第83話、聖剣クラレント



俺はカマエルとヘンリーを相手に攻防戦を繰り出していた。

2人のコンビネーションは凄まじいもので隙がない...。

常に俺の前と後ろの位置を取ってくるのだ。

防いでばかりだから、だんだんフラストレーションが溜まってくる。


しかし、今俺がやることはアルトの魔法が完成するまでの時間稼ぎだ。

大規模魔法の為に構築時間が長い。

昨日覚えたばっかりだから仕方ないが...

俺は剣を交わらせながらカマエルと対話して気をこっちに向けようとしてた。


「カマエル...。お前の目的は何だ?」


「そんな事をわざわざ俺が教えると思うか?」


「だよな...。この国の乗っ取りならわざわざこんな茶番に出るわけ無いから、他に目的はあるんだろう?」


「さぁな。知りたければ力ずくで聞いてみろ。」


「となると、聖剣か?それとも他に目的が?

しかも、この大型魔術お前がやったんじゃ無いだろう?」


もしカマエルが洗脳の大型魔術出来てたなら、初日からやればいいのだ。

しかし、それをやらなかったってことはカマエルでは無いと俺は踏んでいる。


「....。お前中々にウザいな。」


「そんな事は無いと思うぞ...。少し考えれば分かることだ。」


俺と喋ってるカマエルは何だかイライラしている。


「カマエル...。お前はルシフェルの仲間だろう?」


「ルシフェル?あぁ...あのムカつく半端者か。

あんな序列にも入ってないオモチャと一緒にするな!

あの方もあんな奴の何がいいんだか...。

クソ!思い出すだけでムカつく。

胸くそ悪い...。」


やはりか...。

もう少し情報を聞き出したいが、これ以上怒らせても良くない気がする。

俺は会話を止めて2人の剣に集中する。

気は抜けないな...。



一方アルトは焦っていた。

リアも魔力を貸してくれてはいるが錬度が足りない...。

このままだとほぼ失敗する...。

どうしたらいい...。


(アルト...。大丈夫ですよ。

私が今そちらに行きます。)


アルトの頭に聞いたことの無い声が響いていた。


「だ、誰?」

僕は驚いて思わず声を出した。

辺りを見渡すが...。

声の主は特定出来なかった。


(私の名前は聖剣クラレント。

今貴方の兄のウィリアムに頼んで私を運んで貰っています。)


「聖剣クラレント?

それって父上の剣じゃ...。」


(あの方は私を持ってただけに過ぎません。

聖剣にも相性があるのですよ。

私の本質は魔法剣。魔法の力を10倍近く向上させることが出来ます。

アルト...。貴方が生まれた時に私は貴方に使われたかったのです。[賢者]で[英知の書]を持つ貴方に。)


「そうだったのですね...。分かりました。

僕は何をすれば良いですか?」


(私がたどり着くまでに魔法の構築を終わらせて下さい。

私の力を解放させます。

そうすれば100パーセント魔法を成功させることが出来るので。)


「100パーセント魔法が成功する?

本当ですか?」


(はい!任してください。それではお願いします。)


「分かりました!」


僕は魔法の構築することに集中した。






聖剣クラレントを運んでいる最中のウィリアム。

大量の兵士と観客に囲まれていた。


アルト達がいる場所まで、後100メートル。

近いようで遠い...。

全て殺してしまえば楽に行けるのだが...。

洗脳が解けたら確実に牢屋に入れられてしまう。

しかも。死罪は免れないだろう。

どうする...?


ウィリアム悩んでいた。


(ウィリアム。何とか早く辿り着いてください!)


「分かっているが、人が多すぎる...。

これでは通れないんだよ!」


(道が無いのなら作れば良いのですよ。

私が少しだけ力を貸します。)


そう言うと目の前の大勢の兵士達がぶっとんでいった。


(ウィリアム!飛んでください!)


ウィリアムは言われるがままジャンプした。

そして空中をホバーリングして行く。

もう少しでアルトの元にたどり着く...。





しかし、そうは問屋が下ろさなかった。


「ヘンリー!アイツを止めろ!!」


カマエルがそう言うとヘンリーはウィリアム王子の元へ瞬時に駆け出した。

そして、ウィリアムの背中に袈裟斬りを放ったのだった。

不意の攻撃を受けて....は無かった。

聖剣クラレントが張る結界がウィリアムを守ったのだ。





そして、




「アルト!聖剣を!」


「ウィリアム兄さん!ありがとう!」


「父上を!ヘンリーを!レオンハートの民を守ってくれ!頼む!」


ウィリアムは懇願する。

アルトは兄であるウィリアムのそんな姿を見たことが無かった。


「兄さん!任して!行くよ聖剣クラレント!」


(はい!)


聖剣クラレントを持ったアルトの魔力が爆発的に上がっていく。


それを察知したカマエルが阻止しようと動くが、


「どこ行くんだ?カマエル...。

お前の相手は俺だろ?」


「うるさい!そこをどけ!」


取り乱したカマエルの剣を弾き返すなんて俺には造作もなかった。


「ク、クソ!ヘンリー!!ソイツを止めろ!」


その声に動こうとするヘンリーだが、


「我が弟ヘンリーよ。お前は私が止める。」


第一王子ウィリアムが立ちはだかるのであった。


2組の剣技が交差する。

ボロック、リア、ラテ、ヴォイスがアルトを死守する中、アルトの魔力が極限まで高まった。

そして、




「聖なる言の葉の辞書よ。我が言葉に従い範囲にいる全ての呪いを打ち砕け!!



極限範囲解呪アルケミストディスペル!!」


アルトが唱えると聖なる光がコロシアム全体を包むのだった。

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