これに...?」


「うん。この玉に魔力を入れてもらう事でどんな性質の魔力なのか分かるんだ。

それによって作る行程が変わるんだ。」


「な、なるほど...。了解した。」


ウィリアムは透明な玉に魔力を流すと、白色、青色、緑色と3色の光が玉の中に渦巻いている。


「おぉ...。素晴らしい。

ウィリアムくんは3種類の魔法が使えるんだね。これは中々居ないよ。」


「そ、そうなのか?」


「才能はあるって事!これなら強い剣が出きるよ!期待してて!それでは僕は工房に籠るけど後は用事無い?ないなら工房まで案内して!

後、誰も入らないでね。

まぁ結界張るから入れないけど...。」


そう言われるとすごい気になる...。

こっそり見に行きたい...。


「コウくんに言ってるんだけど!!」


「俺か!?」


「当たり前でしょ!?コウくんはいつも常識をひっくり返すんだから!みんなもしっかりとコウくんを見張っててね!」


「「はい!!」」


一同元気よく返事をした。

俺って一体...。


(日頃の行いが悪いせいじゃ無いですか?ププ。)


そんなに悪いかな?


全く自覚の無いコウだった。

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