第91話、感動の再会



俺とヴォイスはアルト達と合流をした。

まだ浮かない顔をしているアルトに、


「アルト。大丈夫だ!俺たちが側に居る!堂々と王城に行こう!」


アルトは俺を皮切りに皆の顔を見る。

皆はそれぞれ自信に満ちた顔をしている。

そこにグラマーな美女が話しかける。


「コウ殿。ちゃんとした挨拶はまだだったな。妾の名前はクラレント。アスタとリスクの姉じゃ。2人と契約をしてくれてありがとう。」


「お、おう。」


めちゃめちゃ美人じゃないか!?

不意の挨拶に不覚にもドキドキしてしまった...。

俺はチラッとヴォイスを見るとシラケた顔で俺を見てくる。

違いますから...。

アルトを羨ましがったり、クラレントのグラマーな身体を触りたいとかそんなことは全然思っていませんからね...。


やれやれって呆れた顔で見てくる。

俺だって男なんだからそういうことを少しは思うのはしょうがないだろ...。

健全な男の象徴です!


「コウ殿?」


「あぁ...。クラレント。宜しくな。君がアルトの側に居てくれると俺も安心して前線で戦えるよ!?」


「何よ!?アンタ!ワタシとラテだと心配だって言うの!?」


「そうよ!?心外だわ!頼りないなんて思われてたなんて...ショックで倒れそう...。」


「そういう事を言っているんじゃなくて、これでアルトがもっと集中して魔法を使えるようになったって事だよ。

リアにラテにボロックも居るんだ!

これで後方強化で磐石な体制が整えられて強敵にもしっかりと戦えるって事。変な勘違いをしないでくれ。

皆の実力は一緒に戦ってる俺が良くわかっているんだから。」


「分かっていればいいのよ!」


「そう言うことね...。なら良いけど。」


「うむ。信頼感は存分にあるのじゃな。」


どこが...!?

今壊れそうでしたけど...。

今度からは言葉には気を付けて喋らないと、地雷がそこら辺に落ちているし...。


「クラレ様。私はヴォイスと申します。

コウ様は渡しませんからね!」


「いくらねーねでもお兄さんは渡さないよ。」

「ん...。渡さない。」


ヴォイスとアスタとリスクが俺の側に来て変な事を言っている。

お願いだから揉める様なことは言わないでくれ...。


「はっはっは!!面白いのぉ!

ヴォイス殿、アスタ、リスク。安心せい!

妾はアルトにしか興味はない。

契約もしておるしのぉ。

妾の戦うのはリアとラテかのぉ。」


ホッと安堵するヴォイスとアスタとリスク。

それとは対照的にクラレントを睨むリアとラテ。

朝からワイワイと賑やかだ。

すると、


「プッ。アハハ。」


「アルト...?」


突然アルトが大笑いをする。


「アハハ...。ゴメンゴメン。

皆を見ていたら悩んでたのが馬鹿みたいだ。

本当にありがとう。

僕はみんなに会えて幸せだよ!」


みんなアルトの笑顔にホッとしたみたいだった。

それにしてもそんな恥ずかしい言葉をサラッと言えるのは流石は王子だな...。

クサイ台詞を言ってもかっこ良く聞こえるし...。

俺なら恥ずかしすぎて言えないし、似合うとも思わないもんな。


俺はアルトの肩を抱いて、


「行こう!王城へ!」


「うん!」


俺たちは王城に歩き始めた。

歩いていると人だかりが出来て中々進めないでいた。

国の英雄を一目見ようと国民が集まってきたからだ。


「参ったな...。進めないぞ。」

「そうだね...。どうしようか?」


そんな話をしていると目の前から騎士団と馬車が群衆を掻き分けてやって来た。


「すいません!こんな騒ぎになるとは思わずに遅れてしまって。どうぞ。これに乗ってください。」


そう言われて馬車の様なものを見ると屋根がない馬車だった。

何でもパレード用の馬車らしい。

そして、騎士団達は道を作ってくれた。

馬車に乗り込み俺達は民衆に手を振り王城に進んでいった。


「ここが王城か...。流石にでかいな。」


「そうだね。久しぶりに帰ってきたけどやっぱり大きく感じるよ..。」


王城に着くと護衛を引き連れた女性が迎えに来てくれた。


「お待ちしておりました。

私はレオンハートの側室のメリアと申します。」


メリア...?

メリアってアルトのお母さんじゃ...?

俺はアルトの方を見ると大粒の涙がこぼれていた。


「お、お母様...。」


「アルト...。あぁ...。私の可愛い愛息子アルト。」


メリアも涙を流しながらアルトに近づき抱き締めた。

抱き合う2人の姿に俺も涙がこぼれた。



一番泣いていたのはボロックだった。


「おぉぉ....。

ア”ル”ドざま”ぁぁ。よ”がっだぁぁ。おぉぉぉ...。」


涙に鼻水にボロ泣きのボロックに若干引いた俺だった。

せっかくの感動を返してくれ...。

せめてもの優しさで俺はボロックにハンカチを渡した。


ハンカチは返さなくて良いからね...。


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