第98話、ソーマの胃袋



「さぁさぁ、焼けたぞ!!気を取り直して食べてくれ!!」


「わぁい!お肉だぁ!!」

「食べるの。」


アスタとリスクは一心不乱にワイバーンのお肉にかぶりつく。


「何これ!?めちゃめちゃ美味しい!!」

「ウマウマなの!」


「そんなに美味しいの?僕も食べようかな!」


ソーマも口に入れる。


「何これ!?スゴい美味しいよ!!

こんな美味しいお肉久しく食べた事無い!!」


「旨いだろ!!

新鮮なワイバーンの肉だからな!

やっぱり肉は狩りたてホヤホヤが一番旨い!」


俺は得意気に言う。


「ワイバーンの肉がこんなに旨くなるとは...。

これは味の革命だよ!」


「チッチッチッ!!

コメントが甘いなソーマ。

そこは、このお肉は味の宝石箱やぁぁぁ~!!

ってこれくらい言わなきゃ!」


「えぇ~...。そこまで言うと嘘臭いよ...。」


ソーマはお気に召さないらしい...。


「ゴング達も食べてくれよ!!俺の自慢の料理なんだから!」


「だば、兄貴頂くだ!アニーも食べよう。」

「はい!アナタ!頂きます!」


パクっ!


「あ、あ、あ、兄貴!!なんだべか!?

このジューシーさは!?」

「本当に!?口の中に溢れる肉汁が野菜と合間って美味しい!!」


ゴング夫妻の顔が綻ぶ。

ウンウン。良いねぇ~!

その美味しいものを食べたときの幸せな顔が、料理人としての一番のご褒美なんだよなぁ~。


(マスターはいつから料理人になったんですか?)


「まぁまぁ、そんな事言わずにヴォイスも食べて見ろって!...飛ぶぞ!」


「兄貴...。そちらの女性何もしゃべってないのにどうしただ...?」


「あぁ...。ごめんごめん。紹介するよ。

会うのは初めてだったな。この人はヴォイス!

ずっと俺を支えてくれた相棒パートナーなんだ。ヴォイスが[念話]で話しかけて来たから普通に答えちゃった。」


「初めまして。マスターの最愛の人パートナーのヴォイスです。ソーマさん、ゴングさん、アニーさん。

皆の事はマスターの中に居たので前から知っていました。」


「コウくんの中?」


「はい。

私はマスターのユニークスキルなんです。

とある方とマスターの魔力で実体化しています。」


「す、スゴい話だな。おら良くわかんねぇだ。」

「そうですね...。」


2人は何言ってるのかは伝わっていない見たいだったが、ソーマは違った。

流石、生きている年数が違うから理解力が違うのだろうか。


「成る程...。

なら僕たちの事を知っていてもおかしくはないよね。」


「はい。色々知っていますよ。皆様のあんな事やこんな事も...。」


ヴォイスは軽く微笑みながら言う。


「ヴォイス...変なこと言わないで良いからな。」


「フフン。言わないですよ。私は出来る女ですから!」


まぁ、言われて困ることは...あるな...。

絶対言わないでくれ。

そんな事よりも俺にはここに来た理由をそろそろ話さないとだな。


「それはそうとソーマ。話があるんだけど...。」


「ん?何~?パクっ!


モグモグ...。」


食べ物を口一杯に頬張るソーマは可愛いげだが、今は真剣な話だから食べるの止めてほしいけど...。


「聖剣を作って欲しい。」


「モグモグモグモグ.....。



ゴックン。


..........................えっ?」


「いやだから、聖剣を作って欲し....。」


「パクっ!


モグモグ...。


モグモグ............。


モグモグモグモグ........。ゴックン!!


ぼ、僕が....せ、聖剣を!?」


ソーマは驚きつつまたお肉に手を伸ばそうとしている。


「食べるの止めんか!!

真剣な話をしている最中!」


「そんな事を言ったってしょうがないじゃないか!?

コウくんが作る料理が旨すぎるから悪い!

それに、急ぐ話でも無いんだろう?」


「それがそうでも無くてさ。

夕方までに王都に行くから後1時間で出発しなきゃなんだよね。」


「そんな急な...。なら今のうちに食べておかないと...。パクっ!モグモグ...。」


行くってことで良いのかな?

まぁソーマは剣を打てればいいのか...。

俺がそんな事を思っている横で一心不乱に料理を食べ始めた。


「理由は聞かないのか?」


「モグモグモグモグ....。

理由は...モグモグ...どうでも....モグモグ...いい...。ゴックン。

僕は自分の納得出来る者が作る...パクっ。

そしてどんな依頼でもこなすのが....モグモグ....モットーだから....モグモグ...。」


「そ、そうか...」


良いこと言っているのに、食べながら言ってるから全然心に響かない...。

まぁ、料理に集中したそうだからしばらく放っておくか....

そういえば、ゴング達はどうかな...?


「ゴング達も王都に行くか?

アルト達にも会いたいだろう?」


「先生達に会いたいし、行きたいのは山々なんだけんど...。

実はアニーがこれなもんで...。」


ゴングが照れながら、お腹を山にするジェスチャーをする。


「ま、まじか!?なんだよ早く言えよな!

お祝いの品なんて何にも持ってきてないぞ...。」


「兄貴。そんなのは全然いいんだ。

兄貴達のお陰で真っ当に生きれて本当に幸せなんだ。兄貴ありがとう。」


涙ながら話すゴングに俺も胸が熱くなる。

思い出すな...。

弱いくせに意気がってチンピラ見たいだったゴングが...。

そんなゴングが人の親になるんだもん。

感慨深いな...。

これは絶対何か贈らなければ!

そうだ!

俺は収納から袋を取り出す。


「ゴング!これやるよ!!」


俺はズッシリと入った袋を渡した。


「やけに重いんだけどコレなんだべか?」


「まぁまぁ開けてみてくれ!」


ゴングは袋の紐をほどき中を見た。


ズッドォォン!!


ゴングは震えながら盛大に尻餅をつく。


「あ、あ、兄貴...。こんな量の金貨貰えないだよ...。」


「何言ってんだよ!

これは結婚祝いと出産祝い!

子供産まれたらお金は結構かかるんだぞ!

それにお金はいくらあっても困らないだろう?

備えあれば憂いなしってね!」


「備えなんちゃら...?

最後の言葉は良く分からなかったけんども。

本当にいいんだか...?」


「あぁ!

アニーに負担掛けないようにして立派な子供産んでもらわないとな!」


「兄貴...本当にありがとう。」


「おう!今度は皆で祝いに来るから、楽しみにな!」


「んだ!楽しみにしてるだ。兄貴達の家の管理は任せてけろ!」


俺はゴングとの話を終えてソーマの方を向く。

まだ食べてるし...。


「ソーマ...。王都でも料理は出るからそこそこにしてソーマの道具を取りに行くぞ。」


「あぁ...。モグモグ。

僕の道具は収納魔法でいつも持ち歩いているから大丈夫!モグモグ...。

あっ...。ゴング!」


「はいだ!」


「しばらく帰れないから店を任せたね。モグモグ...。

ゴングは一般の武器、防具なら作れるだろう。まぁ、そんなにお客さん来ないし大丈夫。

魔法の武具を作れるように練習しといてね~!モグモグ...。」


「は、はい!わかっただ!」


ゴングのいい返事に対してソーマは適当だな...。

ってかいつまで食ってるんだ?

あんな細い体のどこに入っているのだろう?

ってか良く見るとアスタとリスクもスゴい量食べてるな...。

もうほとんど無いな...。

片付けの準備でもするか...。





よし、片付けも終わったしそろそろ行かないとな。

「よし、そろそろ王都に行くぞ。ヴォイス達は来たときと同じで。」


「了解しました。」「わかった~!」「...なの。」


ヴォイスは俺の中に入って行き、アスタとリスクは双剣として俺の背中に装備される。


「本当に何て言っていいのか...。不思議な光景だね。」


「よし、ソーマ。手を握ってくれ。じゃぁ、ゴング、アニー!またな!」


「んだ。また待ってるだ!」

「待ってますね!



挨拶を終えた俺はグラビティ0で身体を空高く浮かす。



「うわぁ....めちゃめちゃ高い...。

コウくん...。大丈夫だよね...?」


「あぁ。あんまり喋ってると下噛むから気を付けろよ。」


「えっ?」


「じゃぁ王都までノンストップでぶっこんで行くんで、夜露死苦!!」


「よ、よろしく...?」


ソーマの確認も取れたところで俺は気合いを入れてアバドンに来たときの倍のスピードで王都を目指した。




「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーー!!」




ソーマの叫びがアバドンに響いた。

この叫びはのちに、

[昼下がりの叫び]と言うアバドンの街の七不思議の一つに語り継がれることになった。

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