第93話、衝撃発言
「......................。」
「.............................。」
「.....コ、コホン。コウ殿。す、すまなかった。」
第一騎士団長ザンス・アブブのゴタゴタが終わって気まずそうな国王オーガイ。
「いえ、気にしないで下さい。そう言う事もあるでしょうから。」
俺は淡々と答える。
この世界に来る前の俺の趣味の一つに異世界系のアニメやノベルを良く読んだり見ていた。
その中でお約束は必ずあると踏んでいた俺はかなり冷静だった。
胸糞シーンはかなり嫌いだったから実際あると冷静になってしまったのだろう。
しかも、謁見の間...。
絶対何かあるじゃん!と警戒していたのだ。
「そうか...。そう言って貰えると助かる。授賞式を始めてもいいかの?」
「はい。お願いします。」
国王は手を挙げると、
「これよりコウ・タカサキ殿の剣舞祭優勝の授賞式とパーティーの皆様によって王都レオンハートを助けられた皆様に受勲式を行います。尚、この式典はレオンハートの国全てに放送されますので御了承下さい。」
そう言うと音楽隊が演奏を始める。
オーケストラ見たいな重厚なメロディーが胸に響く。
俺達は横並びになって片膝を付き胸に拳を握る。
この形はアルトに教えてもらった。
受賞・受勲される者の礼儀らしい。
業には従わないとね!中継されているし。
これで少しは女性にキャーキャー言われるかな...。
そんな事思っていると、
(マスター...。まだ言っているのですか?
本当にいい加減にしないと私もミア様も怒りますよ...。)
少し位良いじゃないか...。
俺だって一度位キャーキャー言われて見たいんだよ...。
これでもこの国を救った英雄だよ!?
(キャーキャーねぇ...。
マスターが欲望むき出しでそこら辺の女性に手を出せば言われるんじゃないんですか...?
犯罪者として...。
キャー!!変態!!英雄様は変態だった!!
キモい!死ね!とか言われて...。)
..........。
(それに自分から英雄って...。
ダッサ!聞いているこっちが恥ずかしくなる。
いつからそんなに傲慢になったんですか?
あんまり調子に乗らない方が良いですよ...。)
............す、すいませんでした。
心を入れ替えたいと思います。
(その言葉何回聞いたと思っているんですか?この事はミア様に報告を....。)
すいませんでした!!
ヴォイス様!
ミアにはどうか言わないで頂きたくお願い致します!!
(仕方ないですね...。次は....。
分かりますね?)
はい....。
俺は気づけば冷や汗を大量にかいていた。
その姿を見たアルトが小声で、
「コウ君?どうしたの....?もしかしてお腹でも痛くなってきた?」
「い、いや。大丈夫。」
「本当に漏らさないでね...。
これレオンハート国の全土に中継されているから...。」
「漏らすかぁ!!
本当に大丈夫だからぁっっ!」
思わず大きな声を出してしまった。
皆が俺に注目する。
「コ、コウ殿?どうかされたか?」
「いや、何でもないです...。すいません。」
くっそー...。
恥ずかしい思いしたぜ...。
チラッとヴォイスを見ると必死に笑いを堪えている。
これは因果応報だな。
うん。俺が悪い。
俺は気持ちを切り替えて式典に臨んだ。
音楽が止み、オーガイが話し出す。
「剣舞祭優勝者コウ・タカサキ前に...。」
俺は国王の前に行き片膝を付く。
「この度は優勝おめでとう。
そう言えば報酬の聖剣アスタリスクはどうしたのだ?」
「あ...。それなんですけど...。驚かないで下さいね。」
「あ、あぁ...。」
「アスタ。リスク。こっちに来てくれ。」
俺が呼ぶと二人の少女が俺の隣へ来る。
「えっ?コウ殿...これは一体?」
「聖剣の人化です。聖剣と契約すると人化出来る様になるみたいです。」
「祖、そんな事が...。私の時はそんなの何もなかったのだが...。」
「アスタ。リスク。剣に戻っておくれ。」
「はい。お兄さん。」
「剣に戻るの...。」
2人はそう言うと聖剣アスタリスクに戻って俺の手の中に収まった。
周囲はどよめいた。
それもそのはず、聖剣が人化するなんて聞いたことがある人なんて居ないはずだから。
師匠と勇者様は知っていそうだけど。
「こんなことが...。で、ではアルトの隣に女性はもしかして...。」
国王がそう言うと、
「この姿ではお初にお目にかかります。クラレントと申します。アルト様との契約がなされ本来の力を取り戻しました。」
「そなたが聖剣クラレント...。」
「私の声に聞き覚えはありませんか?
オーガイ様が幼少期の時に私と話をしているはずです。」
「!?
た、確かに聞き覚えはある。しかし、突然話が出来なくなったのはなぜじゃ...?」
「それはオーガイ様が剣にこだわったせいですね。」
「そ、そんな...。」
「私は聖剣の中でも特に魔法に特化しているのです。
そして、オーガイ様は魔法を嫌ってしまった。その事により会話も出来なくなってしまいました。
オーガイ様。貴方は本来、魔法の素質の方が剣よりあったのですよ...。」
国王オーガイはショックを受ける。
同時に後悔をした。
私が今までやって来たことは何だったんだと...。
「そのお陰でオーガイ様より魔法力の強いアルト様に出会えたので、文句は無いのですが...。」
「そうか...。」
周囲はまたざわざわし始める。
それはそのはず聖剣クラレントは王オーガイが長年愛用してきた剣。
それを、国を救ってくれた英雄だからってほいほいあげるものではない。
アルトと呼ばれる少年は一体何者なのか?
周囲の注目は一気にアルトに注がれた。
「.................。アルトは...。」
王オーガイが重い口を開く。
「アルトは、私の息子だ。」
謁見の間に衝撃が走った。
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