第66話、ボロック





大柄な男はじわりじわりと近づいてくる。


「すまない。」


「へ?」


急に大男に謝られて身構えてた俺は変な声がでた。


「私の名前はボロック。王国騎士団に所属しているものだ。」


「そ、その騎士団の人が俺に何の用なんだ?」


「いや、貴殿に用があると言うわけではないのだが...」


「嘘をつくな。用が無いのに何でついてくるんだよ!あぁ!?」


俺は声を荒げる。

弱いチンピラ見たいになってしまった...

ちょっと恥ずかしい...


「あの...その...貴殿が....」


「しっかり喋りんさい!!」


「貴殿がアルト様と居たのでどういう関係なのかなと思いまして!」


あぁ...

そういうことか...

コイツ、ボロックだったか?

もし、アルトの敵ならば排除しなければならない...


「俺はアルトと一緒のパーティーを組んでいるコウだ。

アルトに手を出そうって言うんだったら俺は許さねえぞ。」


「あぁ...やはり...アルト様だった...」


ボロックはその場に膝をついて泣き始めた。


「お、おい...」


「アルト様の元気な姿が見れて....

嬉しくて、嬉しくて....」


ボロックは本当に嬉しそうに泣いていた。

あぁ...このボロックって言う人はなんだかゴングに似ているタイプなのかもな。

よく見ると人の良さが顔に出ている。

俺は警戒心を解き、


「これからアルト達と待ち合わせしているんだけど、ボロックも来るか?」


「いやいや、滅相もない...私には合わせる顔を持って居ないんです。

只、アルト様が元気かどうか確認したかっただけで...」


「そっか...無理にとは言わないけど、

俺達はしばらく王都に居るから顔を会わせたくなったらいつでも来てくれ。」


「はい!ありがとうございます!コウ様!」


「あ~あと、俺に様は付けなくていいから。

固っ苦しいし、多分ボロックの方が年上だろ?」


「私は17才ですね。」


「17!?以外に若いのね...コホン。失礼。

俺はアルトと同じで15才だから、アルトには無理だと思うけど、俺には気を使わないでくれ。」


「あぁ...ありがとう。コウとはまた逢いそうな気がするな。」


「俺もそう思う。じゃあな。ボロック。」


俺はそう言いアルト達の元に向かった。

それにしてもあんなにアルトの事を思って本当にいい奴だったな。

レストランに入るとみんなが楽しそうに食事をしていた。


「遅くなってごめんな。」


俺は席に付き店員さんにお薦めを頼んだ。


「本当にコウ君ってスゴいよね...途中で肩を何度も叩いたけど、集中しすぎてて気づいてもいなかったもん。」


「そうだったんだ...それは悪い事したな...」


「案外爆睡してただけだったりして...」


イラッ!


「リア...そんな事言っていいんだな...」


「なによ!アンタなんか怖くないんだからね!」


そこまで言うなら良いだろう...

とくと味わえ俺の新魔法を!


「グラビティ3。」


飛んでおちゃらけてるリアにかけてみた。

すると、


「な、何これ?身体が急に重く...」


ドガン!!


そのままテーブルに落ちてぶつかった。


「あれぇ~?リアさんどうしたのかな?

おいしい料理を食べ過ぎて飛べなくなったのかなぁ~?」


「グヌヌヌ.....」


パチン!!


「痛っ!?」


急に頭を叩かれた。


「マスター!やりすぎです!!

リアが可哀想でしょ!!」


俺は可哀想じゃないんかい!!

とツッコミたかったが、

2次災害になると悪いので俺は魔法を解いて、謝った。


「マスター...私じゃなくてリアに謝ってください...」


「リア、調子に乗った。ごめん...」


「いいわよ...むしろアンタがあんな短時間に本当に魔法を覚えてた事に驚いたわよ...

バカにしてゴメン...」


リアがいつになく反省してるから調子が狂う...

それにしてもリアとヴォイスは本当に仲良いな。

良いことだ。


「今のが新魔法なんだね!コウ君スゴいや!」


「イメージしたら結構簡単だったぞ。剣舞祭終わったらアルトにも教えるよ。何かと便利で使いやすそうな魔法だからさ。」


「本当に!やったー!」


嬉しそうなアルトを見れて何だかホッとした。

王都に来てから少しだけ張り積めてた様子だったからな...


「そう言えば、アルトの知り合いにあったぞ。」


「え...。それは誰...?」


これはNGワードだったか...

アルトの顔が急に強張った...


「確か、ボロックとか言ってたな。」


「なんだ!!ボロックかぁ~!良かった!」


急に笑顔になった。

本当に王族って大変なんだな...


「ボロックは何か言ってた?」


「あぁ、アルトは元気なのか?と聞かれた位だな。

元気だって言ったら泣きながら喜んでたぞ。」


「ボロックは相変わらず大袈裟だな~!

彼は僕が王子だった時に世話役件、護衛だったんだよ。

四六時中一緒に居たのもあったけど、

うちのおじいちゃんとボロックのおじいちゃんが昔から仲が良くてさ。

祖父の親友の孫ってこともあって良くして貰ってたんだ。」


「そっか。誘ったんだけど気まずそうだったから無理には誘わなかったんだけど良かったか?」


「うん...。彼も王国騎士団に居るからね。

もし、僕と一緒に居ることがバレたら何されるか分からなかったから会わなくて良かったと思う。」


「そっか。色々大変なんだな...。」


「まぁでも元気そうで良かったよ!」


アルトの顔を見ると本当に嬉しそうで良かった。


「ほら、コウ君!冷めない内に食べちゃおう!」


「あぁ。」


食事を終わらせて俺達は宿に行きベットに入った。


明日は王国剣舞祭だ。

優勝目指して頑張らなきゃな!


決意を胸に、隣で眠るヴォイスの頭を撫でながら目を瞑った。

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