第18話、ノースフォックス武具店にて。





決闘が終わり、ギャラリーはまだ沸いていた。


俺ファンになっちゃうよ!とか、

俺をパーティー入れてくんないかな!?とか、

俺を弟子にしてほしい!とか....。

男ばっかり...。


ってか女性はいないのか??

女性の歓声が全く聞こえて来ないんだが...。


(マスター...。

決闘なんて血生臭いのは大半の女子は好みませんよ...。残念でしたね...。)



そ、そんな...。

華麗に完全勝利したのに...。

俺のハーレム計画が...。


(マスター。ドンマイ!...ププッ!!)

脳内でヴォイスの笑いを堪えている姿が見える。


コウが歓声を浴びてる一方で...。

狼の牙も対して事ないなとか、

いつも威張り散らかしやがっていい気味だとか罵倒されていた。


なんか可哀想だな...。

でも、これは自業自得かぁ...。

俺も調子に乗らないように気を付けなきゃ...。


(そうですね。

調子に乗って裸踊りをしないように気を付けてください。)


ヴォイスさんや、心が痛いよ...。



「コウ君!お疲れ様!」


「アルトどうだった?」


「格好良かったよ!

僕も負けては居られない!」


「そうだな!一緒に頑張って行こうぜ!」


「うん!」



それから暫くして、

ギルドはすっかりいつも通りの落ち着きを取り戻した。

俺達はラテに話を聞きに行った...。


「どうしてこうなったんだ...?」


「だって、アルト君だとやられちゃうかも知れないじゃん!」


「俺ならやられてもいいのかよ!?」


「違う!違う!

コウ君ならステータス的に勝てると思ったし、

ユニークスキルもあるから、

コウ君の役には立つかなと。」


物は言いようだな...。魔女め...。

しかも、

さらっとユニークスキル持ちってバレてるし...。


「まぁ、実際アルトがやっても普通に勝てると俺は思うけどな!」


「そうかなぁ...。自信ないよ...。」


「自信もてよ!未来の大賢者様!」


俺はアルトの髪をクシャクシャにする。


「止めてよ!

ラテさんが見てる前で恥ずかしいじゃん...。」


どこで恥ずかしがってんねん!?

と言いたかった。


「本当今回の件はゴメンね...。

アイツ、何回も断ってるのにしつこくて...。」


「まぁ何にせよ、無事に終わって良かったよ。

それで頼んでた紹介状と報酬は?」


「はい!これは報酬の金貨75枚!」


「はっ?」


「あれだけの魔石と素材の量だもん。

後は決闘の入場料の一部も入ってるからね~!」


思いがけないタイミングで小金持ちになったな...。

半端ないな。異世界最高!


(マスター。顔がニヤニヤしすぎです...。)


ヤバッ!?

顔に出てた...。

ラテさんが引いた目で俺を見てる...。

いいじゃん!

お金いっぱい持ったらみんなにやけるって!

これは人間の本能だって...。

(マスター...。言ってて悲しくないですか??)

う、うるせぇやい...。


「コホン。それで頼んでた紹介状は??」


「はいコレ。

場所は町の外れにあるんだけど、

ポツンとしてるから一目で分かると思うわ!」


「その武具屋の名前はなんですか?」


「ノースフォックス武具店よ!」


ノースフォックスってキタキツネの事だよな...?

この世界にも居るのか??

もしかしたら、転生者かも知れないな....。


(マスター。どうします?)


行くよ...。

色々知りたいし...。


「それと店主はちょっと変わってるから...。

根はいい人なんだけどね...。」


「ラテさん。ありがとうございます!

アルト行くぞ!」


「うん!」


「アルト君!行ってらっしゃい!」


「は、はい!いってきましゅ!」


....噛むなよ。


ギルドを出てしばらくするとポツンとお店があった。

看板には、


ようこそ!武器や防具の真骨頂!

アバドンで一番の最優良店!

買うなら絶対ここ!

その名はノースフォックス武具店!!




.....うん。

非常に胡散臭い....。


胡散臭いとは思いつつ、とりあえず中に入ってみる。


「いらっしゃい~。」


気だるそうにひょろっとしたロン毛のイケメンが出てきた。


「ラテさんから紹介されて来ました。

これ紹介状です。」


「ふーん....。」


イケメンは紹介状を見て覇気のない顔で、


「適当にそこら辺の武器でも見て選んで。」


なんだコイツ...。

めっちゃやる気ないじゃん...。

態度も悪いし。


武器を見てみると確かに業物っぽいけど、なんだか違和感がある...。


(マスター。解析完了しました。

ここにあるのは全て只の鉄の剣です。)


マジでか...。

ただの詐欺師じゃん...。


「すいません。

ここの剣は全て鉄の剣ですよね...?

どういう事なんですか?」


「あれ?バレた?すごいね~!

上位の鑑定持ちじゃなきゃ判らないのに...。

あぁ、なるほど...。

君のオリジナルスキルが、上位の鑑定とか色々してくれるんだね。」


「なっ!?」


「ゴメンね...。

僕は鑑定は最大レベルまで上がっちゃってるから...。」


お返しとばかりイケメン店主を鑑定するが、

何も見えない...。

それがなんか非常に悔しい...。


(マスター。

この方は鑑定を阻害するマジックアイテムを装備してますね...。)


「今鑑定したけど見れなかったでしょ?

俺の名前はソーマ。

この腕輪、B級ダンジョンのレアアイテムなんだよ~!

いいでしょ?欲しいでしょ?」


なんだコイツ急に小バカにしてきたんだけど...。

なんだろう?イライラする。

更年期障害かな...。


俺がイライラしてるのとは、逆にアルトは目をキラキラさせている...。

おいおい....。

アルトはいつか絶対、詐欺にあうな...。

そうならないようにアルト!

お義父さんが守るからな!


(マスター。

お義父さんネタはもういいですから...。)


ここは外れだな...。

商品も態度も悪いし...。


「ソーマさん。

ここの武器は鉄の剣しか無いみたいですし、態度も接客も悪いので他を当たります。」


「えっ?えっ?マジ...?」


「マジです。」


「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待ってくれ!

いや、待って下さい!

あなた達が久し振りに来たお客様なんです!

このままだとお店が潰れてしまいます!

なんとか人助けだと思って踏みとどまってはくれませんか...?お願いします。」


「コウ君。何か買ってあげようよ...。

ソーマさん可哀想だよ...。」


「っていっても、別に鉄の剣は要らないしなぁ。もっと強い剣が欲しいんだよね...。」


「あっ!そうだ!!

お2人共、オーダーメイドにしません?」


「オーダーメイド?」


「はい!

二人のご要望を聞いて私が作る、

お二人専用の武具です!」


「それはいいなぁ!」

「うん!いいね!」


「ただ...。

材料がないので護衛と荷物持ちを手伝って頂きたいのですが….。」


「いいよ!

俺達もレベル上げしたいし、

俺は収納があるからいくらでも材料は入るし!」

「僕も構わないよ!」


「ありがとうございます!

では早速、明日から行きましょう!」


「わかった。それで行き先は?」


「北西にあるロックマウンテンです!

そこではミスリル鉱石を取りに行きたいと思います!」


ミスリル鉱石ってめちゃめちゃ希少じゃないか...?


(そうですね。

大体Bランクから上の冒険者しか買えないような素材です。)


マジか!?


一気に新しい装備への期待が高まる。


「じゃあ、明日お願いします。」

「また、明日!」



俺達はノラ猫亭に戻り、今日は明日からの山登りの為にゆっくりと休んだ。

行ったことのない場所に冒険できる楽しみにワクワクした。

まるで遠足の前の日見たいに...。

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