第87話、これは呪いか!?
外に出ると大勢の観客達が俺たちを待っていた。
アルト様ありがとぉ~!やら、
アルト様カッコいいやら、
ボロック様抱き締めて~!!とか...
俺は!?
俺の周りには男の荒れくれ者ばっかり居る。
兄貴!!カッコいいっす!とか一生ついていきますとか...。
女子は!?
女子はどこ行ったのよ...。
俺の回りは男だらけってこれはもう呪いだよ...。
こっちに来るときにあの神様はそんなことは言ってなかったけどな...
ステータスにもそんなバッドステータスは無いし...。
ただモテないだけだったらショックだ...。
こんだけ女性は居るのに...。
そんな風に思っているとヴォイスは呆れた顔で俺を見ていた。
俺だって少し位モテたいんだよ...。
せっかく優勝したのに...。
めちゃめちゃ悲壮感に包まれ、観客達にもみくちゃになりながら俺たちはコロシアムを後にした。
そして、連日通ってる個室のレストランに行くとテーブルの上には料理がたくさん運ばれてくる。
そして、グラスにお酒が注がれると、
リアが仕切り出した。
「皆グラスは渡った?アンタ一言言いなさい!」
「え!?」
急に俺に振られてキョドって居ると、
「当たり前でしょ?
アンタの優勝祝いとレオンハート王国の危機回避のお祝いじゃない。
リーダーのアンタが音頭取らないでどうすんのよ!?」
皆もリアの言うことに頷いている。
俺こういうの苦手なんだけどな...。
(大丈夫ですよ...。皆仲間なんですから。)
そうだよな...。
ヴォイスの念話に後押しされ俺は意を決して話す。
「皆、今日はお疲れ様。
本当に良くやってくれた。
お陰でこの国を守れたし、優勝もできた。
本当にありがとう。これからもこういう危機はあるかもしれない...。
けど皆と一緒なら乗り越えられると思う。
皆これからも宜しく頼む。」
皆、真っ直ぐに俺を見てくれて頷く。
「それでは乾杯!!」
「「かんぱぁぁい!!」」
俺たちは和気あいあいとレストランの料理に舌鼓をし、楽しく飲んだ。
が、アルトは一人浮かない顔をしていた。
俺はアルトの隣に行き、
「どうしたんだ?やっぱり明日の授賞式か...?」
「うん...。追い出された身だからね。
今さら王宮に行きたいとは思わないんだ。冷遇されてた訳だし...。」
「まぁ、そうだよな。今さら仲良くは出来ないとは思うし、する必要はないと思う。
許さなくても、アルトにとっては血の分けた家族だから顔くらいは見せてもいいんじゃないかな?」
何故俺がこんな話をするかと言うと俺の前世に居た頃の生い立ちにあった。
俺は幼少期義理の祖父に事あることにいびられて何度も家を飛び出した。
子供が一人生きていける筈もなく、自分で働ける年になるまで殴る蹴るは当たり前、言葉でも当たりはキツかった。
精神的にも病んだ時期もあった。
働ける歳になり、高校も中退し家を出た。
そして10年後、義理の祖父が死んだ。
葬式に出席するも当然涙は出なかったが、心に穴が空いた気がした。
あんなに嫌いだったのに...。
もっと真っ直ぐ向き合えば何かが変わったんじゃないか?
少しの後悔をずっと引きずってしまってたのだ。
アルトにはこんな思いはして欲しくない。
ここで会わなければ後悔する気がする。
俺の勝手な想いだが後悔しない為にもアルトと家族を会わせたい。
「アルト...。大丈夫だ。
俺たちがいつもアルトの側に居る。
もし理不尽な事を言われたなら国を敵に回しても俺はアルトを守るよ。」
話を聞いてた皆もアルトの目を見て頷く。
「コウ君...。皆...。うん。ありがとう。
明日一緒に行くよ。」
「よし、良く言った!アルトもう少し飲もうぜ!!」
「うん!」
「アルト様!!安心してください!
もしなんか合ってもこの精霊族のリアがバッチリ守るんだから!!」
「リア...。ありがとう。」
「何言ってるの?アルト君を守るのは私なの!アルト君に何かあったら私の弓矢の錆びしてくれるわ!」
「ラテさん...。ありがとう。」
「いやいやお二人とも!
アルト様を守るのはこの大盾を持つ私の役目じゃ無いですか!?」
「ボロックさん...。貴方国側の騎士でしょ!?
そんな事言っていいの?」
「そーよ!そーよ!!
国王になんか言われたらアンタ守れんの!?」
二人はボロックに当たりがキツいな...。
ボロックは意を決した顔をしてとんでもない事を言い出した。
「私は王国騎士団を辞めます。といいますかもう辞表を出してきました。受理されれば辞められます!」
「「えっ!?」」
みんな突然の報告に驚いた。
「皆様にお願いがあります。私をこのパーティーに入れてくれませんか?お願いします!!」
ボロックは深々と頭を下げて懇願してくる。
俺としてはパーティーに入ってくれないかなっと思ってたから大歓迎なんだが...。
「ボロック...。」
「アルト様。」
「ボロックはそれで良いの?僕達は嬉しいけど...。」
「はい!先程一緒に戦わせて貰ったときにもっと一緒に戦いたいと。
私の意思です。
アルト様が城を追い出された時について行けなくて本当に後悔したんです。
是非連れていってください。」
ボロックの熱意は本気だ。
目を見れば分かる。
「わかった。コウ君ボロックをパーティーに入れてもいいかな?」
俺の返答は決まっている。
「もちろん。実は、俺から誘おうと思ってたんだ。これからも宜しく頼む。」
俺はボロックに手を差し出す。
ボロックもその手を握り返して、
「はい!」
そう答えた。
「ボロック...。アルトには無理かも知れないけど、俺には敬語は止めてくれないか?
急に敬語で話されると何かむず痒くなる...。」
「そうだな。コウ、これから宜しく。」
「あぁ!」
俺たちのパーティーに新たな仲間が加わった瞬間だった。
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