第62話、懐かしの君と終った夢。




「そ、そんなバカな...」


俺は呆気に取られる。

この世界に居るはずの無い...


少女は俺に近づいてくる。

そして、


「逢いたかった...

ずっと逢いたかったんだよ...コウ。」


泣きながら俺に抱きついてきてそう言った。

この声、この雰囲気。少し幼くはなっているが間違いないあっちの世界での彼女だ。


「ど、どうしてミアが!?」


「 コウが死んでから心にポッカリ穴が空いてボーッと歩いてたら信号が変わったの気づかなくてトラックに轢かれちゃって死んじゃったの...」


「そうなんだ...。俺のせいでごめんな...。」


「ううん...私の不注意だから...。

その時にもう一度コウに逢いたいって思ったら女神様にこっちの世界に居るって言われて、転生してもらえたの。」


「女神様?神様じゃなくて?」


「うん。この世界には4人の神様が管理して居るんだって。」


「そうなんだ。知らなかった...。でも...」


俺はミアを強く抱き締めた。


「俺も逢いたかった。」


お互いどれくらいの時間だろうか...

逢えなかった時間を取り戻す様に抱き締めあった。


(...................。)


そんな状況にヴォイスは切ない気持ちで一杯になっていた。

胸が苦しい...

マスターが離れていってしまう...

悲痛な気持ちに叫びたくなっていた。

そんな時だった、


「コウ...あなた混じっているわね...。」


「ん?なんの事だ?」


「隠さなくてもいいのに...コウの中に居る子と話してもいい?」


「あぁ...ヴォイスの事か!話してもいいよ! ヴォイスもいいか?」


(はい...良いですよ。)


「ヴォイスも良いってさ!」


そう言うとミアは俺の頭に手を置いた。


「女の子同士の話だからコウは聞いちゃダメ!ちょっとヴォイスちゃんを借りるね!」


ミアが言った瞬間、俺の体から何かが抜けた。

俺は自分の鑑定をするとオリジナルスキルである「ヴォイス」が無くなってたのである。

ミアは目を瞑りヴォイスと話しているのか?

俺は少し不安になり、ミアを鑑定した。


ミア   アトウ(??)LV???

名前以外閲覧不可


「え...?」


鑑定・全でも何も解らないそんなことがあるのか...?

何者なんだ?

俺は急に不安になった。


「あ!今鑑定したでしょ!?コウのエッチ!

そうゆうのデリカシー無いんだ!

本当に昔から変わってないんだから!」


ミアはふくれた顔をしている。

やっぱりミアだ。


「だってさ...急にヴォイスが...」


「その事なんだけどさ、

今ヴォイスちゃんと話しあって決めたんだけどこの身体をヴォイスちゃんにあげる事になりました!はい、拍手!パチパチ!」


ミアは陽気に拍手している。

本当に理解できない所が昔からよくあった。


「は?何を言ってるんだ?俺にはサッパリ意味が分からないんだけど...」


「今のこの身体は私の魔力を形成して操っているだけなの。

だから鑑定もできなかったって訳。

それでコウにも逢えて無事も確認出来たし、

本体の魔力もかなり使うから本当はもう少ししたら本体に帰ろうと思ってたんだけど、

コウの中にヴォイスちゃんが居るってわかって話をしたらこの身体が欲しいって言うからあげるってなったの!」


「そんな早口で説明されても...」


「あぁ。本当にコウのそう言うところだよ!

いつも私達がケンカをする原因って!

コウは理解できなかったらハイって言って!」


「ハイ....」


久しぶりのミアの圧に気圧されてしまった。

こう言うときは本当に怖い...。

やけ酒する気持ちになるのわかるだろ?

...

.......

ってヴォイス居なかったの忘れてた...


「それでなんだけど、この身体を維持するためにコウの魔力で結びたいんだけど。」


「わかったけど、それってどうすればいい?」


「こうするの。」


ミアは不意に俺の顔に近づきキスをした。

 久々に触れた柔らかいミアの感触と共に、

魔力をゴッソリと持ってかれた。


「久しぶりだったね。早く本体の方でしたいな。待ってるから迎えに来てね。

場所はヴォイスちゃんが知ってるから!」


「ミア!もう行くのか?」


「うん。コウの魔力結びつけたから時間なくて...ヴォイスちゃんとは私はいつでも連絡とれるから用事があったらヴォイスちゃんに言ってね。」


「わかった...。」


「そんな顔しないでまたすぐに逢えるから。

コウ!剣武祭頑張ってね!ファイト!」


「あぁ!優勝して!逢いに行くから!

ミア!待っててくれ!」


「うん...コウ、またね...」


「あぁ...また...」


そう言うとミアの身体だった者が光に包まれて変化していく。

面影は少しミアに似ているが髪の色も銀色に変わり黒い瞳も紫に変わっていった。


「マ、マスター。」


「ヴォイスか?」


「ハイ!ヴォイスです!マスター!」


ヴォイスが急に抱きついてきた。


「お、おい...。」


「ずっとこうしたかったんです!ダメですか?」


「ダメじゃないけど...」


....いやいや、ダメだろ!!

こんなのミアにバレたら殺されてしまう...


「ちゃんとミア様に許可は取ってありますから安心してください!」


そっかなら良いのかな....?

これは浮気なのか...

いやそもそもミアと俺の魔力で出来ているから子供?って言えるのかな?

わからんが...

これで俺のモテモテハーレムの夢は完全に潰えたな。

まぁ、いいんだけどね...

ほんと....いいんだけどね....


夕焼けの日差しが目に染みたコウなのであった。


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