第89話、プレゼント



聖剣騒動が一段落して、俺たちは朝食を食べた。

アルトの側には聖剣クラレントの人化した姿があった。

一言で言うとグラマーなスタイルのお姉さまって感じでクールビューティーって言葉が似合う。

そこに妖精族のリアに獣人とエルフのハーフのおラテ、正式に仲間になったボロックが居た。

中々ユニークにとんだパーティーになったな...。


そこにヴォイスが俺の前に料理を持ってきてくれた。

今日はあんな事があったのにやけに上機嫌なヴォイス。


俺はヴォイスが作ってくれた料理を食べた。

美味しかったというかなんだか懐かしい感じだった。

俺の事を思ってくれたのかなと思うと嬉しい。


「コウ。美味しい?」


「あぁ。美味しいよ。ありがとう。」


ヴォイスの俺の呼び方がやっぱりおかしい...。


「ちょっと話があるんだけど席外してもらってもいい?」

「あ、あぁ...。みんなご飯食べて置いてくれ。ちょっと出てくる。」


「お兄さん、私たちは?」


「アスタとリスクもご飯食べてていいぞ。」


「やったぁ!」

「やったね!これ美味しいね~!」

「うん!美味しい!」


アスタとリスクは美味しそうに朝食を頬張る姿が微笑ましい。

聖剣って食事必要なのか?

疑問に思うところはあるがこの世界にあることを気にしても仕方ない事なので聞かないでおこう。

それよりもヴォイスだ...。

俺は席を立ちヴォイスの後を追う。


公園のような広場に着くと


「ここら辺でいいか...。」


ヴォイスが俺の方を振り返る。

そして素敵な笑顔にドキッとしてしまう。

それはそうだろう。

彼女のミアと瓜二つの姿なのだから。


「まだ気づかない?コウって案外鈍いよね...。」


「え...。」


「やっぱり気づいてないじゃん。もうコウのバカ!!」


その言い方、立ち振舞い。ま、まさか...


「ミアか?」


「もう気づくの遅い!!昨日からずっと僕だったのに!!」


「昨日からって...。いつから入れ替わってたんだ?」


「コウが剣舞祭で優勝した後だよ。一言言いたくてさ!コウ!優勝おめでとう!」


「その為にわざわざ...ミアありがとう。」


「素直でよろしい!ちなみにヴォイスは僕の本体に居るから安心してね。なにかあったらすぐ変われるし。」


「そうだったんだな...。ってことは昨日の夜もミアが...?」


「もう!そんな恥ずかしい事思い出さないでよ!コウのエッチ!!」


ミアはこれでもかって位、赤面した。

俺も昨日の事をおぼろながら思い出して恥ずかしくなってしまう。


「コホン。コウは見たものをコピー出来るんだよね?」


「あ、あぁ。

[ミヨウミマネ]だけどな。最初から完璧にはコピー出来ないけど、それがどうかしたのか?」


「コウの優勝のプレゼント何にしようか迷ってたんだけど、僕の剣技をプレゼントすることにしたんだ。剣もよかったんだけどもう聖剣もらっちゃったしね。」


「剣技?ミアが...?」


「あっ!その顔はバカにしてるな~!?」


「し、してないよ!」


俺は首を横に振って必死にバカにしてないアピールをする。


「本当にコウって僕には嘘がつけないよね...。そんなコウだから好きなんだけどさ。まぁいいや。僕はこれでも300年は生きているんだからね!今の時代の剣聖より強いだぞ!」


そっか...。

300年前に転生してきたっていってたもんな。


「僕を転生してくれた女神様が送る時代を間違えたと言うことで、3つの願いを叶えてくれる事になったんだ。」


女神...?

この世界には神は何人もいるのだろうか...。

俺は黙ってミアの話を聞く。


「そこで一つは種族の変更。

人間なら300年は生きてられないから長寿の種族に変えて貰ったこと。

ちなみに私は魔人族。

魔人族って言っても日本の知識の魔人とは違うからね!

この世界の魔人族は魔力を膨大に持つ種族って事だから。見た目は普通の人間で魔族とは全くの別物だからね。」


「そうなんだ。勉強になるわ。」


魔人族と魔族の違いがわかったのは有益な情報だ。


「それで2つ目は女神様に剣の稽古をつけて貰ったの!そこで覚えたスキルが神剣術。

魔力がバカみたいにかかるから魔人族の私にはうってつけだったって事。その中でコウが使えそうな技を教えようかなと。」


「なるほど...。そして3つ目の願いは?」


「3つ目は.....内緒。

これは直接あったときに言うね。

さてと...。」


そう言ってミアは剣を取り出して準備を始めた。

めちゃめちゃ気になるのだが... ここで聞くのは野暮ってもんだろう。


「ってここでやるのか...?

その危なくは無いか?」


「大丈夫だよ!どこにも当てないしね!ただこれを使っちゃうと魔力が枯渇して本体に戻っちゃうんだけどさ...。」


リアは寂しそうな顔で言う。


「すぐに逢いに行くさ!」


「ありがと。でもそこは普通行くな!でしょ...?コウらしくて良いけどさ。」


「ご、ごめん。」


「すぐに謝らないの!一晩一緒にい居れて嬉しかったよ。落ち着いたら迎えに来てね。」


「あぁ。必ず迎えに行く!」


「よし!それじゃぁ始めるよ!」






圧倒的神々しさ...。

ミアの剣技に見惚れて息をするのを忘れるほどの剣技だった。


「ハァハァ...。コウの役に立ったかな...?」


「あぁ!ミアありがとう。」


「良かった。コウ我が儘行っていい?」


そう言ってミアが両手を広げて俺を見る。

俺はすぐさま駆け寄ってミアを抱き締めた。


「この温もり。コウの匂い。落ち着くなぁ...。

コウ...またね。」


「あぁ。またな...。」


そう言うとミアは目を瞑った。



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