第94話、俺はいい出汁だった。




「アルトは私の息子だ!!」


国王オーガイは国中に放映されているのに爆弾発言をした。

発言したオーガイの顔には覚悟を感じる。

アルトもまさかそんな事を国王が言うとは思っていなかったらしく開いた口が塞がってない状態だ。


「私は国王となり王族の面子を優先し、アルトを他の息子と違って剣の才能が無いからとないがしろにしてきてしまった。

そして、王族から追放し最初から居なかった者として扱ってしまった。

それなのに、アルトはこの王都を救ってくれた...。

アルト...。本当にすまなかった...。

そして王都を救ってくれてありがとう。」


国王はアルトに頭を下げ謝罪した。

こんなに深々と頭を下げる国王は他の重鎮や貴族達も見た事無かったのだろう。

他国も恐れる戦争の鬼オーガイ・フォン・レオンハートの姿に周囲の驚きは隠せなかった。


「父上...。」


アルトは国王オーガイの心からの謝罪に大粒の涙を流した。

頭を上げたオーガイがまたとんでもないことを言い出す。


「これから国王として最後の仕事をする。」


おいおい... 。

あの王様は何を言ってるんだ...?

俺もその言葉に呆気に取られてしまう。


「コウ・タカサキ殿。

そなたには剣舞祭の優勝の報酬として白金貨10枚を授与する。

そして、コウ殿率いるパーティーには王都を守ってくれた報酬として冒険者ランクをSランクに格上げし、

それと同時に白金貨100枚を授与する!

大義であった。」


周囲のざわめきは止まることを知らない。

ラテとボロックはその報酬の高さに倒れそうになっていた。他のメンバーはお金に執着は一切無いので驚きもしなかったが...。

それよりもオーガイが気になる。


「そして、アルトを我が国レオンハートの第三王子に復帰してもらう。」


「な!?そんな急に!!」


アルトは声を荒げる。


「ただし、自由にしてもらって構わない。

今さら公務をしろとかは言わない。

Sランク冒険者として国からの依頼には参加して貰いたいが...。」


そうオーガイが言うとアルトは口を紡ぐ。

それはそうだよな...。

勝手に追放しといて有能だったから戻って来いなんて都合が良すぎる。


「アルト...。本当に勝手ですまない。

そしてこんなダメな父親で申し訳ない。」


再度オーガイがアルトに頭を下げる。

国中に放映されていると言うのに。


「僕は...。父上が怖かった。」


アルトが喋りだすとざわめいてた周囲が静かになった。


「僕には剣の才能が無かったから捨てられた。そしてお祖父ちゃんに育てられて、そのお祖父ちゃんがなくなって王都に来たとき淡い期待をした。

本当は優しい人なんじゃないか?

ただ国を守らないと行けないから弱音もはけず、強い国王として固辞しなければならなかったんじゃないかって...。

王都に来て色々あって結果的には王都を救ったことになって、

ここに来たんだけど、私の母メリアが笑顔で迎えてくれて本当に嬉しかった。

そして、母をこんなに笑顔に出来る父上は本当は優しい人なんだと感じました。

母を愛してくれてありがとうございます。」


アルトは国王オーガイの前に居る俺の横に来て片膝を着いた。


「私、只のアルトは本日より第三王子に戻ります。そしてレオンハートの名、承ります。」


そう強い言葉で言ったアルトに周囲の貴族達は拍手を送った。


「アルトよ...。ありがとう..。本当にありがとう。」


オーガイは泣きながら言葉だした。


「いえ。父上。皆の前です。ビッとしてください。」


アルトの奴、王子に戻ったとたん言うようになったな。

俺はアルトの顔を見てフッとほくそえんだ。


「そうだな。

後、最後に大事な発表がある。

私は今日で国王を辞する。

そして、次の国王をレオンハート第一王子ウィリアム・フォン・レオンハートに任命する。」


「ななな...。何を言っておられるのですか!?

私のような若輩者が国王など出来るはずが...。」


「...ウィリアム。大丈夫だ。お前には国を想う気持ちがある。

そして何より皆に好かれている。各貴族、騎士団員達、国民に聞いた結果だ。

近々交代しようと皆で話はしていたのだ。

それにお前には心強い兄弟が居るじゃないか。

頼まれてくれるな?」


ウィリアムはしばらく考えたのち、


「父上、了解しました。

この国を私と国民の皆で守って行きたいと思います。」


「頼むぞ!!」


そう言うと謁見の間は歓声と拍手に包まれた。

それだけじゃない。

新しい王の誕生に王都の街の住民からも歓声が聞こえてきた。


そして、授賞式が終わり。

今は城の客間に居た。

この後、優勝パレードと新たな国王ウィリアム王との就任パレードを合同にするのだと言う。


俺たちと一緒に居ればもし襲撃されても大丈夫と言う事なのだろうか?

完全に国王の護衛だよな...。

なんか俺の優勝なんておまけみたいな扱いだったし...。

完全レオンハート家の出汁に使われているような気が...。


(マスター。気じゃなくて完全に出汁です。プププッ。)


笑うなよ...。

頑張った俺が悲しいだろう...。


(まぁ良いじゃないですか...。

アルト様も和解できて。この結果は万々歳ですよ。)


そうだよな。

アルトが幸せそうで良かったよ。



そのアルトはオーガイとメリアと3人と笑顔で話している。

幸せそうなアルト。

今までの時を取り戻すようにしゃべる親子の姿が眩しく感じるコウだった。


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