第73話、私怨
カマエルをマークするが一向に変な所が出てこない。
しかし、ボロックは嘘を言う奴ではない。
向こうも俺を警戒しているのだろう。
と言うか何故カマエルは俺の事を知っている?
俺はあったときないはず。
どこかですれ違った?
酒場であった?
分からない...
ただ不安だけが募っていった。
そして、第三試合も終わった。
勝ったのは傭兵のカイン・サナック。
傭兵だけに様々な修羅場を経験してきたのだろう、剣技だけじゃなくて身体全体を使った戦いをしていた。
次は、ボロックの出番だ。
カマエルの事はマークしつつモニターを見つめる。
ボロック・ゴンザレス(17)LV70
第一騎士団所属
職業・大盾騎士
モニター越しの鑑定だと精度がかなり落ちる。
相手は
アトランテ・フォーレン(20)LV80
Aランク冒険者
職業・
レベル的にボロックが負けてるが大丈夫なのか?
俺は心配しながら試合を観戦した。
「続きまして、第4試合
ボロック選手対アトランテ選手の試合です。
それでは第4試合始めぇ!!」
カァーン!!
ゴングが鳴らされた。
先に動いたのはアトランテだった。
さすがAランク冒険者スピードで圧倒している。
しかし、ボロックの大盾は相当な防御力でビクともしていない。
攻防は膠着状態で、ボロックは防戦一方だった。
アトランテの細剣では致命的なダメージを与えることは出来なかった。
ボロックは何かを狙っているようにじっと耐えていた。
そして、その時は来た。
アトランテが攻めあぐねている一瞬を見逃さずボロックが攻めに転じた。
大盾を構えたままアトランテに突進する。
不意を付かれたアトランテは体勢を建て直そうとするが時すでに遅しボロックの
「勝者ボロック選手!!
王国騎士団が初めて初戦突破しました!」
観客は盛り上がってる。
いい試合だとやはり盛り上がるな...
いいなぁ...
俺も盛り上がる試合がしたいな...
フラストレーションが溜まるが仕方ない...
俺の事はとりあえず置いておこう。
今考える事は次の試合だ。
近衛騎士のカマエルが出る。
怪しいところがないか見逃さないようにしないと。
ボロックが試合を終わり控え室に戻ってきた。
「ボロック!凄いじゃないか!
あの防御力は相当凄いぞ!!」
「あ、ありがとう。何かそういう風に褒められると照れる。」
「次の試合もお互い勝とうな!!そうすれば準決勝で戦えるし!」
「そうだな。私もコウと戦えるのは楽しみだ!コウと戦うために次も必ず勝つよ!」
俺達は準決勝で戦うことを再度、約束をして次の試合の観戦に集中した。
「それでコウ。カマエル殿はどうだったのだ?」
「今の所怪しいところは無かった...。
でも、何かを隠しているのかも知れない。
俺の直感でしかないけど...
嫌な不安が消えない...」
「そうか...。なら私もコウを信じるよ。
2ヶ月くらい前から王都の様子徐々に変わってきて変だなと思ってたんだ...。
ヘンリー王子に過剰な程の警護は付くし...。」
「なるほど...。ヘンリーから王国内部に入って何かをしようとしてたのかも知れないな...」
これから何が起きるのか分からないが、今はカマエルの試合を観戦する事にした。
「これから第5試合始めます。
近衛騎士カマエル・クロノス選手。」
「キャー!!クロノス様素敵~!!」
「こっち向いて!キャー!今私の事見てくれたわ!!」
どこからか湧き出たのか女子達の声援が凄かった。
グヌヌ....。
少しばかり顔が良いからって...。
あんなに女子の声援を受けて....
羨ましすぎるぅぅ!!!!!
「コウ...。」
ボロックが可哀想な奴を見る顔で俺を見ていた。
だってしょうがないじゃないか!!
羨ましいんだもん!!
お願いだから、そんな目で見るなよ...。
「コホン。いかんいかん。集中しておかしな所を探さねば。」
俺は平然を装ってあえて口に出して言ってみる。
「プクク...。ダメだ。我慢できない!ハハハハッ!!
本当にコウは面白いな!」
ボロックは俺の行動を見て大笑いしている。
笑うなよ...。恥ずかしいじゃん...。
「カマエル殿の声援がそんなに羨ましかったのか?アハハハ!!」
「だからそんなに笑うなって!!」
「だって、コウの顔が...顔が...アハハハ!!
笑いすぎてお腹痛いッ!!」
どこにツボってんねん!!
俺の顔ってそんなに面白いかな...。
俺は確認の為にヴォイスに念話で聞いてみる。
ヴォイス...。俺の顔って面白いか...?
(どうしたんですか?急に...)
いや、ふと気になってな...
(ええ、面白いですよ。心を読まなくても顔で全てを語ってますもん。
例えば、今出てきたカマエル選手の女子からの声援を聞いたときの顔とかね。
想像すると笑えます!プププッ!)
もういい!!
ヴォイスとの念話を切って、俺はいじけながらもモニターを見た。
あれ?視界がぼやける。
気付いたら頬に一滴何かが流れていた。
集中しなきゃいけないのに...。
クソ!!こんな気分になったのは全部カマエルのせいだ...。
許さん...!!
俺は、私怨前回でモニター越しのカマエルを睨むのだった。
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