第88話、聖剣騒動



チュンチュン...。


鳥のさえずりが聞こえる...。

朝か...。

昨日は楽しかったな。

ボロックが加入したあの後、リアが


「いいこと!!

新人は一発芸しないとダメなの!

ボロック!アンタなんかしなさいよ!!」


「え...。」


困惑したボロックがやったのは...。



裸躍りだった...。


女性陣ドン引き...。

アルトもドン引き...。


ただ俺はそのスベった空気が面白かったので大爆笑した。

そしたら、皆ドン引きしてた。

自棄になったボロックと酒が進み気づけば今だ...。


二日酔いが無いのはヴォイスが寝てる間に解毒の魔法を掛けてくれたんだろうな。

優しいな...。


ヴォイスに感謝しつつ、両腕に違和感があることに気づく...。

柔らかいのが当たってる。

それも両腕だ...。


昨日はヴォイスと寝てたハズなんだが...


恐る恐る毛布を捲ってみる...。

すると、


2人の美少女が全裸で寝ているじゃあ~りませんか。

って俺も裸だし...。


.....。

.............。

.......................。



俺の思考が停止する。


ちょちょちょちょっと待て...。

本当に何が起きたんだ...。


ダメだ...全然思い出せん...。

こんな所をヴォイスに見られたら俺はきっと殺されてしまう...。

どうする?どうするのが最善だ?

俺がパニックになっていると無情にも最悪な時間が来てしまう。


コンコン。


「マスター。起きました?入りますよ?」


「起きたけどちょっと待っ...。」


ガチャ。

俺の返事を聞かずにヴォイスはドアを開けた。


「コウ...。貴方何をしているの...?」


ヴォイスの声が聞いたこともないくらい低く俺の身体は身の危険を感じていた。


「ちょっと待って!俺にも何がなんだか分かんないんだ!」


「僕がコウの為に朝ごはん作ってたのに...」


ヴォイスの口調かかなりオカシイ...

まるで別人のような...

って今はこの窮地をどうにかしなければ。

どうする...どうすればいい....


「一つ聞いていいか?」


「なに...?」


今にも泣きそうなヴォイスの顔を見ると辛いが俺は何もしていない事を分かってもらわなければ。


「ヴォイス。この部屋を出たのはどれくらい前なんだ?」


「一時間前くらいだけど... それが何なの?」


「そのとき俺は寝ていたし、

一時間でこんなことするわけ無いだろう。

冷静に考えれば分かる事じゃないか?」


「確かに...。コウが寝ているときは1人だったのを確認したし...

アッ!!

ちょっと待って!鑑定!」


鑑定?

そうか!鑑定すればこの子達が何者か分かるもんな!


「鑑定!」


俺も鑑定をした。

すると驚愕の事が判明した。


正体は...


女の子の姿をした聖剣のアスタとリスクだったのだ。


「え!?」

「はっ!?」


俺とヴォイスは目が合い変な声で反応した。

聖剣の置いてあった場所には鞘が2本置いてあった。中身が無い。

これはどういう事なんだろう...?

ヴォイスと一緒で魔法力を使って人化しているとか?

でも俺の魔力は減ってないしな...。


そんな事を考えているとアスタとリスクが起き出した。


「ん...おはよぉ...。お兄さん起きたんだぁ...ふわぁ~。」

「ん...。おはよぉ...。まだ眠いよぉ...。」


「あ、あぁ。おはよ。ってちょっと待て!何で聖剣が人の姿になってしゃべっているんだ?」


「ん...。何でって、私たちと契約したじゃんか...。」

「ん...。契約すると主に適した姿に変われるの。」


「俺に適した姿って...。何で裸なんだよ。」


「だってお兄さんそこのお姉さんと裸で抱き合ってたから...」

「うん。激しく抱き合ってたからお兄さんはそういうの好きなのかなって...。」


そんな話を聞かされてヴォイスは顔を真っ赤にさせてた。

普段のヴォイスなら動揺しないのに...

今日は変だな...。


「いや、確かにな。でも急に裸で隣に居たらビックリするだろう...。」


「え...?だってお兄さんすごい幸せそうな顔で寝てたから。」

「本当に幸せそうな顔でお姉さんの事を寝ながら触ってたからそういうのがいいのかなって。」


待って恥ずかしいんですけど...

ヴォイスを見ても全然目も合わせてくれないし...


「ま、まぁ。わかったから取り合えず服を着てくれないか?」


「お兄さんは裸嫌い?」

「嫌なの?」


「嫌とかそう言うのじゃなくて、気まずいからさ...取り合えず着てくれ。」


「しょうがないな...。」

「お兄さんがそう言うなら...。」


アスタとリスクが聖剣の鞘に近づくと鞘が分解して2人の体に装着される。

すると冒険者風の格好に変わった。


「これでいい?」

「可愛いでしょ?」


「あぁ...。可愛いよ。ちゃんと聖剣に戻れるのか?」


「戻れるよ。戦闘になったら戻るから安心して。」

「うん。ずっと宝物庫に居たからこの世界を見てみたいから戦闘までこのままでいい?」


「ずっとって...。どれくらい宝物庫に居たんだ?」


「 300年くらいかな...。」

「その前は洞窟だったもんね...。」

「長かったね...。」

「うん。初めての契約だったし、外に出るのが初めてなんだ...。」


そうなんだ...。

ずっと長い間2人で居たんだって思うと泣けてくる。


「あぁ。戦闘になるまでこのままでいいぞ!仲間たちには俺から言うから。」


「ありがとう!お兄さん大好き!!」

「本当にありがとう!」


そう言うと2人は俺に抱きついてきた。

なんだか可愛い妹が出来た感覚だな。

俺は2人の頭を撫でる。


「クラレお姉ちゃんも契約終わっているからそろそろ起きるかな?」

「そうだね。お姉ちゃんにも早く逢いたいね。」


「クラレお姉ちゃん?」


「うん。お兄さんの仲間の人が持っている聖剣だよ。」

「聖剣クラレントだよ。」


あぁ。アルトが親父さんから貰った聖剣か...。

人化したら大変だろうな...。

って思っていると案の定


「キャァァァァァーー!!アンタ誰なのよ!?」

「アルト君から離れなさい!?」


やっぱり...。

隣の部屋でリアとラテが騒いでいた。

俺たちが部屋に行って事情を説明したら渋々納得はしてくれたが...。

リアとラテとクレアの三つ巴の戦いが始まりそうな勢いだった。

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