第63話、だってもヘチマもない!
しばらくすると、アルト達がやって来た。
「コウ君、この方はどうしたの?もしかしてナンパ?」
「俺はそんな事しないよ。
この子はヴォイス!
最近ちょいちょい名前は出てたろ?
俺のオリジナルスキルでついさっき、色々あって実体化したんだ。」
真実を何から何まで話せばいいかわからず、
こんな説明になってしまったが何となく大丈夫だろう。
「ヴォイスです!リアは話した事がありますがアルトとラテは初めましてですね。
これから宜しくお願いします。」
「ヴォイス!アンタ本当に良かったね!」
「ハイ!リア!いつもありがとう!」
二人は手を繋ぎながら喜んでいた。
それを見たアルトとリアは少し戸惑っていたが、ヴォイスと少し話したことで戸惑いも消えて普通に馴染んでた。
「それで、アルト達はどうだったんだ?」
「許可書もらったから明日から行ってくるよ。コウ君は?」
「俺は明後日から予選始まるんだって。
師匠の推薦状持っていったらめちゃめちゃビビってたぜ!
師匠って本当にすごい人なんだなって実感したよ。
優勝しなかったら、師匠の名に傷がつくな...」
「まぁ、アルト君なら大丈夫だよ。予選は明後日からなら明日は一日どうするの?」
「それなんだけど、明日はアルト達に付いていって王立魔法図書館に行こうかなと。
俺も魔法に付いて調べて見たいし。」
「そっか!なら明日は皆で行こうよ!」
「そうだな。取り合えずこれからご飯でも食べに行こうか?」
「「賛成!!」」
俺達は皆で夕飯を食べにラテのお薦めのお店に向かった。
しばらく歩いていると、ラテが足を止めた。
着いたみたいだ...
しかし、ここは...
「私が王都のギルドで任務してたときに教えてもらった店なの!
めちゃくちゃ美味しいわよ!」
そう言うけど、めちゃめちゃ高そうな所だな...
立派な門構えに臆していると皆は当たり前の様にスタスタと歩いて行った。
「マスター、早く行かないと遅れちゃいますよ。」
「あ、あぁ...」
俺は皆の後ろを着いて行き、またエレベータみたいなのに乗った。
「この前のお店は上だったけど今回は下に行くから楽しみにしててね。」
と、ラテは言う。
下?
なにそれ?
俺は戸惑ってると、エレベーターはドンドン地下に進んで行った。
チーン。
エレベーターの扉が開く。
そこは、
「どう?ここが王都のオシャレスポットナンバーワンの地下海底レストラン・シャムニよ!!」
目に広がったのはドーム型の水族館見たいなオシャレなレストランだった。
ガラス張りの外側には見たことの無い魚が泳いでいる。
ここも高いんじゃないのか...?
って俺最近値段ばかり気にしているような...
貧乏性だからしょうがないか...
「ほらほら、コウ君も席に座ろうよ。」
アルトが席に座るように促す。
何故みんな普通にしているのだろう...?
これがこの世界では普通なのか?
「マスター、業に入ったら業に従え。ですよ。座りましょ!」
「あぁ...。」
それにしてもヴォイスの順応性にはビックリする。
俺の中から世界を見てただけなのに、外に出てここまで順応するのはただただ感心する。
「メニューはお任せでいいわよね。
すいませーん。
ここのお店のお薦めを人数分お願い。」
「かしこまりました。直ぐにご用意します。」
黒服の人が注文を取るとサッと奥の方に消えていった。
「ここからがここの面白い所だから。」
ラテが言う。
何が始まるんだろう...
「ほら、さっきの黒服の人出てきた。」
ガラス張りの外を見るとさっき注文を取った黒服の人が、銛を持って泳いでいた。
「ま、まさか...」
「そう!そのまさか!注文してから漁をして料理してくれる店なの!面白いでしょ!?」
「さすが!ラテさん!いいお店ですね!」
「でしょ!?アルト君とは本当に趣味が合って嬉しいな...。」
「ラ、ラテさん...。」
二人は顔を赤くしている。
それを見ていたリアが八つ当たりで俺の頭をボカスカと殴ってきた。
リアは妖精だから身体も小さく痛くはないからいいんだけどさ。
そうこうしている間に黒服は鮮やかに銛で魚を次々と仕留めて帰還してきた。
そうして目の前で魚を捌いて行く。
もちろん、鑑定とミヨウミマネは発動。
これで魚料理も作れるようになったと思う。
そして、目の前には次々と料理が並んだ。
刺身、焼き魚、煮付けにと様々な料理がテーブルで一杯になった所で乾杯をして、俺達は料理を堪能した。
中でも一際感動してたのはヴォイスだ。
初めての口にする食べ物の美味しさと、みんなで食べる事の楽しさを知ったようだ。
楽しそうなヴォイスを見れて俺も嬉しかった。
そして、食事も終わり宿に帰ると問題が起きた。
ヴォイスの部屋をどうするか?ってことだ。
「マスターが良ければ一緒に寝かせてください。」
「いやいや、流石にそれは...」
「アンタ本当に意気地が無いわね!良いじゃない!部屋も余ってないんだし!」
「だって3部屋取ったんだから、リアとラテの部屋の方がいいんじゃないか?」
「だってもヘチマもない!またアンタヴォイスを泣かせる気!!男として最低ね!」
おいおい...
俺は普通の事言ってるだけなんだが...
それを言うならアルトだって...
俺はアルトの方を見ると、アルトは目線をそらした。
あの野郎...
明日カンチョーでもかましてやろうかな...
いや、止めておこう。
リアとラテに何されるかわからん...
結局リアに押される形になって、俺はヴォイスと一緒に泊まることになった。
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