第27話、精霊の森でのこと...。




馬車に揺られる事3時間。

俺達は目的地に着いた。


「ここが精霊の森か...。

ってか、でかすぎじゃないか!?」


「ほ、本当にでかいね...。泉なんて見つかるのかな?」


「んだなぁ...。」


壮大な森には樹齢1000年は越えていそうな木々達が一面生えていた。


「とりあえず行ってみるか!」


「だね!」

「んだな!」


俺はソーマから預かった指輪を装着して、精霊の森に入った。

道と言う道は無く、ひたすら歩くこと一時間...。


「さっきから同じ所グルグル回ってるような気がするんだが...。

「だよね...。僕もそんな気がする...。」


すると急に声が聞こえてきた。


「お兄ちゃん達なにしてるの?」


声のする方へ振り返ると、羽をまとった子供達がそこに居た。

多分、ソーマがいってた精霊だなと思った俺は、

「神秘の泉に行きたいんだけど、行き方分かるかな?」


「うーん。分かるけど知らない人に教えちゃいけないってママに言われてるんだ。」


「ママ?」


「うん!僕たちを産んでくれた精霊族の長だよ。」


「なるほど...。

これを知り合いから借りてきたんだけど...。」


俺はソーマから借りた指輪を見せた。


「アッ!これはソーマ兄ちゃんの指輪だね!

懐かしいなぁ。ソーマ兄ちゃんは元気?」


「うん!元気だよ。

今、俺達の装備を作って貰ってて、

神秘の泉の水が必要って言われて汲みに来たんだ。」


「そうだったんだね。自己紹介がまだだったね!僕の名前はリア。一応、この子達のお姉ちゃん的な存在なんだ!」


「丁寧にありがとう。俺の名前はコウ。こっちがアルトでこっちがゴング。」


「よろしくね!リアちゃん!」


「よろしくだす。」


アルトを見た瞬間リアが急に顔を紅くして、モジモジし始めた。



まさか、な...。


(マスター。多分そのまさかだと思いますよ。さっきからあの妖精の心拍数が上昇しています。)


何故だ!

なぜにアルトだけがモテるんだ!!

不公平極まりないたらありゃしない!


(マスターのそういうよこしまな思考が顔に出てるからだと思いますけど。)


そんなに顔に出てる...?


そんな事をヴォイスと話してるとアルトがリアに、

「顔赤いけど、大丈夫?」


「全然だいじょぶれす...。」


めっちゃ噛んだ。

アルトが話すとリアの緊張で話が進まなそうなので、


「リア、神秘の泉まで、案内してくれないか?」


リアは平静を装い、

「アナタ少し馴れ馴れしいですね...。

まあ、いいでしょう...。今ママに聞いてみますね?」


そう言うとリアから魔力が発せられた。


(おそらく、魔力を使って念話してるんでしょう。)


とヴォイス先生は解析した。

それと同時に俺はリアを鑑定した。



リア 水精霊族(70)LV10


・HP 100・ 1500

スキル

念話テレパシー

精霊魔法

水刃ウォーターカッター

水砲弾ウォーターレイ



リアは水の精霊族なんだ...。

と言うことは炎とか風の精霊とかも居るんだろうな...。


(そうですね。

気に入られると精霊が力を貸してくれて精霊魔法を使えるようになるみたいですよ。

残念ながらマスターは無理っぽいですけど...。)


何故に!?


(そ、それは..。)


俺がモテないからか?


(ですね...。御愁傷様です...。チーン。)


そこまで言われると悲しいわ!

効果音までつけやがって!!



コウが残念な気持ちに包まれている中、リアが、


「ママからは了解を得たんだけど、何か皆様に頼みたいことがあるって言ってたよ。」


「頼みたいこと?」


「泉についたら話すって言って。」


「何だろう...?分かった案内をしてくれ。」


俺達はリアの後を着いていき、神秘の泉にたどり着いた。

そこはキラキラとマナエネルギーで輝く泉があった。

そして、その泉の上に綺麗で神秘的な女性が立っていた。



「お待ちしておりました。

コウ様、アルト様、ゴング様。

お初にお目に掛かります。

水の精霊族の長をやっているマーリンと申します。」


「御丁寧にどうも。俺たちの頼みはもう知ってますね。それでマーリン様の頼みたいことって何ですか?」


「それは...。

ここ最近この周辺にキラーアントの女王が巣を作りまして、この森が侵食されているのです。

ここら辺は私の結界でなんとか守ってますけど、このままではいつ破られるか分からないのです。」


「そのキラーアントを駆除して欲しいって事か...。」


「そうなんです...。あったばかりで無理を承知なのですが...。頼める方が私たちには居なくて...。」


マーリンは悲痛な顔をしている....


俺も助けてあげたいがキラーアント達がどれだけの強さなのか分かってないし、3人でどれだけ出来るのかも分からない...。

危険度を考えるとなあ...。


俺は少し悩んだ。


「もし助けて頂いたら、[鑑定、全]のスキルと隠蔽の指輪を差し上げます。

貴方コウ様には悪くは無いと思いますが...。」


「やりましょう!!」

俺は即決した。

(マスター...。

報酬で即決ってあまりにも現金な奴って感じですよ...。)


いいんだよ...。

ギブアンドテイクなんだし。


(マスターは絶対に勇者にはなれないですね...。)


いいもん。

俺はどうせ無職ノービスですよーだ。


「それで、そのキラーアントの巣は何処にあるんですか?」


「ここから西に1㎞位行ったところにあります。道案内には....リア!こっちおいで。

この子が案内します。

本当は私が行くのがいいんですけど、結界を維持しなければならないので...。すいません。」


「ママ!大丈夫よ!

しっかり案内してくるわ!」


そう言うと、リアはアルトにピッタリとくっついた。


コイツリアはアルトと居たいだけなんじゃ...。


「リアちゃん、ちゃんと守るからね!」


「う、うん!お願いします...。」


リアはアルトの隣で、もじもじしている。


(マスターもあの位の余裕が無いとですね。)


う、うるせーやい...。


俺の目からは神秘の泉の水に負けない綺麗な滴が流れていった。

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