第95話、聖剣の種子
アルトが家族と話している間、リアとラテとボロックはその様子を影から微笑ましそうに見ている。
お前らストーカーかよってツッコミたくなるが、アルトの事を気を使っているのだから口を挟むのは止めておこう...。
アスタとリスクはヴォイスと何やら話している。
俺に関する事を話している様だが、あんまり聞かない方がいいような気がする。
そういえば、クラレントは?と探していると何やらウィリアムと話していた。
何を話しているのか気になって俺は2人の話を聞きにいくことにする。
「なるほど...。やっぱりウィリアム様には才能がありましたね。」
「それはどういう...。あっ、コウ殿!」
「邪魔しちゃいました?」
「全然大丈夫ですよ。
今からウィリアム様に聖剣の種子を授けようとしていたのです。」
「聖剣の種子?」
「はい。元来聖剣とは剣の打ち手と使い手の魔力で産まれます。
2人の魔力の相性が良くないと聖剣にはなりません。
その相性を強く結びつけるのが種子になります。」
「成る程!それはスゴい事ですね!」
「あの...。コウ殿。かしこまって敬語を使われると私が緊張するんですが...。出来れば皆と同じでお願いしたい。」
そうクラレントが言う。
「俺も公の場以外ではアルトの兄として接して欲しい。」
「わ、分かった。」
俺が敬語を使うとそんなに変かな...?
確かにこの世界の冒険者は敬語なんて使わないもんな...。
「それで種子を手にしたとして魔力に長けている鍛冶屋なんて居るのか?」
「今そこで悩んでいたのだよ。
王都にも鍛冶屋は何件もあるのだが、魔力が低いドワーフばかりなのだよ。
腕は良いのだが...。
多分、聖剣は打てないだろうな...。」
「そうなのか...。
せっかくウィリアムにはその才能があるのにな...。
聖剣があればよっぽどの事がなければモンスターは近づかない。
この王都の住民にとってすごく重要なんだけどな...。」
クラレントも残念そうに言う。
せっかくアルトが家族と仲良くなっても王都に危険があると分かれば離れづらくなるだろうし...。
鍛冶屋か....。
ん?
居たじゃないか!?
俺の知っている鍛冶屋が一人!
「ウィリアム!クラレント!なんとかなるかも知れないぞ!」
「ほ、本当か!?」
「あぁ!その前に...。クラレント。この剣を見てくれ。」
俺は2本の白銀の剣をクラレントに見せた。
「この剣の魔力は...!?ま、まさかな...。」
「この剣を作った者なら聖剣は作れそうか?」
「あぁ...。確実に作れる....ってその者はまだ居るのか!?」
「あぁ、居る。」
「な、何とまだ生きているとは...。」
驚くクラレントを他所にウィリアムは状況を飲み込めないで居た。
「ウィリアム。この城に鍛冶を出来る場所はあるのか?」
「あぁ...。一応腕利きの鍛冶職人を置いて居るから場所はあるぞ。」
「そうか。...なら連れてくるか。」
「その者どこに居るのか分かるのか?」
「あぁ。冒険者の街アバドンに居るよ。」
「アバドン!!馬車で2ヶ月はかかるぞ!」
「大丈夫!俺なら数時間で連れて戻ってこれる。
なんたって今回は空を飛んでいくんだからな。」
「えっ!?空を.....。
もうコウ殿は何でもアリだな...。
驚くのが疲れたよ。」
「まぁそう言うことだから取り合えず行ってくるわ!早い方が良いだろう?」
「それはそうだが、明日でも良いんじゃないか?
夕方からパレードがあるし。」
「いや、思い立ったら吉日って言うだろ?
パレードまでには戻るよ。」
「そこまで言うならわかった。宜しく頼む。」
「あぁ。」
俺はそう言い残して2人の席を外して、ヴォイス達の元に行った。
「これからアバドン用が会って行くけど、どうする?残る?」
「マスター。私は行きますよ。」
「僕もお兄さんに付いていきたい。」
「...行く。」
皆付いてくれることになった。
「わかった。ヴォイスは俺の中にアスタとリスクは聖剣になってくれないか?急ぎだからさ。」
皆、了承してくれて俺はフル装備状態になった。
このモードでも会話は出来るから本当に便利だな。
「よし!行くか!皆ちょっとアバドンまで行ってくるからのんびりしててくれ。パレードまでには戻るから。」
「えっ!?そんな急にどうしたのさ!?」
「説明はウィリアムとクラレントに聞いてくれ!」
皆、俺の話を聞いて驚いている中、俺はベランダに出た。
「グラビティ0。」
俺の体重を重力魔法で0にする。
軽くジャンプするとどこまでも高く上がって行った。
いい高度まで上がったら風魔法を手から出すと前に進んだ。
よし!成功だ!
このままアバドンまで一気に行くぞ!
俺は猛スピードで飛んで行く。
王都は一瞬で見えなくなった。
本当に速いな!
空を飛ぶって最高ぉぉ!!
俺のテンションは最高潮に上がっていた。
それをよそに、
(マスター...。アバドンとは逆の方向進んでますよ...。)
...............。
テンションを上げすぎたのが恥ずかしくて無言で方向転換をし、
さっきよりもスピード上げてコウはアバドンを目指したのだった。
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