第97話、想いの力


ヴォイスがソーマ達にエールを配る。

俺達はこの後パーティーがあるからジュースだ。

「よぉし!皆ドリンクは渡ったな。

それでは久しぶりの再開にカンパ...。」


「ちょ、ちょ、ちょっと待って!コウくん!」


「なんだよソーマ...。肉焼けちゃうよ...。」


「いやいや、この可愛い人達は誰なのさ!?」


「後で紹介するから、とりあえず乾杯しようぜ!乾杯~!!」


「か、乾杯...。」


ソーマが戸惑う中、アスタとリスクが俺に近づいて耳元でこそこそと言った。


「お兄さん聞いて。あの人私達のパパ。」

「...パパなの。」


「まじでか!?」


衝撃的な発言に俺はひっくり返りそうになる。

その姿をソーマ達は不思議そうに見ていた。


「うん。魔力でわかるもん。」

「...魔力が一緒。」


成る程...。

だから2人の姉のクラレントがソーマを知っていたんだ。

聖剣クラレント、聖剣アスタリスクはソーマが作ったって事だけど...

なんで本人は知らないんだ?

しかも、聖剣見た事ないから見てみたいなんて言ってたし...。

まぁ本人に聞くのが一番だな。

そうだ。面白いことを考えた。

ぐっふっふっふっ。


「アスタ、リスク。一芝居打ってくれ。」


「芝居...?う...うん。」

「...芝居する。」


「俺がこう言うから....ゴニョゴニョ...。」


「うん。わかった。」

「....わかったの。」


作戦が決まって楽しそうなコウ。

それを見て子供なんだから...。って母親のような目で見つめるヴォイスだった。



「ソーマ!!」


「な、何!?急に大きな声出して...。」


「2人が悲しがっているぞ。

パパは私達の事忘れてしまった見たいって。」


「ふぇ!?コウくん何を言ってるのさ!?

し、知らないよ!コウくん以外初対面だし!」


「パパ...。私達の事忘れちゃったの...?グスン..」

「...ぱぱ。...悲しい。グスン...」


2人の涙ぐむ迫真の演技に、


「ソーマさん!!おらアンタを見損なっただ!!」

「そうねぇ。こんな可愛い子を忘れるなんて。ソーマさん最低です。」


ゴング夫妻が真剣に怒っている。


「ほ、本当に知らないんだって...。」


「まだそんな事いうだか!?この子達が可哀想だっぺ!!」


「最低ね!」


ばつが悪そうにするソーマを見ていると、流石にソーマが可哀想だな...。

ここらでネタバラシするか。

アスタとリスクに合図をする。


「ソーマ。この子達は本当にソーマの子だよ。」


「だから、僕は知らないって.....へっ!?

あの子達は?」


「あの子達はこの聖剣だよ。さっきまで人化してたんだ。ホラ。。」


俺は聖剣アスタリスクをソーマに渡した。


「人化って...。聖剣ってスゴいんだな....。

って、ちょっと待って!!


この剣は...。


この剣は...。


間違いない僕が打った剣だ...。それが何故!?」


「この剣の名は聖剣アスタリスク。

剣舞祭の優勝して貰ったんだ。王都レオンハートにたどり着く前は俺は分からないな...。

本人達に聞かないと。」


「そっか...。

この剣は昔、冒険者時代の仲間にSランク冒険者になったお祝いであげた双剣なんだ。

でもなんで聖剣になったんだ?

あの時はせいぜいコウくんに打った白銀の双剣位のもんだったのに...。」


そう言うとアスタとリスクが人化する。


「パパ。それはね...。想いの力だよ。」

「うん。...ママの想いの力で強くなったの。」


「カゲロウの想い....。そっか...。2人ともありがとう。」


ソーマは泣いてアスタとリスクを泣きながら抱き締めた。



想いの力か...。



クラレントが言っていた長年の魔力=想いの力って事なんだろう。

と言うことは、ソーマとそのカゲロウっていう人とは恋仲?あるいは夫婦だったのかな?


(そうだと思いますよ。じゃなかったらあんなに泣き崩れたりはしないでしょう...)


確かに...


(人族の寿命は長くて100年、

それに対してエルフの寿命は2000年近くですからね。

ソーマさんにとってそこまで忘れられなかった人なんですね。)


あぁ...。

ソーマを見て俺はミアの事を考えていた。

ミアも300年俺の事を待ち続けてくれた。

その想いに応えたい。

そう強く思った。




ん...。何か焦げ臭い....。



「って肉が焦げてるぅぅ!!

せっかくの肉が、ソーマの長話のせいで焦げてしまったぁ!!」


「えぇぇ!!それって僕のせい!?」


「パパのせいじゃないよ。」

「...悪いのはおにい。」


えっ?

そっち側に付くの....?


他の皆を見ると目をそらされた。

俺に味方は居ないのかよ!?


(マスター。完全に悪者ですね!ぷぷぷ。)


うるせー...。結局こういう落ちかよ...。


トボトボと俺はもう一回肉を準備して焼き始めた。


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