第16話、俺ってお邪魔虫なのかな...?



「アルト...。生きてるか?」

「生きてるよ...。」

「やったな...。」

「うん。やったね...。」


2人はバジリスクをなんとか倒し、

魔力が枯渇の状態で倒れていた。


「しばらく動けないね...。」

「そうだな...。」


10分位経って魔力が少し戻ってきた。

俺はようやく身体を起こす。

辺りを見渡すと、見慣れない物があった。


「おっ!宝箱があるぞ!」

「きっとボス討伐の報酬だね!」


俺達は宝箱に近づき開けた。

入ってたのは、格好いいブーツときれいな腕輪だった。

鑑定で細かく観てみる。


・敏捷のブーツ

使用者の敏捷を30%上げる。

サイズは使用者によって変わる。


・HPの腕輪

使用者のHPを30%上げる。

サイズは使用者に依って変わる。



「コウ君!これスゴいよ!」

「そうか?」

「かなりのレア物だよ!

初心者ダンジョンではあり得ない代物だよ!」


それはCランクボス倒してるからな...。

俺には興味ないな...。


「うーん...。これはアルトが使いな!」


「えっ!?良いの?レア物だけど...。」


「あぁ。

HPと敏捷上がれば安全に戦えるだろ?

ただでさえ、アルトはHP は低いんだし。」


「そうだね...。コウ君!ありがとう!大切にするよ!」


アルトはブーツと腕輪を装備した。


「さて、クエストの素材は手に入ったし、そろそろギルドに戻るか。」

「うん!」


2人は11階層へ続く扉を開けた。

扉を開けてすぐに地上に戻るポータルに乗った。そして、外へ出たらもう夕方だった。


そこに見張りの兵士が声を掛けてきた。


「良かった。遅そかったから心配したよ。」


「心配してくれてありがとうございます。」


「そんなボロボロになって...。

何階まで行ったんだい?」


「いやぁ~!調子に乗って10階層まで行っちゃいました!」


「10階!?たった2人で!?」


「あはは...。」


「全く、無茶なことをして...。」


兵士は驚きを通して呆れてた。

俺達は兵士に挨拶をして、ギルドに向かった。


ギルドに入ると、それほど混んでなくスムーズにラテさんが待つ受付にたどり着いた。


「おっ!?青春ボーイズ!

ダンジョンはどうだった?」


「結構大変でしたよ...。

でも何とかクエスト完了しました。」


テーブルにクエストの素材である、

オークの魔石2個とゴブリンキングの核出した。


「うん!ちゃんと納品確認しました。

初クエスト完了だね!

お疲れ様!

んじゃこれは報酬ね!

オークの方は銀貨20枚、

ゴブリンキングの方は銀貨50枚、

合わせて銀貨70枚ね!」


「初心者ダンジョンだからこんなもんか...。

ラテさん。

素材や魔石の買い取りってここで出来ますか?」


「出来るよ!

クエスト報酬よりは単価は若干安いけど...。」


「そうなんですね。安くなってもいいので買い取りをお願いします!

でもこのテーブルに乗るかな?」


「へ!?ま、まさか~!」


ラテさんは半信半疑だが、

俺は気にせずテーブルにダンジョンで取ってきた魔石をまず出した。


ゴロゴロ.....。

ゴロゴロ...........。

ゴロゴロ....................。


「ちょ、ちょ、ちょっとストォォーーップ!!」


「へっ?」


「ま、魔石って...。

あ、あとどれくらいあるの?」


「ん~。魔石は後3分の1位ですかね。」


「マジで...。ち、ちなみに素材は??」


「数えてはないですけど、少なくみて5、600体分位はあると思います。」


!?

ラテさんは驚きすぎて開いた口が塞がらない。

しかし、すぐに冷静になり、


「青春ボーイズ。

ここでは狭すぎて査定が出来ないから、

倉庫の方でお願いするわ。

ちょっと付いてきて。」


俺は出した魔石を一旦収納して、

ラテさんに付いていった。


ギルドの奥に倉庫の用な場所に連れていかれた。

そこでは引き取った魔物を屈強な職人達が解体をしていた。

俺達は何も置いていない広い場所に着いた。


「ここに換金する魔物と魔石を全部出して!!」

「はい!」

全て収納から魔物と魔石を出した。

広い場所に魔物が山のように積み上がった。

まさに壮観である。


モンスターの死体だから少し気持ち悪いけど...。

死体の山を見た職人達が今日は残業だな...。

とか言ってる。


すいません...。


「本当にスゴい数ね...。」


「はい。

3階層でウルフとコボルトのデスパレードに、9階層はモンスターハウスになってたのでこの魔物の数になったんです...。」


「デスパレードにモンスターハウス!?

初心者ダンジョンにそんなことがあったなんて今まで聞いた事ないわ!」


ラテさんが話を聞いて焦っていた。


「そ、それに...。

こ、これってバジリスクだよね..?何で?」


「あぁ、それは10階層でゴブリンキングを倒した後に突然出てきたんですよ...。

本当に死ぬかと思いました...。」


「え!?

それはおかしいわ...。

青春ボーイズ!

ギルド長に報告行くから一緒に来て!

後、換金はこの量だと時間がかかるわ。

明日の朝には終わらせるから、明日取りに来て!」

「は、はい。」


俺達はラテさんの後を付いていって2階のギルド長の部屋の前に着いた。


コンコンッ。


「入れ。」


「失礼します。」


「ラテか...。どうした?」


「こちらの冒険者達が行った初心者ダンジョンで少し問題があったので、

報告に上がりました。」


「そうか...。君達名前は?」


「先日冒険者になりました。Dランクのコウと言います。」

「僕はEランクのアルトです。」


「俺はギルドの長のイカロスだ。宜しくな。」


ギルド長は髭が似合うダンディーな人だった。


「それで何があったんだ?教えてくれ。」

「実は俺達が行ったダンジョンで......」


ギルド長にダンジョンで起きたことを説明すると、ギルド長が難しい顔している。


「話はわかった...。もう下がって良いぞ。

あっ。ちょっと待て...。」


「はい?」


「アルトはDランクに昇進、

そして2人共初心者ダンジョンをクリアしたら、Cランクに昇進してもらう。」


「ギルド長。それはいくら何でも早すぎるのでは...。」


「これは俺の権限だ。

本当は実力的に今すぐCランクに上げたいが...。

流石に初心者ダンジョンもクリアしてないヤツがCランクに上がると、

他の冒険者達から不満が出てくるからな。」


「そうですか...。わかりました....。」

ラテさんはあまり納得してない感じだったが、渋々諦めた。


「もう行っていいぞ。」


「それでは、失礼します。」


コウ達が帰り、部屋に1人になったイカロス。

何か良くないことが起こるかも知れないと頭を悩ましていた。




俺達は受付に戻り、アルトのギルドカードの更新をしていた。


「はい~!

アルト君、Dランク昇進おめでとう~♪」

アルトは顔を真っ赤にさせて、

「は、はい!

あ、ありがとうございまひゅ!!」



噛んだぁぁ!?

ラテに喋りかけられただけで盛大に噛んだよ!

そんなに顔を真っ赤にして...。

アルトよ...。

そこまでラテが好きなんだな...。

でも止めとけ...。

彼女ヤツは魔女だ!


赤面してるアルトに対して、

「あはは!アルト君、顔真っ赤~!可愛い~!」

大爆笑して楽しそうにしているラテ...。


案外この2人はお似合いなのかもしれないあ...。

だがヤツは魔女だ!


(マスターは案外失礼な人ですね...。)


失敬な...。

俺は前世では、飲食店をしていて少なくとも1万人以上と話してるんだ。

前世の経験と実績に基づく分析なのだよ...。

わかったかい?ヴォイスくん。


(はいはい...。そうですね...。)


そんなにあきれた声を出さなくてもいいのに...。つれないな...。



ラテの笑いが一段落ついたとき、急にアルトが真剣な顔をしていた


「ラテさん!!」


「ん?どうしたの?」


「一目あった時から好きでした。

僕と付き合ってくださぁぁい!!」




へっ!?

俺はあっけにとられる...。



おい!

おいおいおい!!

絶対今じゃないよね!

告白するタイミング絶対今じゃないよね!?


止まっちゃってるよ...。

この場の時が止まっちゃってるよ...。

どうすんのよ?

明日からどうすんのよ?

フラれたら気まずくてギルド来れなくなっちゃうよ!

ノービス無職が本当の無職になっちゃうよ!!



そんな事を考えてパニックに陥ってるとラテからアルトに意外な言葉が返ってきた。



「嬉しい...。アルト君、ありがと...。

そんな真っ直ぐに告白されたの...。

私、初めて!」


...ん?あれ?

この展開はなんだぁ~?

まさかのオッケーなのか...?



「でもね、私は私を守ってくれる強い人がいいの...。」


ん?

意味深だな?

そう言えばラテさんって強いのかな?

あれ?

鑑定できない?


(マスター、ラテは鑑定を阻害するマジックアイテムを装着しています。

かなりレアなダンジョンアイテムです。

恐らくBランク以上かと。)


おっふ。

それはすごいな...。


アルトは覚悟を決めた顔して、

「僕は必ず強くなります!

ラテさんを守れるくらいに!!

そして、もう一度ラテさんに告白します!」


「うん!アルト君、...待ってるね!」


見つめ合う二人。





えっ...。


ナニコレ?



(ぷぷっ!マスターなんか惨めですね!

ぷぷぷぷっ!)


ヴォイスにバカにされた...。

このやるせない気持ち...。

今日はやけ酒確定だな...。


2人とも見つめ合いながらモジモジしているその空気に耐えきれなくなり、


「こほん。お二人さんそろそろいいかい?」


「あっ!ご、ごめん!」


それはどういう反応!?

お邪魔虫現れた的な感じか!?

やるせない...。


「ラテさん!また明日!」

「うん!アルト君また明日!

...ついでにコウ君も。」

「あぁ...。」


ついでとか言わなくて良くない?

この世界は本当に世知辛い...。


俺達はギルドを出て、

俺はトボトボと、

アルトはルンルンとノラ猫亭に着いた。



まあでも、今日はアルトの昇進祝いしないとな。

ランクは昇進してラテで傷心しなくて良かったって事にしよう!


(そんな上手い事言わんでええねん!)


ヴォイス!

ナイスツッコミ!!



「あら、お帰りなさい!」


「オカミさん!

今日はエール2つとお摘まみジャンジャン持ってきて!

アルトのランクアップの祝いなんだ!」


「そうなのね!アルト君ランクアップおめでとう!ご馳走いっぱい出すね!!

でも、お酒は別料金だから!」


「了解!!おかみさん、ありがとう!」


俺達は席に座った。


「エール!お待たせ!」


「アルトDランク昇進おめでとう!乾杯!!」

「コウ君ありがとう!乾杯!」


こうして俺達は初めてのクエスト達成とランクアップを2人で祝った。









その頃ギルドでは、

Dランクの新人冒険者がラテに告白した事が大きな話題になっていた。



「どこのどいつだぁぁ!?

ラテさんに告白なんて無謀な事をしやがったバカはぁ!!」


ドガァァッ!!

暴れまわっている。


「や、止めてください...。」

「ウルセェェー!!

お前も殺っちまうぞぉぉ!!」

「ヒェェーー!!」


大柄な冒険者は怒りで狂っていた。


俺達はそんな事になっているとは知らず、景気よく飲み明かしていた。


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