第99話、親と子



「はい、到着っと。ソーマ~。生きてるか?

起きろ~!!」


ぺし。ぺし。

俺は気絶したソーマの頬を軽く叩く。


「ん...。ここはどこ?天国?僕は死んじゃったんだ...。」


まだ意識が朦朧としているソーマ。


「ソーマ。天国じゃないぞ。王城だ。

大丈夫か?」


「あぁ...コウくんかぁ...。



ん、コウくん...?



........。

..............。




コウォォ!!」



意識が戻ったのかソーマは鬼の形相で俺を睨んでくる。


「なんだよ。そんなおっかない顔して...なんかあったかぁ?」


「何かあったか~?じゃないよ!!

死ぬとこだったマジで!!

死ぬとこだったよ!


マ・ジ・で!!」


「死んでないじゃん。」


「まぁ、五体満足だけどさ...。

じゃなくて!!

あのバカみたいなスピードは何!?

飛行魔法ってもっと優雅な物なんだよ!」


「優雅な物って言われても急いでたし。

一応ソーマの事を考慮して押さえたつもりだったんだけどな...。」


俺の話は一切無視でソーマが捲し立てて来る。


「そ・し・てぇ!!

何でわざわざレッサードラゴンの群れに突っ込んでいくのさ!

しかも、次々首をはねていくし...。

その光景思い出しただけで気持ち悪い...。ウプッ。」


「いやいや、それはワイバーンが美味しかったからドラゴンも美味しいかなって思ってさ!

ソーマも喜んでくれるかなって..。」


「そんな理由で...。

コウくんは知らないようだけど、

ワイバーンは鳥科でレッサードラゴンは龍科で全然種類が違うんだよ!

ワイバーンの肉は柔らかくて料理向きだし、

ドラゴンの肉は固いから料理するのが本当に難しいんだ。

だから狩らなくても全然良かったのに...。」


「ソーマ...。

それは俺にドラゴンの料理は出来る訳ないと言っているのか?」


「い、いや。そうじゃないけど...本当に難しいんだって。」


「そこまで言うなら今まで食べた事のないドラゴン料理をソーマに食べさせてやる!」


「そ、そこまでは言ってないんだけど...」


「いーや!これは決定事項だ!!

気絶させたお詫びだと思って楽しみにしておけよ!!」


「............。」


そう言うとソーマは何も言わなかった...。

俺の意地が勝った...。


(やれやれ、何クダラナイ言い合いしてるのですか?皆様お待ちしていますよ。)


クダラナイって...。

これは男と男のだな...


(ハイハイ。そういうのいいですから。人化しますね。)


ヴォイス達が人化すると、


「マスター、ソーマ様。皆様お待ちです。さっさと行きますよ。」

「ほら、お兄さん達。置いてくよ~!」

「....置いていくの~。」


三人は俺たちを置いて言ってしまった。


「ソーマ...行こうか...。」


「そうだね...。」


あの不毛な時間はなんだったのかと2人は肩を落としヴォイス達の後を付いていくのだった。






客間の着くと皆勢揃いで俺たちの帰還を待っていた。

「お帰りコウ君。お久しぶりです、ソーマさん。」


「ただいま。」


「アルト君久しぶりだね~!元気だった?

リアとラテさんも久しぶり~!」


「久しぶり~!延期だったよ!」


「お兄ちゃん!久しぶりだね!元気だったよぉ~!」


リアは羽を広げて笑顔でソーマを迎える。

いつも笑顔でいれば可愛い精霊なのに...。

俺がそう思っているとリアに睨まれる。

今日は良く睨まれる日だな...。


そんな事を思っているとアスタとリスクがクラレントの手を握ってソーマの前に行く。


「パパ~!お姉ちゃん連れてきたよ!」

「....連れてきたの。」


「え?お姉ちゃん?」


急にそんな事言われて戸惑うソーマに、


「ひ、久しぶりです。400年ぶりくらいですね。」


「お姉ちゃん。剣の姿にならないとパパはわからないよ~!私たちの時もそうだったもん。」

「.....パパ鈍感なの。」


「そっか...。そうだよね。」


そう言うとクラレントは剣の形に変わっていく。

クラレントを手にしたソーマの顔には涙が流れていた。


「この印は間違いなく僕が作ったものだ...。

昔のパーティーメンバーのアルコに作った長剣...懐かしいな。」


ソーマが懐かしんでるとクラレントが剣から人に変わり、


「アルコ様には本当に大事に使っていただきました。

使っていただいたときに大量の魔力を流していただき聖剣となりました。

ただ契約出来るようになったときにはお歳を召していました。

アルコ様は後世の才あるものに私が渡るようにとの願いだったので、アルト様と契約させていただいて、今実体化出来ているのです。」


「そうか...。大切にしてくれてたんだな。

クラレント、教えてくれてありがとう。」


「いいえ、私いや私たちにとってはソーマ様は父なので逢えてとても嬉しいです。

生きていてくれて本当にありがとうございます。」


クラレントも涙ながら話す。


「俺は打っただけだけど、

大事に使ってくれたカゲロウとアルコには本当に感謝するよ。

彼らに渡して本当に良かった。」


しみじみソーマが言っていると、


「パパ抱っこ!!」

「抱っこなの!!」


アスタとリスクがソーマに抱きつく。


「ねーちゃんもおいでよ!」


「私は別に...。」


「クラレ姉...来るの!」


「う、うん...。」


アスタとリスクに促されてクラレントもソーマの側に行くとソーマは3人を抱き締めた。


「お帰り。僕たちの子供達。」


「ただいま~!」

「なの!」

「た、ただいま。お父さん。」


その微笑ましい姿を見てた俺たちは涙が止まらなかった。






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