第50話、戦場の春




俺は敵のど真ん中から殲滅していこうとしていた。

破邪の双剣を構えて瞬歩でモンスターの群れの真ん中に行き次々と撃破していく。


おぉ...この剣はすごいぞ...

モンスターがバターの様に切れていく...


(マスター。良かったですね!)


あぁ!

本当にソーマには感謝しないと。

俺は次々と向かってくるモンスターを右往左往飛び回りながら倒して行った。

流石にモンスターの数が多すぎる為にチラホラと俺の猛攻をすり抜けていくモンスターも出ていった。

それを見ていたゴング達は、


「兄貴すごいだな...」


「本当だね、僕たちも負けてはいられないね!」


「んだな!先生達は少し休んでるだ!」


「そうよ!アルト君とリアちゃんは少し休んでなさい!私も出来るんだから!」


「うん。二人ともお願いするね!MPポーション飲んで少し休んだらすぐに参戦するから!」


「んだ!」「了解!」


コウの猛攻をすり抜けたモンスター達を、

ラテの精霊の弓で遠距離から攻撃して、

それでも止まらないモンスターはゴングのドラゴンナックルで次々と撃破していった。




戦場は安定していたのだが一部の冒険者が不満を爆発させていた。


「あいつらだけに手柄を上げさせる訳にはいかねぇ...」


「リーダー止めましょう。私たちでは無理ですよ...」


「うるせえ!!お前らは悔しくないのか!?

あんなポッと出に先越されてよ!」


「そうだ!そうだ!」「俺も行くぞ!」


「私たちの役目はここを守ることでしょ...」


「うるせえぞ!アニー!!

お前回復役だからってブルってんじゃねーよ!」


「私はそんなつもりで言ったんじゃ...」


「よし、行くぞ!オメーラ!付いてこい!!」


「オォー!!」


「あぁ...」


回復役のアニーはそれ以上は何も言えずついていくのであった。




そんな事になってるとはコウは知るはずもなく敵のど真ん中でモンスターを次々と撃破していた。


「あははは!!楽しい!楽しすぎるぞ!!」


(マスター...やっぱり戦闘酔狂バトルジャンキーじゃん...でも楽しそうで何よりです。)


モンスターの攻撃を避けては斬り、また避けては斬り、オークやゴブリンやウルフ達を次々と倒していく。オートで収納しているのでモンスターの死骸で足を滑らしたりと言う万が一も無く順調に敵を減らしていった。


なぁ、ヴォイス。


(何でしょうか?)


後、モンスターはどれくらい居る?


(そうですね...後3万って所ですかね...)


3万か...

行けそうだな!

全部倒したら俺もっと強くなるかな?


(なりますよ!頑張りましょ!目指せ世界最強!!)


あぁ!俺頑張るな!!




コウが無双している時、


「よし!僕たちも回復したからこれから参戦するよ!」


「え~!アルト君達、まだゆっくりしてても良いのに~!」


「ラテさん達にばっかり任せておけないよ!

僕がラテさんを守りたいし!」


「アルト君...」


二人の間にお花畑が咲いている...


「キィィー!!何なのよ!ワタシと言うものがありながら!!」


「まぁまぁ、リア殿落ち着くだ。」


「落ち着いてられないわよ!!キィィー!」


「戦いの最中って言うのに、このパーティーは平和だべ....ん?

あいつら何してんだべ?」


「どうしたのよ!?」


「あいつら前に出ているんだが、どうなってるだ?」


アルト達が横を向くと、

Bランク冒険者のパーティー達が前に出てモンスター達と対峙している。


「何をしているんですか!?

貴方達は後方で街を守るのが仕事ですよね!!」


「うるせえ!!お前らは見たいな新人に手柄を一人締めさせる何て俺らのプライドが許さねんだよ!!」


「そんなくだらない事で街を危険にさせるんですか!?」


「お前らはそこで見てろ!俺たちだって出来るんだ!!」


そう言うと冒険者達はモンスター達の群れに突っ込んでいった。

しかし、苦戦している様子だ。


「どうしますか?助けに行きますか?」


「良いわよ!あんな奴ら!ヤられたって自業自得でしょ!?」


「そうだけど...見殺しにするのは目覚めが悪いと言うか...」


アルトが迷っていると、ゴングが苦戦している冒険者の元へ走り出していた!


「ゴンさん!!」


「おらには放って置けないだよ!!」


「もう!本当にお人好しなんだから!アルト様私たちも行くわよ!!」


「そうだね!ラテさん行こう!」


「うん!」


アルト達もゴングの後を追った。


苦戦している冒険者達は、

モンスター達の強さに困惑していた。


「何でただのオークやゴブリンがこんなに強いんだよ...ふざけんな!」


冒険者のリーダーが剣を振りかぶってモンスターに切りかかる。


ザシュッ!


ググッ!


「なっ!剣が抜けない...」


振り抜いた剣がオークの肉に食い込み抜けなくなったのだ。

オークはニヤニヤしてリーダーに殴りかかった。


グチャ!


 オークからの一撃で顔が潰れて動かなくなった。

「リーダー!」


「アニー!リーダーはもうダメだ!俺は離脱する!」


冒険者はリーダーがやられたのを見て次々と逃げていく...

しかし、アニーは腰が抜けたのか立てないでいた...


「ぁ...ぁ..」


腰が抜けたアニーに近づくオーク。

ぐへへ。と近づくオーク達の群れにアニーは死を覚悟した。

オークが拳を振り上げてアニー当たりそうになった瞬間。





ガキーン!!



「ギリギリ間に合っただ。」



そして、ゴングはドラゴンナックルでオークを殴る!


一撃でオークが彼方まで吹っ飛んでいく!!


「大丈夫だか?怪我は?」


「だ、大丈夫です。」


「なら良かっただ!ここはおらが引き受けるから後ろに下がるだ。」


「すいません...まだ腰が抜けてて...」


「分かっただ!貴方が動けるまでおらが守るから安心するだ!」


「は、はい...ポッ。」


風の刃ウインドカッター!遅くなってゴメン!ゴンさん大丈夫?」


「アンタ!ワタシ達を置いて行くなんて生意気よ!」


「ゴング!あんた以外に足が速いのね...」


「みんな!おらは大丈夫だ!

それにしてもこの装備本当にスゴいだよ!

攻撃すればモンスターは吹っ飛んでいくし、

攻撃喰らっても全然痛くないだよ!」


「ソーマさんに感謝だね!

それで、この方は?」


「おらは無我夢中だったから名前を聞いてないだよ。」


「わ、私はアニーです。Bランク冒険者でヒーラーをしています。」


「アンタ達が勝手なことするから陣形崩れるじゃないの!!リーダーはどこ!?

文句言ってやるわ!」


「すいません...止めたんですけど...

リーダーはあちらに...」


アニーが指差した方に顔がグチャグチャになった冒険者の死骸があった...


「自業自得ね!もう!死んだら文句も言えないじゃない!バカ!」


「リアは優しいね...。アニーさん他の冒険者は?」


「敵わないと知って逃げて行きました...。」


「女の子を置いて逃げるなんて冒険者の風上にも置けないわね!

後でギルド長に報告するわ!」


ラテもご立腹の様子だ。


「これからなんだけど、アニーさん一人で帰すわけも行かないから一緒に付いてきてもらおう。ヒーラーだから一番後ろから僕たちを回復して欲しい...出来そうかな?」


「は、はい!命を救ってもらったゴング様の為に頑張ります!」


頬を赤く染めチラチラとゴングを見ながらアニーは言った。


戦場でゴングに春が来たのだった...。


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