第77話、準々決勝2



俺はムサシに勝って控え室戻る途中ボロックとすれ違った。


「カマエルがコウの事をぶつくさ言ってたぞ。

本当気を付けろよ。」


「あぁ。これから試合なのにありがとうな...。

ボロック負けるなよ!」


「当たり前だ。勝ってくる。」

俺はハイタッチしてボロックを見送った。


そして、控え室に入るとカマエルから殺気を感じたが、俺はそれを無視してモニターのボロックを見た。


何故カマエルは俺を目の敵にしているのだろう。

理由は一つしか考えられない...。

ヤツはルシフェルの仲間なのだろう。

ルシフェルアイツが言ってた我が主・・・とやらが関係しているのは明白だ。

ただ、鑑定・全でいくら見ても至って普通なのである。

カマエルは何かを狙っている?

考えるは聖剣しかないんだけど...

聖剣は聖属性の剣でアイツらは装備はおろか持つことさえも出来ないはずだ。

俺が色々考えているとボロックの試合が始まりそうだ。


「それでは、準々決勝第2試合始めます!

傭兵のカイン・ザナック選手!!

続きまして、

第一騎士団所属ボロック・ゴンザレス選手!!」


観客は相変わらず盛り上がっている。


「第2試合....始め!!」


先制攻撃をしたのは傭兵のカインだ。

ボロックは大盾を装備している為、スピードではかなり劣る。

しかし、そのスピードを補うほどの凄まじい防御力を備えている。


やはり、カインもボロックの防御力の前に攻めあぐねている様に見える。

しかし、さすがは傭兵で戦いなれている。

剣で無理なら身体でぶつかったり、蹴りをしたりまさに何でもアリの戦法だ。

ここがダンジョンや森ならばボロックには勝ち目がないように思うが、ここは闘技場の1対1。

しかも、何もないところだと防御力の高いボロックの方が優勢だろう。

次第にカインの動きが鈍くなってくる。

全力の攻撃なんてそんなに長続きするものではない。

カインが肩で息をし始めるとボロックが動いた。

ドンドンと重い足音がモニター越しにも伝わる。

カインはボロックの圧に少し後ずさりしてしまう。恐怖に固まってしまったのだろう。

そこにボロックが剣を振りかざそうとしたその瞬間!!


「参った!!降参だ!!」


カインがリタイアした...。

結局ボロックは一度も攻撃することなく相手を倒してしまった...。

負ける気は全然しないがタンクとして本当にスカウトしようと決めた。

それがパーティーとして最善だと思う。


次はカマエルの試合か...。

果たしてどうなるんだろうか。

少しでも力の一端を出してくれたら、俺も体制のとりようがあるんだが...


そんな事を考えている時に、


(マスター!めっちゃ稼ぎましたよ!!

もう見たことも無いくらいのお金でやばいですぅ~!

これで美味しい物たくさん食べれる~!

ほんと最高!!)


おいおい...

今の試合見てなかったのかよ...


(すいません~!換金してて全然見てなかったですぅ~!)


あ....そ、そう...

まぁ、良いんだけどな...


俺はあまりに緊張感ないヴォイスの言葉に力が抜けたが、


ヴォイス!


(は、はい...!)


次の試合はカマエルが出るから気持ちを切り替えろ!!

鑑定をずっとして変な所があったらちゃんと報告するように!!


俺は気を引き締めるためにも強めに言ったら、


(たまには良いじゃないですか...?

そんなにガミガミ言わなくても...。)


えぇ...。おれが悪いの?

理不尽な反撃に納得は言ってないけど、

機嫌を損ねると色々後で大変だから大人の気持ちで、


あのお願いだから次の試合集中して見て欲しいんだけど、お願い出来ますか...?


と言った。すると...


(しょうがないですね...。ちゃんと愛してくれたら良いですよ。)


おぉぉい!!何でこうなった...?

こんな病んデレだったか?

あぁ...

今は緊迫してるときなのに緊張感が抜ける。

もういい。

俺が全て終わらせれば良いんだから。


ヴォイス...。


(冗談ですよ!!ちゃんと見ますから!

怪しいところあったら真っ先に言いますから!!)


いや、無理しなくて良いから...


(出た...。そう言う所ですよ。

いつもミア様とケンカする所。

マスターはそれが優しさって思ってるかも知れませんけど、こっちからしたらただの放任ですから!

ちゃんと言いたい事は口に出してください。

私が今マスターの隣に居たら、ビンタしてました!ちゃんとミア様の承諾済みです!!)


す、すいませんでした... .

何で俺が怒られているんだろう...。

落ち込んでいると試合を終えたボロックが近づいてきた。


「お、おい。コウ大丈夫か?この世の終わりみたいな顔をしているぞ...。」


ボロックを心配させる程の顔をしていたのか...

気持ちを切り替えなければ..

俺は両頬をパンッと叩いてシャキッとさせる。


「ボロック。圧巻の試合だったな。

次の準決勝で戦うのが楽しみだな。」


「私も楽しみだよ。全力で行くからな。」


「あぁ。」


ボロックとの対戦を楽しみにしつつ、次はカマエルの試合だ。

俺は少しの違和感も逃さず観戦する事に集中した。

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