第25話、知ってた?お花畑には蜂も飛んでいるんだよ。



ガタン。ガタン。



でこぼこ道で馬車が揺れる。

その振動で俺は気がついた。

「ん、ここは...?」


「やっと気付いた。」


「...アルトか?何がどうなったんだ...?

全く記憶が無いんだが。」


「だろうね...。コウ君。君は今まで気絶してたんだよ。」


「気絶...?」


「うん。大量のロックローチゴキブリを見た瞬間に...。」


アルトがそう言った瞬間に、

俺の身体がガタガタ震えてきた...。

あれゴキブリは本当におぞましかった。

まだ10匹位なら我慢出来たと思うけど、

あの数は本当に想像するだけで嗚咽が走る...。


「コウ君!大丈夫!?」


「あぁ...。大丈夫。そっか...。ゴメン。」


「兄貴、無理はしない方がいいだ。」


「あぁ。ゴングもすまなかった...。」


「おらは全然いいだよ!

アルト先生の新しい魔法で1発だったから、

すぐに終わっただ。」


「新しい魔法は覚えたからいいんだけど、

僕は収納魔法がないから魔石をそのままにしちゃった。ゴメン!」


「俺が気絶しなければ良かったんだが...。」


「今から取りに...」

「絶対ムリ!!」


「「はやッ!!」」


全員にツッコまれた。


(プププッ!!

最高に面白かった~!

マスターの白目の気絶姿。

一生の宝物です!ププーッ!!)


ヴォイスさんや、

頼むからそんなものを宝物にしないでくれ...。


(これではモテ街道もお先真っ暗ですね!

ワタシは嬉しいです!)


そんな事言わないでくれよぉ。




「みんな。アバドンが見えてきたよ~!」


ソーマが言うと、

コウは馬車から身を乗り出してアバドンを見た。


「やっと戻ってきた~!」


「やっとって言うけど、

離れてたの2日だけどね。

まぁコウからしたら、長い2日になったかな?」


「そうだな...。

ゴキブリさえいなければ充実したのに...。

それより、ソーマ。この後はどうすればいい?」


「とりあえず、

今日は素材を俺の店ノースフォックスに置いて解散って事で!

次の素材の事は明日言うよ。」


「わかった。」


俺達はアバドンに着きソーマのお店ノースフォックスに着いた。


「ここにミスリルと竜の素材を置いてくれる?」


ソーマの指示の元、

山の様なミスリルとロックドラゴンの核と外殻の1部と魔石を置いた。


「ドラゴンの素材はこれだけで良いのか?」


「うん。大丈夫!

後は使わないから売ってもいいよ!」


「わかった。じゃぁ俺達はギルドに行くわ。」


「うん!じゃぁまた明日ね!」


俺達はソーマの店ノースフォックスを出てギルドに向かった。


ギルドに着くとラテが待っていた。


「あっ!

アルト君お帰り~♪後ついでに2人も!」


おい!ついでって!!

失礼な!

もう名前すら呼ばれなくなったぞ...。

俺はゴングと同じ扱いか...。

なんか悲しいな...。


「た、ただいま!ラテさん!」


2人の間にお花畑が咲いているのが見える。



もう面倒くさい。お前ら付き合っちゃえよ...。

中学生の恋愛か...?


あっ。

アルトの歳は15だから前世あっちでは中学生の歳か...。

クソ!リア充め!!


俺はチラッとゴングを見る。

アルト先生いいなぁ...って顔するんじゃないよ。みっともない!!


(マスター。

そんなに嫉妬しなくても良いじゃないですか...。

マスターにはワタシが居ますよ!)


そうだな...。

ヴォイス...。ずっと一緒に居てくれよ...。


(もちろん!!ずっとマスターの側に居ますよ!!)


ヴォイスは嬉しそうで良かった。

これはこれで俺もリア充なのかもな...。

脳内でしかしゃべれないけど...。


見つめ合っている2人には悪いけど、


「コホン。お二人さんそろそろ良いかな?

素材を換金したいんだが...。」


「あ、ごめんなさい。

素材ね....。はぁ~...。」


しゃべった俺が悪い見たいな空気出すの、止めてもらいます?


「どのくらいあるのかしら?

解体倉庫の方が良いのかしら?」


「倉庫の方でお願いします。」


俺達はラテさんの後を付いていって解体倉庫に着いた。

解体作業員は俺を見て、

また今日も残業だよ~。とか言ってる。


いやいや、魔物解体それがあんた達の仕事じゃん...。

仕事を卸しているんだから、文句は言わないでほしいもんだ...。


広い一角の場所に山で討伐したモンスター達を出して行った。


「ちょ、ちょ、ちょっと待って!!

これはどうしたの?」


ラテはロックドラゴンを指差して言った。


「ん?普通に倒してきましたけど?」


「いやいや...。

ロックドラゴンはAランクモンスターなのよ!

貴方達ちょっとギルドカード見せて...。」


俺たちは言われるがまま、ギルドカードをラテさんに見せた。


「ま、まじ!?」


ギルドカードに討伐したモンスターが表示されるらしい...。

ギルド職員にしか見えない特殊な細工が施されてるんだとか。

驚いた後、急に俺達の方をジーっと見た。


きっと鑑定をしているんだろうな...。


「なるほど。

このステータスなら納得だわ...。」


そしてラテさんが俺達に指をさして言った。


「コウ君、あなたは....異常。」

...ですよね。

それはとっくに分かってました。

ん?

異常ってステータスがって事だよね...?

他に異常な所はないよね...?



「ゴング君。あなたは....顔が怖い。」


いやいやいやいや!!

それ悪口だから!ただの悪口だから!

ゴングの顔見てみろ!

泣きそうじゃねーかよ!



「そしてアルト君は....超可愛い~♪」


オイッ!!

ふざけるな!!

俺は拳を振り上げたがゴングに止められた。


「それはさておき貴方達、

早く初心者ダンジョン突破してランク上げた方が良いじゃない?」


「そうしたいんですけど、

武具をオーダーメイドにしたんで、

出来次第ダンジョンに行こうかと...。」


「は?何言ってんの?

今の貴方達のステータスなら素手でも突破出来るわよ!」


「マジ?」


「マジ。」


「まぁでも、何が起きるかわからないので武具出来たらにします。」


「用心深い事は大切だわ。わかった...。

換金は時間かかりそうだから、また明日の朝にでも来なさいな。」


「わかりました!」


「じゃぁね~!アルト君!また明日♪」


「は、はい!また明日!」


俺達には挨拶ないのかよ!

本当に失礼な女だ...。



それから俺達はギルドを出て、ノラ猫亭に向かった。


「今日はゴングの歓迎会しようぜ!」


「良いですね!しましょう!」


「いいんだか?おらのなんかの為にそんな事をしてもらって...。」


「良いも何も、俺達は仲間パーティーだろ!」


「そうだよ!

ゴンさんはもう仲間だよ!」


「ありがと...。兄貴...。先生...。グス...。」


「ゴング...。泣くなよぉ...。」


「おら、おら。嬉しくて...。」


「ゴンさん...。」


「ほら、着いたぞ!!

今日はパーッと飲むぞ!なッ!!」


ノラ猫亭の扉を開けるとオカミさんが迎えてくれた。


「お帰りなさい!

あら、新しいお仲間さんかしら?」


「ただいま!

そうなんだ!部屋って空いてる?」


「大丈夫よ。これからご飯にでもする?」


「あぁ!今日は歓迎会なんだ!!

エールもお願い!!」


「わかったわ!

準備するから部屋に行って、荷物置いてきなさい!」


俺達は各々部屋に行って、荷物を置き食堂に行った。


そこには、

人数分のエールと食事がすでに並んでいた。

なん足る早業!

さすがオカミさん!!


俺たちは席に座ってグラスを持つ。


「ゴングのパーティー加入に乾杯!!」


「「乾杯!!」」






............。

.....................。

...............................。

飲みすぎてまたしても記憶が無くなったのは言うまでもない。

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