第74話、カマエルとヘンリーの実力




カマエルの試合が始まろうとしていた。

相手はAランク冒険者ディード・ハーメルン。

LVは80で中々の強さだと思う。


「第5試合始め!!」


カァーン!!


試合が始まったと同時にディードが動き出した。

それに合わせてカマエルも動き出す。


お互い剣を振りかざす。


ガキーン!!


お互いの剣がぶつかって火花が舞い散る。

はたから見るには2人は互角。

2人の剣技は見るものを魅了するくらい激しい攻防を繰り出していた。


しかし俺は攻防の中、カマエルが一瞬にやけたのを見逃さなかった。

カマエルは全然本気を出してないはずだ...。

わざと互角を演じてるのか?

何の為に?

謎が深まるばかりだ。

まさか、俺を油断させるために演じてるとか...

それは考えすぎか...


カマエルとディードの攻防はさらに激しくなっていった。

しかし、徐々にカマエルが押してくる。

ディードはカマエルの攻撃を捌ききれなくなり、最後はディードの首筋に剣を寸止めされてディードのギブアップで勝負が着いた。


「試合終了!勝者カマエル選手!!」


「キャー!!クロノス様素敵~!!」

「私もクロノス様にノックアウトよ!!」


女子達の声援が鳴り止まなかった。

本当にすごい女子人気だな...

この後に試合やりづらいわ...                                                                                          

次の試合の方々ご愁傷さま...。


そんな事を考えていたが、一番大事なカマエルの事は結局分からずじまいだった...。


控え室に戻ってきたカマエルと一瞬目があった。

しかし、カマエルは気にする様子もなくヘンリーの元に戻った。

俺の杞憂ならいいんだが...


そして第6試合、第7試合が終わった。

この後は洗脳されている王国第二王子ヘンリーの出番だ。


「本日最後の第8試合を始めます!!

まずは、Aランク冒険者ギスコ・バディ選手です。

ギスコ選手は男だらけのこの大会で唯一決勝に行った女性の選手です。」


「ギスコちゃぁーん!!頑張れ!!」

「僕たち親衛隊が付いてるよ!!ギスコちゃんファイトォォ!!」


ギスコの男性人気が凄まじいかった。

それはそうか...

アイドル並みのルックスにビキニアーマーを装備して片手剣を構えていた。

そして、客席に手を降ると親衛隊と名乗ってた者達が躍り狂ってた。

この世界にもオタ芸ってあるんだな...

なんか感慨深い...。


「続きまして、レオンハート王国第二王子!!ヘンリー・フォン・レオンハート選手!!

ヘンリー王子は剣の神童と言われ代々続くレオンハート家の中でも最強と名高いんです。

この試合でもその実力は発揮されるか!?」


ヘンリーは顔から感情は一切でず、淡々と聞いている。

さすがに、王子なだけあって人気は凄まじい物がある。


「それでは、本日最終第8試合開始!!」


カァーン!!


試合が始まった。


ヘンリーは試合が始まったのに全く動こうとはしない。

ギスコは構わずヘンリーに向かっていく。

中々のスピードだ。

そして、片手剣を振り下ろした。

その剣はヘンリーに届くことはなく倒れていくギスコ。

観客には何があったか理解は出来ていないが、俺には全部見えていた。

超高速剣。その速度はコンマ1秒もないくらいのスピードに5回の剣撃を放ったのだった。

鞘のまま打ち込んだから手と足が曲がっちゃいけない方向に曲がっている。

そして、最後は意識を断つために首元に打っていた。

これが鞘を抜いていた剣ならば全て切り離されてたであろう。


「し、勝者ヘンリー王子...救護班は急いでください!!」


会場は静まっていた。

拍手もなく、恐怖に支配されて声も出せない雰囲気になっている。


完全にやりすぎだ...。

ヘンリーはその静けさの中、平然と歩いて控え室に戻って行く。


その控え室ではカマエルがニヤニヤといやらしい笑みを浮かべながらモニターを眺めていた。


ギスコは救護班に回復魔法を掛けられた後、担架で運ばれていった。


「ほ、本日の試合は以上で終了となります。

明日は準々決勝と準決勝を行いますのでまたお会いしましょう!!それでは、明日もお楽しみに...」


リングアナウンサーが気丈に振る舞って本日の試合の終了を告げたが会場はまだザワザワしている。

最後の試合の事だろう...。


「ヘンリー王子は本当洗脳されてるんだな...

あの方はあんな戦いをする人では無かった...。」


「そうなのか?」


「あぁ。私がお城で騎士団の訓練をしてたときに時たまヘンリー王子が混ざって訓練をしてたことがあったが、ヘンリー王子は目立ちたがりで大振りな剣しか覚えようとはしなかったが、やはり近衛騎士の影響か...」


「あの剣技見えたのか?」


「何とかな...対峙してたら反応は出来てたとは思わないが...」


ボロック...やっぱり中々強いな。

ヘンリーが控え室に戻ってくるとカマエルが近づきそのまま控え室を出ていった。

控え室を出る瞬間、カマエルは俺の事を一瞬見ていった。


「我々も出ていくか...」


「あぁ...。」


俺とボロックも控え室を後にして、

ボロックは騎士団の用事があると言って先に行った。


俺は入り口でヴォイスとラテを待った。

5分くらい待っていると2人が近づいてくる。


「マスターお疲れ様でした。」

「コウ、お疲れ様。」


「あぁ。外から見て何か変わった事無かったか?」


「特には無かったですね。

ですが...ヘンリー王子の試合は異質な力を感じました。あの感じは、まるでルシフェルと似た感覚とでも言いますでしょうか...。」


「そうね...。あのギスコちゃんが攻撃を繰り出した時に一瞬だったけど似たような寒気はしたわ...。」


「そうか...。」


やはり、ルシフェルの仲間か...

俺達はブロックが違うからカマエルとヘンリーどっちかと戦うのは決勝戦になりそうだが、色々な準備はした方がいいな...。


「よし。これからアルト達に合流して今日あったことを報告と、何かあるかもしれないから対策を皆で話し合おう。」


「はい!リアに念話を送りますね。」


俺達はアルト達と合流して個室があるレストランに向かった。

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